受け継がれる名作GUYS AND DOLLS 宝塚歌劇団月組が吹き込む新たな魅力
国境を超えて受け継がれる米ブロードウェーの傑作ミュージカルコメディー「GUYS AND DOLLS(ガイズ・アンド・ドールズ)」(脚色・演出・訳詞=稲葉太地)の宝塚歌劇団月組公演が26日、宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)で開幕した。ニューヨークを舞台に繰り広げられるギャンブラーたちの破天荒な恋模様は宝塚でも再演が繰り返された作品だが、トップスターの鳳月杏を先頭に、月組の生徒たちの鍛え上げた芝居力が作品に新たな魅力を吹き込む。
舞台は1948年ごろのニューヨーク。活気あふれるこの街では、ギャンブラーたちがサイコロを使って夜ごと賭け事に盛り上がっていた。大物ギャンブラーのスカイ(鳳月)は女性からも好かれるプレイボーイで、どんな賭けにも余裕の表情を浮かべている。
着こなしたスーツ姿、落ち着きのあるたたずまい、色気ある歌声-。「男役」を培ってきた鳳月が客席からの視線を離さない。ゆっくりと舞台を練り歩く姿、椅子に座って足をくむ姿の一つにも、鳳月の迷いのなさがにじみ目を奪われる。
大物ギャンブラー、スカイ(左、鳳月杏)と賭場の主催者、ネイサン(風間柚乃)=宝塚大劇場(山田喜貴撮影)金以上のものがかかってんだ-。金の工面に困る賭場の主催者、ネイサン(風間柚乃)との賭けをきっかけに発展していく、救世軍のサラ(天紫珠李)との関係。スカイの熱いせりふの数々が胸を躍らせる。天紫はスカイに翻弄される心を繊細に表現し、舞台上に2人だけの世界を作り出す。その恋の駆け引きは、ラストシーンまで目が離せない。
恋の駆け引きを繰り広げるスカイ(左、鳳月杏)とサラ(天紫珠李)=宝塚大劇場(山田喜貴撮影)ゲームに夢中なネイサンも長年の婚約者、アデレイド(彩みちる、彩海せらのダブルキャスト)との関係に頭を抱え、ギャンブラーの恋は晴れたり曇ったり。風間は独特の風格を醸し出す一方で、チャーミングなクラブの踊り子、アデレイドに振り回される姿は客席に笑いを起こす。
長年の婚約者、アデレイド(左、彩みちる)に振り回されるネイサン(風間柚乃)=宝塚大劇場(山田喜貴撮影)賭け事に懲りない、賭場に集うギャンブラーたちも憎めないキャラクターばかりだ。ネイサンの仲間のナイスリー(礼華はる)とベニー(夢奈瑠音)をはじめ、シカゴから来たビッグ・ジュール(英かおと)もはちゃめちゃな掛け合いを繰り広げ、存在感を発揮する。華やかなスーツに身を包んだ男役たちの着こなしは、まるでファッションショーのようでもある。
ポップなナンバーが手拍子を誘い、客席通路を使った演出や宝塚歌劇ならではのダンスシーンによって終始観客の心をつかみ続ける。受け継がれてきた名作の歴史に、鳳月率いる月組がその名を残す。(堀口明里)
ステージで躍動する鳳月杏(中央)ら=宝塚大劇場(山田喜貴撮影)宝塚歌劇団月組「GUYS AND DOLLS」
9月7日まで。東京宝塚劇場は10月4日~11月16日。