【大河べらぼう】花の井役・小芝風花さんインタビュー「台本を読んでいるだけで涙が出てきます」「花魁道中は公園で自主練」

大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で花の井(五代目瀬川)を演じる小芝風花さんにインタビューしました。主人公・蔦屋重三郎(横浜流星さん)と一緒に吉原で育った幼なじみで、後に伝説の花魁の名跡“瀬川”を継ぐ花の井。花魁という難しい役どころやドラマの見どころについて、語っていただきました。

花の井はカラッとした女性

――撮影開始から半年近く経ちました。花の井を演じられて、最初のイメージと変化はありましたか?

小芝さん:はじめは、蔦重と一緒に男の子の兄弟のように育ってきた人なのかな、という印象がありましたが、想像以上に強くて勝気な女性でした。花魁は華やかで色っぽいイメージもあったのですが、オフの状態は男勝りでカラッとしているのです。花魁のふだんの姿もよく描かれていて、お店に出ているオンの状態とのギャップがおもしろいと思いました。

――花魁のオンとオフ、ギャップがあると演じるのが難しそうです。何か意識されているところはありますか?

小芝さん:まずは口調が全然違います。店に出ているときはゆったりと話して、蔦重といるオフのときは素の感じで元気に早口で話します。また、白粉のメイクをすると自然と体の力の入り方も変わって気持ちもオンになり、スッピンに戻るとオフになれます。

台本を読んでいるだけで涙が…

――台本読んだ感想はいかがでしたか?

小芝さん:おもしろかったです。私は花の井目線で本を読むので、痛いほど彼女の気持ちが伝わってきました。吉原は華やかで男性にとっては夢のある世界ですが、そこに身を置く女性としては苦しいことがたくさんあります。本当の想いを隠しながらお客さんに接して生きている描写は、読んでいるだけで涙が出てきます。花の井の恋心や、それがかなわない苦しみが丁寧に描かれ、彼女のことがすごく好きになりました。

――吉原は、女性にはつらい場所です。女郎の人生を生きるうえで、心がけていることはありますか?

小芝さん:1からリアルな吉原の状況が描かれ、花の井にとってショッキングな展開になりましたが、それが現実なのかなと。女郎は病気になったら治療にお金がかかるので、忘八(※)から捨てられてしまうなど、つらい部分がたくさんあります。でも花の井は吉原で生きていかなければならない。悲観しているだけではダメなので、つらいことも理解したうえで、蔦重といるときは楽しく会話するなど心がけています。

――花の井は複雑な内面もつ難しい役どころです。どこを期待されて選ばれたと思いますか。

小芝さん:なぜ選んでいただけたのか、私も知りたいです(笑)。花魁は大人っぽくて色っぽいイメージがありますが、その部分は私の課題でした。いつも年齢より幼く見られがちで、「笑顔・元気」みたいなイメージを持たれることも多いので、大人っぽくなろうと心がけていたときもありました。そんな課題ある役を任せていただいたので、がんばらねばと気合いを入れています。

花魁道中は公園で自主練

――役作りでどんな勉強をされましたか。花魁の浮世絵など、ご覧になる機会はありましたか。

小芝さん:浮世絵は資料として見せていただきました。絵に合わせて衣装さんが着物を見つけ、着方なども教えてくださるので、私も当時の装いなど学んでいます。また、花魁が出てくる映像作品を見て、他の方がどんな風に演じられているのか、花魁言葉のニュアンスを聞いたり、花魁道中の雰囲気も見たりしました。

 ――花魁道中のシーン、どんなふうに準備されましたか。

小芝さん:指導の先生に歩き方や姿勢を教えていただき、そのあと高下駄を借りて公園で自主練してみました。でも、少し練習したところで人が来たので急いで下駄を回収して(笑)。高下駄は人目につくので、外での練習は難しかったです。本番のときは、重い着物を着て、重い高下駄をコントロールしながらゆっくり歩かなければならないので、ふくらはぎが筋肉痛になりました。

――フィギュアスケートをされていた経験は、役に立ちましたか。

小芝さん:道中を歩いたあとに高下駄で引きずった跡が残るのですが、きれいに歩くと均一に跡ができるのです。毎回カットがかかったあと確認して、きれいな跡ができたときはすごくうれしかったです(笑)。フィギュアで鍛えた体幹が役立ちました。実は、花の井時代と瀬川になったときの道中は、ちょっと印象を変えています。その違いも見ていただけたらうれしいです。

蔦重は母性をくすぐる人

――蔦重の魅力はどんなところにありますか。

小芝さん:よこしまな考えがなく、本当にまっすぐなところです。良いものを作りたい、吉原を良くしたいというストレートな想いが母性をくすぐる感じで、花の井は彼を支えたくなるんだと思います。

――横浜さんとの共演はいかがですか。

小芝さん:現場では、役柄のニュアンスや感情の確認などを監督も交えて丁寧に話し合っています。蔦重は女性の気持ちに鈍感な人として描かれているので、そんなシーンが出てくると、流星君も監督も「あの蔦重の態度はダメだよね」と笑って話したりしています。

――「べらぼう」のおもしろさは、どんなところにあると思いますか?

小芝さん:私のように歴史が得意ではない人でも、楽しめる内容だと思います。娯楽の少ない時代、蔦重はエンタメを作ろうと走り回った人で、自分の欲ではなくみんなを豊かにしたいという思いがあり、とても魅力があります。苦戦しながらもあきらめずに突き進んでいく主人公は感情移入しやすく、見ていて応援したくなると思います。人情や人の気持ちの部分もしっかり描かれているので、すごく楽しく見ていただけると思います。

取材を終えて…

会見中も元気で、笑顔がキラキラしていた小芝さん。花の井の役作りについて楽しそうに語ってくれましたが、所作を身につけるため、日々真摯に努力されている姿も伝わってきました。花魁道中シーンも注目したいですね。

 ※忘八:八つの徳目をすべて忘れて女郎たちを使う女郎屋の主のこと。

 (ライター・田代わこ) <あわせて読みたい>

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