自民それとも野党…維新はどこと連携? ポイントは「副首都構想」
一度は遠のいたと思われた日本維新の会と自民党の距離感が、公明党が連立政権から離脱したことで変化の兆しを見せている。対決姿勢を強める立憲民主党を除けば、自民は国民民主党、維新、公明の少なくとも2党の協力を得なければ衆院で過半数を満たせなくなったからだ。
連携相手は自民か他の野党か
「そこまで深くお話ししたことはない」「人物評を持ち合わせていない」。維新の吉村洋文代表は自民総裁選直後、高市早苗総裁について、こう語っていた。
Advertisement公明の離脱表明を受けた10日には、民放番組で「外国人政策や安全保障、憲法改正などでは高市さんと近いところがあると思う」とアピール。副首都構想についても「高市さんがどう考えているか知りたい」と述べた。
一方、吉村氏は首相指名で「立憲民主と国民民主が本当にまとまるなら、本気で話を聞く」と述べるなど、他の野党との連携にも含みを残す。立憲、維新、国民民主に公明が加われば、衆院で過半数の勢力となり、政権交代も可能だ。
「副首都構想」の低くないハードル
ただ、維新が他党との協議で主軸とするのは、肝いりの副首都構想と社会保障改革で、ハードルは低くない。
高市氏は総裁選の公約で「首都機能のバックアップ」を掲げた。維新とは、過去2度の住民投票で否決された「大阪都構想」の協定書(制度案)を総務相(当時)として承認した因縁もある。
しかし、総裁選の決選投票で高市氏に1票を投じた地元・大阪府連は一貫して都構想に反対してきた。
2021、24年の衆院選で、自民は公認候補を立てた府内15選挙区で維新に全敗。今夏の参院選大阪選挙区(改選数4)でも維新候補が2人当選したのに対し、自民は27年ぶりに公認候補を落としている。
公明は「大阪都構想」との関係を疑問視
公明は都構想を巡って維新と協力関係を構築。衆院選では「常勝関西」と呼ばれる強固な支持基盤を築いた6小選挙区(大阪4、兵庫2)で維新とのすみ分けを実現してきた。
しかし、24年衆院選では維新が対抗馬を立てたことで「全面対決」に。結果、大阪の4選挙区で議席を失った。
斉藤鉄夫代表は4日に高市氏と面会した際、「維新の『副首都構想』には非常に大きな疑問点を持っている」と伝えた。
連立離脱表明から一夜明けた11日、大阪で記者会見した石川博崇・府本部代表(参院議員)は、「斉藤代表の懸念は(維新の副首都構想が)いわゆる都構想とひも付いていることだ」と指摘。「なぜ都構想が実現しないと副首都構想が実現できないのか、私も疑問だ」と述べた。
国民民主は「特別自治市構想」
国民民主とは大都市制度を巡る隔たりが大きい。国民民主は党内に地方制度調査会を設置し、政令市の権限・財源をより強化する「特別自治市」の実現に向けて検討を進めている。
大阪市を廃止して特別区を設置する都構想とは正反対の発想で、実現には地方自治法の改正が必要だ。国民民主は次期臨時国会への改正案提案も視野に入れる。
調査会を率いるのは、元維新の足立康史参院議員。維新では国会議員団の政調会長も務めたが、24年4月の衆院東京15区補選の際、交流サイト(SNS)で不適切な投稿をしたとして党員資格停止6カ月の処分を受けた。
今夏の参院選比例代表で国民民主に転じ、議席を得た。都構想についてもよく知るだけに、維新にとっては手ごわい相手となりそうだ。【長沼辰哉、高良駿輔】