指一本動かさずにドローンを操縦。脳波コントロールが成功

Image: Nature Medicine

頭で考えるだけで、物理的に物を動かすことができるなんて。

ちょっと前まで、テレパシーなんてファンタジーの話であって、科学では不可能だと思われていたことが、テクノロジーの進化とともに現実に近づいてきました。

思考だけでドローンゲームに挑戦

スタンフォード大学とブラウン大学の神経学専門医で作った研究チームが、身体麻痺の患者の協力を得て、患者の脳にマイクロ電極を挿入。電気信号を用いてパソコンと繋ぎ、思考でコントロールする実験を行いました。

実験で操作したのは、ゲーム画面内のドローン。物理ドローンを飛ばしたわけではなく、現段階では画面の中での話です。

実験に協力してくれたのは69歳の男性。脊髄損傷で四肢麻痺があります。大脳にある手の動きに関連する中心前回と呼ばれる部分に、電極が埋め込まれ、画面にうつるバーチャルハンドを被験者に見てもらい、電極からキャッチする脳の活動とバーチャルハンドの動きの関連性をAIが解析

Image: Nature Medicine

被験者が指を動かそうとした時、脳の運動に関する部分である運動皮質が発する信号を電極からキャッチします。それを、人口ニューラルネットワークが解釈しどの指を動かそうとしているのかを予想しバーチャルハンドを操作し、それが画面内のドローンに伝わり飛ぶという仕組みになっています。

バーチャルハンドの動きは、3つのセグメントにわかれています。上下・左右の手の動き、親指・人差し指・中指の動き、そして、薬指と小指の動きです。

研究に参加した、ミシガン大学のアシスタント教授も務めるMatthew Willsey氏は、過去の研究よりも指の動きがより機能的に優れていると今回の実験を評価。練習を重ねると、被験者は操作にも慣れ、画面内にうつるドローンを障害物を避けながら飛ばすことができました。また、過去の研究で脳波(EEG)を用いたものと比較すると、被験者のコントロール力(コンピュータとの意思疎通)は6倍ほど高かったとのこと。

ちなみに、今回の操作対象にドローンが選ばれたのは被験者の希望。飛ぶことに情熱をもつ被験者の意見を尊重したそうです。

今回の研究で、手と指数本という複数の動きを思考で行えたことで、今後さらに複雑な動き(作曲やCADでの図面作成など)ができる可能性が見えました。

研究論文は、Nature Medicineにて公開されています。

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