発火するって本当? モバイルバッテリーのキホンと、安全な付き合い方
スマホや電動アシスト自転車、電気自動車…など。
これら身近な機器のバッテリーの多くには「リチウムイオン電池」という電池が使われています。現代では一般的な電池で、毎日お世話になっているレベルのガジェット、モバイルバッテリーの中身も多くがコレ。でも、使い方を間違えると危険なこともあるのです。それが、発火リスク。
リチウムイオン電池は、正しく使っている分には問題ないのですが、内部が損傷すると、熱によって素材の分解が進み可燃性ガスや酸素が発生。勢いよく燃えだしてしまう可能性があるのです。
たとえば、2025年1月末のアメリカ・ロサンゼルスの大火災では、火の手がリチウムイオン電池を採用したEV(電気自動車)に燃え移ったことで、消火に手間取ったという予想もあります。
また、日本国内でもリチウムイオン電池が発火原因となった事故は年々増加傾向にあります(参考:東京消防庁HP)。
インパクトの強いところだと電動アシスト自転車からの発火も。世紀末感がヤバい…。
【リチウムイオン電池搭載製品の火災が増加!】モバイルバッテリー、スマートフォン、電動アシスト付自転車など…皆さんの身近にあるものから火災が発生しています。熱や衝撃に弱いなどの特性を把握し、正しく使用・保管をしましょう。詳しくは↓https://t.co/kn6eU7dQ0V#東京消防庁pic.twitter.com/TrdsFMDLvX
— 東京消防庁 (@Tokyo_Fire_D) July 25, 2024
これだけ見ると「え、そんなに危ないの?」と思うかもしれませんが、もちろん正しく使えば安全。
日々便利に使っているバッテリーと仲良く付き合っていくためにも、備えておきたいベーシックな知識として、リチウムイオン電池の正しい買い方、安全な使い方、捨て方までを紹介しますね。
おまけ:新たな選択肢まとめ:定番モデルが安全。正しく使えば安心
1. リチウムイオン電池(モバイルバッテリー)を買うときのポイント
Photo: Shutterstock.comまず大前提として、やはり名の知れたメジャーなメーカーを選びたいですね。
メジャーなメーカーの製品は値段も高い傾向にありますけど、その分、バッテリーの性能面や品質管理、安全設計にコストをかけているとも捉えることができます。
それ以外、安価なノーブランド品のすべてが品質管理不十分とは断定できませんが、リスクの高い選択となる点は留意しておく必要があります。
Image: 一般社団法人JBRCまた、「買うときに、捨てるときのことまで考える」こと。
ちょっと大げさですけど、これがとても大事だったりします。だって、適当にポイポイ捨てられないんですもの。
日本では、電池の回収とリサイクルを目的とした「JBRC(一般社団法人電池工業会)」に加入しているメーカーのバッテリーは、回収の方法が用意されています(後述します)。
つまり、売っておしまい。ではなく、リサイクルのフェーズまで考えて製品展開を行っていることになりますので、「JBRC加入している」メーカー=信頼できるメーカー。とひとつの指標となるかと。
JBRC加入事業者はこちらからチェックできます。モバイルバッテリーでの定番どころですと、アンカー・ジャパン株式会社、エレコム株式会社、株式会社CIO、ティ・アール・エイ株式会社(Cheero)などがあります(50音順)。
他にもPSEマークの有無などもチェック基準はありますが、国内で流通していて、なおかつJBRC加入メーカーのモデルを選ぶのであれば、意識しなくても良いかなと!
2. リチウムイオン電池の正しい使い方
リチウムイオン電池、外側はガッチガチなボディですけど、実はデリケート。あのガチガチさも中身を守るためにああなっています。なので、取り扱い時は以下のようなポイントに注意してください。
1.高温に注意!
「夏の車内にスマホを置いていたら、めちゃくちゃ熱くなってた…」そんな経験ありません? それ、燃えなくて良かったヤツです。
リチウムイオン電池は高温に弱く、最高許容周囲温度は45度程度。異常な高温が続くと膨張・発火のリスクが高まります。事実、車内のダッシュボードに放置したモバイルバッテリーやガジェットのバッテリーから出火したという報告もあります。
Video: YouTube/ GENKI LABO僕も大好きGENKI LABOの市岡元気先生とNITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)とのコラボ動画でも、実際にダッシュボード放置のモバイルバッテリーからの出火実験を行なっていました。7分あたりから、火炎放射器と化したモバイルバッテリーが見られます。
こうならないためにも、車内へのガジェット放置はやめておきましょう。絶対に。
2.衝撃を与えない!
「落としたくらい大丈夫でしょ?」と思うかもしれません。
まぁ、基本は大丈夫なように作ってはいるのですが、あまりに強い衝撃だったり、打ちどころが悪くて内部の部品が壊れると、ショートして発火することも。モバイルバッテリーや電動アシスト自転車のバッテリーを雑に扱わないようにしましょう。
3.分解しない!
これが一番ダメなやつ。
リチウムイオン電池の内部には可燃性の電解液が使われていて、空気に触れると発火の可能性があります。「スマホのバッテリー交換、自分でできるだろ」みたいに思っても、手を出さない方が無難。ドライバーで間違って刺しちゃった…なんてことになれば、火炎放射器になります。
3. リチウムイオン電池の捨て方
Photo: Shutterstock.comリチウムイオン電池の捨て方、自治体によっては捨て方が異なるので、事前にルールを確認しましょう。
僕が住んでいる自治体では、「危険ごみ」として専用のボックスに分別する必要がありますが、そもそもリチウムイオン電池の回収を行なっていない自治体もあります。
他の可燃ごみや燃えないゴミと混ざって捨てられてしまうと、収集車の中で発火して大事故につながることもあります。実際に、ゴミ収集車の火災原因としてリチウム電池が疑われるケースが増えていますのでここはしっかりと分別を。
また、家電量販店やホームセンターには使用済み電池の回収BOXがありますので、そちらに持ち込んでの回収もOK。ただし、ここで回収できるバッテリーは基本的にJBRC加入メーカーのものとなりますのでここもご留意ください。
なので、捨てるところまで含めてJBRC加入メーカー製を求めることをおすすめします。
おまけ:「リン酸鉄」という選択肢
最近、ポータブル電源やEVなどでは「リン酸鉄リチウムイオンバッテリー」が注目されています。
これはリチウムイオン電池の一種ですが、高温への耐性が高いため、従来のリチウムイオン電池よりも発火リスクが低く、より安全なバッテリーとなっています。
やや重いくて価格も若干高めになりますが、モバイルバッテリーにもリン酸鉄タイプが登場しているので、安全性を重視するなら選択肢として考えるのもアリですね。
メジャーなモデルだとエレコム製のヤツ。値段も手頃です。
まとめ:リチウムイオン電池は定番モデルが安全。正しく使えば安心
こうして身近なリチウムイオン電池ですが、使い方を間違えると危険なアイテムとも言えます。でも…
1.買うときに信頼できるメーカーを選ぶ
2.高温・衝撃・分解を避ける
3.捨てるときはリサイクルBOXや自治体のルールを守る
この3つを意識すれば、安全に使い続けることができますので。このあたりをしっかり守って、安心してスマホやモバイルバッテリーを活用していきましょう!
Source:JBRC, 東京消防庁, X, 日本品質保証機構(JQA), 気仙沼・本吉地域広域行政事務組合消防本部, NITE