【大河ドラマ べらぼう】瀬川役・小芝風花さんが語る蔦重との別れ「文を書くシーンはカットがかかっても涙が止まりませんでした」
大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で瀬川(花の井/瀬以)を演じる小芝風花さんにお話を伺いました。第14回で、自ら身を引いて蔦屋重三郎(蔦重、横浜流星さん)の元を去ってしまった瀬川。鳥山検校(市原隼人さん)に離縁してもらい、ようやく蔦重と一緒になれた矢先の、あまりにも切ない展開でした。小芝さんは、蔦重に文を書くシーンを撮るとき、「カットがかかっても涙が止まらなかった」と語りました。
検校に近寄りたいと思っていた
――瀬川にとって、鳥山検校はどんな存在ですか。
小芝さん:身請けされる前、「稀に見る良い男でありんすな」と瀬川が言っていたとおりの良い人で、もし蔦重がいなければ添い遂げられる人だったと思います。ただ、どうしても瀬川の心の中には蔦重がいるので、検校はちょっとした声色やしぐさで全部を察してしまうのです。本当は、瀬川も検校に近寄りたいと思っていたのですが、心の中が見抜かれてしまうと思うと近づけなくなり、より検校が焦っていきました。
――検校が、もっと鈍感だったらよかったですね。
小芝さん:検校は瀬川のためにがんばって尽くしているのに、なぜいつまでたっても夫婦ではなく、客と花魁の関係性のままなんだとモヤモヤしていたのだと思います。瀬川も検校と夫婦として関係性を築きたかったのですが、彼が察しすぎるゆえに、なかなか歩み寄れませんでした。そうでなければ、きっと夫婦として仲良く楽しく暮らせていたのではないかなと思っています。
まっすぐすぎる愛のある人
――第13回のラストで検校に疑われたとき、瀬川はどんな思いでしたか。
小芝さん:瀬川は本心で「心臓をとって」と言ったのだと思います。瀬川を幸せにしてあげようという気持ちは、蔦重よりも検校のほうがあると思うので、検校を好きになれたらどれだけいいかと本気で思っていたはずです。瀬川も、自分の重くて苦しい想いを捨てて検校と幸せになりたいと心の底から思っていました。でも、どうすることもできない。信じてもらえないなら、自分の命を差し出すと訴えているシーンだと思いながら演じていました。
――お裁きの場で、検校と通じ合えたのでしょうか。
小芝さん:検校の生い立ちも順風満帆ではなかったと思います。そんな彼が、瀬川と出会い、彼女の誠実さ優しさ、賢さに惹かれていきました。最初は蔦重への嫉妬が強くて、検校は苛立っていたのだと思いますが、瀬川の本心を聞いたあと、「好きな人の望むことを全部かなえたい」という気持ちになったのだと思います。本当にまっすぐすぎる愛のある人で、自分の望みよりも好きな人の幸せを想ってくれる人だと感じました。
カットがかかっても涙が止まらず…
――瀬川が幸せを感じたシーンはどこですか?
小芝さん:検校に離縁してもらったあと、蔦重と二人で横になって話しているシーンは、一番幸せだったと思います。蔦重と結ばれることは絶対にないと瀬川は思っていました。蔦重からの告白も奇跡でしたけど、検校に身請けされ二度と会えないかもと思っていたら、今度は離縁され、いろいろな奇跡が重なってやっと結ばれた瞬間でしたから、あのシーンは手放しで幸せだったと思います。
――その幸せを、なぜ捨ててしまったのでしょうか。
小芝さん:本を作りたい、吉原を良くしたいという夢に向かって楽しそうに走っている蔦重の姿が瀬川は大好きなので、彼の夢を守りたかったのだと思います。人に恨みを買う仕事をしていた検校の元妻である自分がいたら、蔦重の夢の妨げてしまうかもしれない。蔦重からもらった絵本「青楼美人合姿鏡」を見ながら、花魁たちが笑顔になれる平和な吉原を実現する夢が、自分のせいでかなわないかもしれないと瀬川は察してしまったのです。
――蔦重のために、決断したのですね。
小芝さん:十年以上思い続けた人と一緒になれる道があったのに、自ら身を引いてしまいました。最初は蔦重と一緒に暮らすために荷造りしていたのですが、途中で彼から離れるための荷造りに変わってしまったのが苦しくて……。最後に文を残すのですが、そのシーンはカットがかかっても涙が止まらなくて、すごく苦しかったです。
――切ないですね。瀬川の選択は、蔦重から離れるしかなかったのでしょうか。
小芝さん:蔦重もそうですが、瀬川も周りの人のために自分を犠牲にできるのです。だからこそ周りも応援してくれる。今回、視聴者の方も瀬川の幸せを願ってくださるのは、彼女が、自分自身どんなにつらくても、みんなの幸せや吉原をよくすることを願って行動できる人だからだと思います。最善の選択かどうかわかりませんが、蔦重の夢を守るため、瀬川にできる唯一の方法だったのかなと思います。とても切ないです。
幸せでありますように…
――瀬川にとって、蔦重はどんな存在でしたか。
小芝さん:「重三は私にとって光だった」というセリフがあるのですが、本当にその通りだと思います。身を削らなければいけない吉原に身を置き、逃げることもできずお勤めをするなかで、重三の存在だけが光で、この人に出会うために自分はここにいる、と瀬川は思っていたはずです。重三が素直に夢を語るのを聞いているうちに、その夢が自分の夢にもなっていく。彼は光だったと思います。
――蔦重のもとを去ったあとの瀬川はどこで何をしているのでしょう。小芝さんは、どう想像されますか。
小芝さん:幸せに暮らしていたらいいと願うばかりです。瀬川は本を読んできましたので、いろいろ知識はありますが、吉原の中で生きてきたので外の世界の常識もわからず、お金を稼ぐのも簡単ではないと思います。ただ、人が求めているものを見抜く力がある人なので、外の世界でも生きていける能力はあると思います。きっと幸せでありますように。
(ライター・田代わこ) <あわせて読みたい>
視聴に役立つ相関図↓はこちらから