【開幕レポート】新国立劇場バレエ団ロンドン公演「ジゼル」ロイヤルオペラハウス 本場のファンをうっとりさせた米沢唯とコールドバレエの至芸
Yui Yonezawa as Giselle and Artists of the National Ballet of Japan The National Ballet of Japan "Giselle" Photography by Tristram Kenton
重圧の中、喝采に包まれた初日
新国立劇場バレエ団のロンドン公演「ジゼル」初日が7月24日夜、満員札止めの観衆を集めてロイヤルオペラハウスで開幕しました。同バレエ団にとって初の海外主催公演という歴史的な一歩で、かつバレエ界では世界最高峰の舞台のひとつです。特に初日のキャストには大きなプレッシャーも掛かったことでしょう。しかし過去の公演以上のパフォーマンスを見せて、カーテンコールでは大歓声と盛んな拍手を浴びる見事な滑り出しでした。注目の公演の模様をお伝えします。
幕間に、プログラムを買う人が長蛇の列を成したも印象的。「これは買っておかないと」と思ったのでしょう。大半が地元ファン、斟酌なしの舞台
この日のロイヤルオペラハウスは開演の1時間以上前から常連らしきファンが集まり、カフェなどでバレエ談義を楽しむいつもの光景が見られました。新国立劇場関係者によると、満員のチケットの購入元は大半が地元ファンといい、いつもこの劇場でバレエやオペラを楽しんでいる人たちが、その延長線上で『じゃあ日本のバレエ団はどんなものだろう』と足を運んだ様子です。日本から駆け付けたらしい方の姿もありましたが、あくまで少数派。世界最高峰のロンドンの演劇界だけあって、ファンも批評家も厳しい目で舞台表現を見定めることで知られています。いつもの新国の公演とは異なる、斟酌なしの怖い舞台でもありました。
Yui Yonezawa as Giselle and Shun Izawa as AlbrechtThe National Ballet of Japan “Giselle” Photography by Tristram Kenton圧巻の演技、役になりきる米沢さん
しかし幕が開くやいなや、現地の目の肥えたバレエファンを唸らせたのが主役のジゼル役の米沢唯さんでした。最初は、全身から恋する可憐な少女そのもののオーラを全開。それが恋人に裏切られ非業の死、さらに霊となっても恋人を救うという目まぐるしく変化するキャラクターを巧みに演じ分け、観客の目を釘付けにしました。
声にならない声が上がった観客席
1幕の最後は恋人のアルブレヒト(井澤駿さん)の背信を知り、ショックのあまり半狂乱になった末、結局は息絶えるという技術的にも表現上もとても難しいシーンです。米沢さんの真に迫る感情表現に、観客は息を呑んで舞台を見つめるばかり。1幕が終わり、緞帳が下りて拍手が起きる一瞬の間に、「はぁ」とも「ひぃ」とも形容しがたい、ため息のような声が一斉に場内から上がったのが忘れられません。いかにお客さんが米沢さんの一挙手一投足に集中していたのかが伝わってきました。
Shun Izawa (Albrecht) and Yui Yonezawa (Giselle) The National Ballet of Japan “Giselle” Photography by Tristram Kenton終演後には、現地のファンから米沢さんに「Gorgeous(ゴージャス)」、「Amazing」、「Perfect」などの賞賛の声が相次いでいました。
Yui Yonezawa as Giselle and Shun Izawa as Albrecht The National Ballet of Japan “Giselle”Photography by Tristram Kenton少年少女も夢中の群舞
新国バレエ団の持ち味のコールドバレエ(群舞)でも演技中に大きな拍手と歓声が沸くなど素晴らしい反応で、カーテンコールでもソリストたちに負けないぐらい大きな拍手をもらっていました。単に揃っているだけでなく、それぞれの踊り手にきちんとキャラクターを感じさせるところが魅力の秘密でしょう。精霊のウィリたちをリードするミルタ役の吉田朱里さんにも歓声が上がっていました。
Akari Yoshida as Myrtha and Artists of the National Ballet of JapanThe National Ballet of Japan “Giselle” Photography by Tristram Kentonウィリたちのシーンでは、ダンサーが手足を目いっぱい伸ばして、列を成して進む印象的な場面があるのですが、終幕後、多くのバレエ少女、バレエ男子たちが真似をして嬉しそうな姿を見せていました。迫力ある群舞はバレエを目指す少年少女たちの心も鷲掴みにしていました。
Shun Izawa as Albrecht, Akari Yoshida as Myrtha and Artists of the National Ballet of JapanThe National Ballet of Japan “Giselle” Photography by Tristram Kenton日本から駆け付けたファンも胸熱
日本から駆けつけたファンに感想を伺うと、「さすがに最初は緊張気味な感じもしましたが、1幕の唯さんのソロから皆さんほぐれてきて、ぐんぐん良くなって最高の出来」という声や、「新国で見ていたジゼルがそのまま再現されていました。しかもさらにパワーアップしていて、どれだけこの間、稽古を積み重ねてきたのかと胸が熱くなりました」などの声が聞かれました。皆さん、頼もしいスターたちの演技に感激しきりでした。
写真は事前のお披露目から吉田監督の“凱旋”にロンドン子は大喜び
カーテンコールでは、ロイヤルバレエ団で長くプリンシパルを務めた新国バレエ団の吉田都芸術監督もステージに登場してくれました。お馴染みのスーパースターの“凱旋”に地元ファンは大喜び。劇場は大歓声に包まれました。 順調にスタートした歴史的公演ですが、細部ではまだまだ詰めるところがたくさんあるでしょう。7月27日の楽日に向けて、一層、精度を上げた舞台を見せてくれるはずです。ますます楽しみです。(ロンドンから、美術展ナビ編集班 岡部匡志)
写真は事前のプレスリリースから<あわせて読みたい> ◇新国立劇場バレエ団のロンドン公演 メディア向けのお披露目がロイヤルオペラハウスで
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