イチロー氏「今こうやって幸せに野球をやれているのは、先輩たちの功績があったから」…オンライン会見一問一答(スポーツ報知)
日本人選手として初めて米国野球殿堂入りを果たすイチロー氏が、18日(日本時間19日)にオンライン会見に応じて、27日(同28日)にニューヨーク州クーパーズタウンで開催される式典を前に心境を語った。イチロー氏は、殿堂入り資格を得た初年度の投票で、満票にはわずか1票届かなかったものの、シーズン262安打の大リーグ記録を樹立するなどの偉業、功績が認められ、アジア人で初めて殿堂入りを果たした。主な質疑応答は以下の通り。 ―未来の野球で大切に思うものは。 「人間と人間が戦うスポーツなんで、やっぱり人間らしさっていうか、情熱とか、気持ちを大事にしたいっていうか。あまり無機質にならずに、人間と人間の競技だっていうところを僕は大事にしたいと思っています。そうじゃないところを教える人は今いっぱいいるんで。人間としてちゃんと僕ができることをやっていきたいと」 ―過去にクーパーズタウンを何度も訪れ、(年間最多安打記録前保持者)ジョージ・シスラーさんのお墓参りをしたり、野球の歴史を大切にしているのは、なぜか。 「僕たちが今こうやって幸せに野球をやれているのは、やっぱり先輩たちの功績があったからなんですよね。だから、そういう歴史を踏んで、今の我々があるということを、知っておかなきゃいけないし、その感謝をやっぱり伝えたい。野球人としてね、歴史っていうのはそういうものなんで」 ―それは、ご自身の思いでしょうか。若い世代にも教えられることでしょうか。 「もちろん両方です。あの、僕自身がその気持ちを示したいし、若い子どもたち、若い選手たちにそれを伝えられるかどうか分からないんだけど、やっぱり先輩が後輩に伝えていく義務はあると思うんですよね。それはいつの時代もそうであってほしいと思うし。ただ、それが伝わるかどうかはなかなか難しいところで」 ―今でもコーチとして毎日マリナーズで教えている。伝えたいことは。 「僕は、伝えたいことがあって、ここにいるわけじゃなくて、選手たちから求められれば、それをしたいというスタンスでいます。実際に走ったり、投げたり、守ったり、時には打ったりもするんですけど、彼らとはもう親と子ぐらい年齢的には違うんです。50歳ですけど、僕がまだこれぐらい動けるっていうのを、見せるだけでも彼らのモチベーションになるんじゃないかという期待はあります」 ―同期で殿堂入りするCCサバシアと、ワグナーとの関係は。 「前回、クーパーズタウンに行った時(1月)にCCとビリーといろいろ話したんですけど、CCは(ヤンキースで)チームメイトでもあった。でもピッチャーと野手ということであまり話す機会はなかったんですけど、すごくイメージ通りの人、すごく正直で、野球に対する熱い思いもあって、嘘がないっというか。そういう気持ちよさがすごくありました。ビリーに関しては、対戦したことは日米野球であったんですけど、CCがいてくれたことで、この3人がすごくいいバランスだったなという感じがしました。ビリーはすごく情熱的な人で、皆さんも、彼の涙を見ればそれがすぐ分かると思うんだけど、すごく素直な人で、話しやすい人で、いい人間だってことが、もうあの時間だけでも伝わってきました」 ―マリナーズとして殿堂入り。シアトルの環境が殿堂入りに導いた部分は。 「もともと僕がいたオリックスブルーウェーブというチームと関係があったこともあって。2001年の2年前ですね、99年にキャンプに参加したこともあったり。当時のオリックスにジム・コルボーンという投手コーチ(のちにマリナーズ・環太平洋スカウト)がいたり、日本にいた時から近い存在であったことはまず大きかった。2001年に実際に来た時には、僕はある程度マリナーズのことを知識として知っている状態でいたので、初めてアメリカに来て、いろんなものを見るという状態ではなかったんです。だから、その時点ですでにある程度の関係ができていたことは大きかったですし、実際にファンの前でプレーして、特別なシーズンでしたから、2001年は。その一年はすごく大きかったと思います」 ―マイアミでの経験について教えて下さい。 「シアトル、ニューヨーク、マイアミという順番でプレーしたんですけど、もう全く違う文化の中で、アメリカなんですけどラテン系の文化がすごく色濃くあった場所で、僕にとってはすごく新鮮な経験でした。チームメイトたちはみんな僕のことを尊敬してくれて、それまでのマリアーズやヤンキースのプロフェッショナルなチームとまた全然カラーが違って、MLBの中でもこういう全く違う空気のチームがあるんだっていう。すごくいい経験でした。だから今でもどこか、もし旅行に行くとしたら、マイアミには行きたいなって思うぐらいの場所です」 ―セレモニーをどれくらい楽しみにしているか。 「楽しみにしてるんですけど、もちろん緊張もします。僕は基本的に人前で話すときは、とても緊張するタイプなので、間違いなく緊張するんですけど。それよりもですね、来月の31日に、日本で女子の選抜チームとの試合が決定しているので、体作りが思うように進んでないことを心配しています」 ―現地での練習時間の確保は。クーパースタウンに行ってからの予定は。 「なんとか場所と時間を確保するように今トライしてます。ゴルフの予定があるんですけど、それはキャンセルして、野球の練習をする予定です」 ―子供の頃の原点に戻って、ご両親に対して思うことは。 「やっぱり小学生の4年間、毎日練習に付き合ってくれた父親がいるんですけど、その4年間なくしては僕の基礎は作られなかったと思うので。自営業であったことが、僕にとってはラッキーでした。やっぱり、サリーマンではできなかったと思うので。いろんな運が重なったんだなと改めて思いますし、毎日労力を費やしてくれたことは、大変感謝しています」
報知新聞社