余暇に努力しない人は人生の意味が薄れる? (2/3)

この研究では、全部で5つの調査や実験が行われました。

その目的は、余暇に行う活動の「努力の大きさ」が、人々が感じる「意味」や「楽しさ」にどのように影響するのかを科学的に調べることでした。

まず、最初に行われたのは「研究1」という調査です。

この調査では、大学生1145人に、ふだんの日常生活で行っているさまざまな活動について質問しました。

具体的には、「どのくらい努力が必要か?(大変さ)」「どれくらい意味があると感じるか?(意味深さ)」「どれくらい楽しいか?(楽しさ)」の3つのポイントを聞いています。

その結果、多くの人が「努力が必要な活動ほど意味がある」と考えていることがわかりました。

逆に言えば、楽で手軽な活動ほど「あまり意味はない」と考えられていました。

例えば、人のために行うボランティア活動は、テレビをだらだら見るよりも「意味がある」と評価されました。

ただし興味深いことに、同時に人々は「努力をすると、その分あまり楽しくないのではないか?」とも考えていたのです。

つまり、多くの人は「意味があること」と「楽しいこと」は、同時には手に入りにくい、どちらかを取るともう片方が減ってしまう(トレードオフの関係)と感じていたわけです。

では、本当にそうなのでしょうか?

そこで研究チームは、「研究2a」と「研究2b」、そして「研究3」という3つの実験を行って、実際に「努力の必要な余暇」と「努力がほとんど必要ない余暇」を体験した時の人の感想を調べました。

研究2aと研究2bでは、数独という頭を使うパズル(努力がいる活動)と、YouTubeでかわいい動物の動画を見ること(努力がほぼ必要ない活動)の2種類の活動を比較しました。

一方、研究3では、同じく数独パズルと、「クリックするだけで簡単に絵が表示されるゲーム」を比較しました。

いずれの実験も、「どちらの活動のほうが意味があると感じるか?」また「どちらがより楽しいと感じるか?」ということを比べました(細かい実験方法は次のセクションで詳しく説明します)。

結果は非常にはっきりとしていました。

数独パズルのように「努力が必要な活動」をした人たちのほうが、「動画を見るだけ」や「クリックするだけ」の活動をした人たちよりも、その時間を「意味がある」と強く感じていました。

しかも意外だったのは、数独のように努力のいる活動であっても、「楽しさ」がまったく失われなかったことです。

むしろ、場合によっては簡単な活動よりも楽しめることもあったのです。

私たちは普段、「大変なことをしたら楽しめないはずだ」と考えがちですが、実際にやってみると、「努力的な遊び」でも十分に楽しさを感じることができました。

ここで終わりではありません。

研究チームはさらに「研究4」と呼ばれる調査で、実際の生活のなかで「努力的な活動」をすると、どのような気持ちになるのかを確かめました。

研究4では、260人ほどの参加者に1週間ふだん通りの生活を送ってもらい、スマートフォンを使って、その瞬間に「何をしているか」「その活動がどれくらい大変か」「どれくらい意味を感じるか」「どれくらい楽しいか」についてリアルタイムで答えてもらいました。

この方法を使うと、人々がまさにその活動をしているその瞬間に、どんな気持ちなのかを正確に知ることができます。

調査の結果、人は「努力が必要な余暇」をしている瞬間に、やはり「意味深さ」をより強く感じていることがわかりました。

例えば、料理をしているときに「頑張って凝った料理を作る」と、単に「レンジで簡単に温める」よりも意味や充実感を感じやすかったのです。

さらに注目すべきは、「楽しさ」についての結果でした。

仕事や家事のように「やらなくてはいけないこと」では、努力が大きくなると楽しさが下がってしまう傾向があります。

しかし、余暇の範囲では、努力をするほど楽しさが下がることはほとんどありませんでした。

つまり、自分が好きで自主的に選んだ「努力的な活動」は、努力をしてもむしろ楽しさを維持できるということです。

これらの結果をまとめると、私たちが普段抱いている「努力的な活動は楽しめない」という考えは間違いであることが示されています。

余暇においては、むしろ少し努力した方が、「楽しさ」と「意味深さ」「充実感」「目的感」を同時に手に入れられる可能性があるのです。

ただし、重要な注意点もあります。

努力が増えれば増えるほど意味がどんどん大きくなるわけではありません。

あまりに難しすぎたり、過度に頑張りすぎたりすると、意味深さや充実感の感じ方が頭打ちになってしまいます。

つまり、適度な難しさを選ぶことが大切なのです。

あくまで「自分が無理なく楽しんでできる範囲で、少し頑張る」ことが、最も良い方法だと言えます。

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