くら寿司「とろとまぐろフェア」にマグロと無関係な珍しい魚がいる / 高水温に強いアイツ
2025年8月8日から、全国のくら寿司で始まった「とろとまぐろフェア」。フェアのタイトルの時点で明らかなとおり、メインはマグロだ。
公式HPの画像を見るに「ビントロ」、「ふり塩熟成中とろ」、「特上まぐろ」あたりがウリなのだろう。しかし私の気を引いたのは、謎にフェアに紛れているマグロと関係ない別の魚。
いやマジで何でいるんだ……? セレクトの理由が謎すぎるが、しかしこの魚をピックアップするのは くら寿司だけな気もする。珍しいので食べに行くことに。
・スギ
それがスギ。メニュー名では「奄美 活〆スギ (280円)」となっている。
恐らく本土在住の日本人の大半は、スギと言われても杉しか出てこないだろう。世界を統べる現代の神たるGoogleに聞いても、杉とスギ薬局が最速で出てくる。
まず、魚のスギとは何か。こいつはスズキ目スギ科に分類されている唯一の種。若い個体は白黒の縞模様をしており、ぱっと見だと頭に吸盤のついていないコバンザメというビジュアルをしている。成魚になると縞模様が曖昧になり、地味な感じになる。
沖縄では普通にその辺のスーパーで刺身が売られており名前も知れ渡っていると思うが、本土のスーパーではレアだと思われる。私も都内スーパーの鮮魚コーナーで見たことはまだない。
身は白く、味はよくハマチやブリ、カンパチなど、その辺のやつらと似ているとされる。まあつまり、けっこう美味い魚なわけだ。
しかし名前的にも存在的にも微妙にセールスポイントが弱いがゆえか、日本では他の人気の魚と比して、そんなにピックアップされていない感がある。
そこに大きな変化が生じたのが25年の3月。あのマルハニチロが、奄美大島で育てた養殖スギを試験販売すると発表したのだ。
最近の夏の気温は凄まじいことになっているが、気温が上がれば水温も上がる。例えばブリの養殖は水温が30度に達したらよろしくない。
しかしスギは非常に広い範囲を回遊する魚で、適応できる水温の幅が広い。多少冷えても大丈夫(スギたちは暖かい方が好みのようだが)だし、30度まで上がってもスギはまだやれる。マルハニチロはそこに目を付けたというわけ。
その養殖スギの販売が5月からとの発表だったので、今回の「奄美 活〆スギ(280円)」と何か関係があるのかもしれない。
ということで、こちらが「奄美 活〆スギ(280円)」だ。
食べてみると……コリュコリュしている。歯ごたえが強いな。気になる味は、風味を薄くしたブリ系の何かみたいな感じだ。夏のその辺の魚と言えばカンパチやヒラマサだが、適当にそいつ等だと偽って食わせてもバレない気がする。
ということで、今最も商業的にビッグになりそうな魚、スギ。この調子で温暖化が進めば、本土でも養殖スギがコモンになっていく可能性は否定できない。皆さんも将来性たっぷりなスギを、くら寿司で味わってみてはいかがだろう。
参考リンク:くら寿司、マルハニチロ(PDF) 執筆:江川資具 Photo:RocketNews24.
▼一応メインのマグロ類も試してみた。全部、普通にいつものマグロって感じ。
▼どのマグロもスギ以上に私の好奇心を掻き立てるには至らなかったが、ひとつ気になる品があった。「ふり塩熟成中とろ(280円)」だ。
フェアの写真だと1皿2貫に見える。タブレットの写真でも、1皿2貫に見える。
しかし届いたのは1貫だった。
しょっちゅう寿司屋のレビューをしていると各社どこでもオーダーのミスは少なからずあることなので普段はスルーする。しかしちゃんとした商品の写真を撮る必要があるのでもう1回オーダーしたのだが、やはり1皿1貫だった。ということで、全体写真は1皿1貫の状態でそのまま掲載した。
▼マグロ軍団の中で強いて一押しをあげるなら、ビントロだろうか。HPでは115円からとなっているが、店舗によって値段が変わる旨が小さく書かれている点に注目。私の行った店舗では120円だった。
▼「大切りびんちょう一貫(120円)」は、特に大切りではない。スシローの「まぐろ祭」の記事でも “回転寿司屋のいう「大切り」が大切りじゃなくなって久しい” とイジるなど、私は大切り警察なのでサイズのジャッジは厳しい。