Nintendo Switch 2抽選販売に220万件の応募 任天堂“異例の事前アナウンス”に感じた「2つの驚き」

 任天堂は4月23日、X公式アカウントを通じ、Nintendo Switch 2の抽選販売への応募状況と、今後の流通に関するアナウンスを行った。 【画像】歴代ハードの売上台数を大きく上回る“220万”の応募が殺到…抽選販売をめぐって注目を集めるNintendo Switch 2  本稿ではそこに含まれたメッセージから、Nintendo Switch 2をめぐる展望を読み解いていく。 ■「220万」という数字に感じた2つの驚き  当該ポストには、代表取締役社長・古川俊太郎氏の名前で、「4月4日より開始した第1回の予約抽選に220万人の応募があったこと」「この数字は社内の事前の想定を大幅に上回るものであり、在庫が大きく不足していること」「(それを踏まえ、4月24日の当選発表では)応募者の相当数が落選する見込みであること」「今後さらに生産体制を強化し、出荷台数を増やす計画であること」などが説明されていた。任天堂にしてみれば、Nintendo Switch 2とその抽選結果に大きな注目と期待が集まっていることを理解したうえで、応募者を必要以上に落胆させないための発信だったのだろう。実際に返信欄には、同社のファンと思しきユーザーたちのあたたかいコメントが多くあった。ネガティブなアナウンスであったにもかかわらず、このような状況となった背景には、抽選販売に設けられた参加条件がユーザーに転売対策として評価されていたことによる影響もあったのかもしれない。  他方、より俯瞰的な視点に立つと、ポスト内にあった「220万」という数字にも目を引かれた。ここには、「“転売対策として十分”とユーザーに考えられている条件を、220万ものアカウントがクリアしていること」「仮に当選者全員に購入の意思があるとして、十分な在庫が準備できていれば、初動で相当数を売り上げる可能性があったこと」という2つの驚きがあった。  前者に関して、今回の抽選販売には「2025年2月28日時点で、Nintendo Switchソフトのプレイ時間が50時間以上であること(体験版ソフト、無料ソフトを除く)」「応募時点で『Nintendo Switch Online』に累積1年以上の加入実績があり、応募時にも加入していること」という参加条件が盛り込まれていた。つまり、この2つを満たすアカウントが、日本国内だけで220万も存在するというわけだ。これらすべてが任天堂の歓迎する優良顧客であるならば、ゲーム業界における同社の影響力は、これまで私が想像していた以上に凄まじいことになる。その一方で、それらが少なくとも現在、“任天堂の歓迎する優良顧客でない場合”も想定しておかなければならないのではないだろうか。この220万のなかには、「“厳しい”と考えられていたはずの条件をクリアした転売目的のユーザー」も含まれている可能性がある。もしそうだとすれば、プラットフォーマーは今後、さらなる対策の検討を迫られることになる。  また、後者に関して、もちろん当選したアカウントすべてがそのまま購入に至るとは考えていないが、そのような前提を踏まえてもなお、220万という数字はあまりに大きすぎるものであったと言える。仮に半数が購入を辞退すると考えても、(在庫さえあれば)初動で100万台以上は売れていた計算になる。たとえば、同様に任天堂が発売したファミリーコンピュータは、日本のみの流通であった初年度の1983年に44万台を売り上げたが、当時と現在の市場のあいだには、任天堂の一強に近かった前者、ユーザーの選択肢が多様化する後者という明確な違いがある。前世代機であるNintendo Switchの国内における初動は、約33万台と言われている。それら過去の例を大きく凌駕する数字が、220万アカウントによる応募だったというわけだ。ちなみに、Nintendo Switchの全世界における初動は約150万台だった。関連する過去のデータとの比較には、220万人が応募した事実の、良い意味での異様さを感じ取れる。  もし任天堂がユーザーの関心が離れないうちに十分な在庫を確保できれば、歴史上に例を見ない販売台数を記録する可能性もある。今回の抽選において、想定を超える落選数が発生しながら、同社に批判の矛先が向かわなかった裏には、「これだけの人が応募したのだから、当選しなくてもしょうがない」というユーザーの諦観の存在もあったのかもしれない。 ■もっとも有効な転売対策である「生産体制の強化」。任天堂の努力は実を結ぶか  一方、こうした任天堂の対応には、同社らしいリスクマネジメントの姿勢も見え隠れする。上述したアナウンスの内容は、わざわざ広報しなくてもよいものとも考えられる。ここに存在するのは、「ユーザーの体験を重視する」という任天堂の根幹とも言えるマインドだろう。SNS上の反応のなかには、そうした姿勢を評価する声も一定数あった。  だからこそ「生産体制を強化し、出荷台数を増やす計画がある」という言葉にも信憑性が生まれてくる。「任天堂ならば、欲しい人の手に渡るだけの十分な在庫を早急に確保してくれるに違いない」。ユーザーにそう思わせるだけの信頼こそが同社の武器であり、最大のアセットであるとも言える。  また、そのような流通が実現することこそが、もっとも効果的であろう転売対策にもなる。本稿で「今後、プラットフォーマーに求められる」とした対応策の解答のひとつが、求めるユーザーの手にきちんと渡るだけの在庫を準備することなのだ。これが可能であるならば、220万のなかに邪な応募者が存在しているかは、さほど大きな問題ではない。決して容易に乗り越えられるハードルではないだろうが、特にNintendo Switch 2の販売において、十分な対応を見せてくれた任天堂であるからこそ、状況の打開を期待させられてしまう面もある。  Nintendo Switch 2の流通は今後、どのような道筋をたどるのか。ゲームハード転売の問題の行方をうらなう意味でも、動向を注視していきたい。

結木千尋

リアルサウンド
*******
****************************************************************************
*******
****************************************************************************

関連記事: