臓器移植で本当に150歳まで生きられるのか、専門家に聞いてみた
移植の準備を待つ腎臓。米国だけでも、80万人以上の患者が移植の恩恵を受けている。(Photograph By Sebastien DI SILVESTRO/Hans Lucas,Redux)
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2025年9月3日、中国の習近平国家主席とロシアのウラジーミル・プーチン大統領が中国、北京で抗日戦争勝利80年の記念式典に出席した際、臓器移植や現代医療を用いてより長く、可能なら永遠に生きることについて話しているくだりをマイクに拾われた。
CCTV(中国中央電視台)が最初に拾った音声記録によると、プーチン氏は通訳を介して習氏に「生命工学は進歩しています」と語った。「人間の臓器の継続的な移植が行われるようになり、人々は年をとるにつれて若返り、不老不死さえ達成するかもしれません」
習氏は「今世紀中に人類は150歳まで生きられるようになるかもしれない」と予測した。
しかし、臓器移植で本当に150歳まで生きられるのだろうか? あるいは他に方法はあるのだろうか? 専門家の見解を聞いてみた。
「臓器移植は不老不死への道ではありません」と言うのは、米ニューヨーク大学グロスマン医学部の医療倫理部門長であり、臓器移植倫理の専門家でもあるアーサー・カプラン教授だ。
臓器不全に苦しむ人々にとって、移植は命を救う手段となり得る。しかし、老化と闘おうとする人々にとって、臓器移植はあまりにリスクが高く、高価であり、深刻な限界がある。移植は、老化に伴う多くの一般的な全身性疾患を治せない。
また、既存の需要を満たすだけの臓器さえ足りず、ましてや広範な臓器移植を支えることなどできない。さらに、現在のところ脳の移植は不可能だ。「丈夫な心臓を持ちながら、脳が衰えていく状態で生きることを想像してみてください。悪夢です」とカプラン教授は語る。(参考記事:「ブタがあなたの命を救う日、世界が注目した「異種移植」」)
「長寿を目指す取り組みは分子レベルのもので、臓器移植レベルのものではありません」
米アルバート・アインシュタイン医科大学の医学・遺伝学教授であり、健康・長寿研究アカデミーの会長でもあるニール・バルジライ氏も同意する。科学者たちは、遺伝子編集、抗加齢薬、幹細胞治療といった、より長生きするための優れた戦略を開発してきたと氏は述べる。「私たちは老化を遅らせ、さらには元に戻すことさえできます」(参考記事:「健康長寿 科学で老化を止められるか」)
臓器移植の台頭
何千年もの間、古代神話では、病気を治すための臓器移植にまつわる奇跡的な物語を詳しく伝えてきた。しかし、これらの神話が現代医療となったのは1950年代半ばになってからだ。
1954年、一卵性双生児の一方からもう一方へと外科医が腎臓を移植し、初めて人間の臓器移植を成功させた。1960年代後半までには、外科医は肝臓、心臓、膵臓の移植を成功させ、1980年代には肺と腸の臓器移植が始まった。(参考記事:「中国でブタの肺をヒトに移植、史上初、ドナー不足に光となるか」)
その後の数十年間で、科学者は臓器移植をより安全かつ効果的にするための複雑な技術的課題を克服した。研究者は、血管をより良く接続する技術、臓器を体外で保管する術、そして免疫抑制剤を用いて拒絶反応を避ける方法を習得した。
1988年に全国的な記録が始まって以来、今日、米国だけでも80万人以上の患者が移植のおかげで命を救われたり、生活の質が向上したりしている。