英国が有人機と協調可能な無人戦闘機開発を発表、名称はストームファイター

英国は6月30日に発表した国防投資計画の中で協調戦闘機=CCAへの投資を承認、これを受けてルーク・ポラード国防即応・産業担当相は「タイフーン、F-35、テンペストと連携する自律型戦闘機の開発」を発表し、このCCAの名称についても「Storm Fighter=ストームファイターになる」と明かした。

参考:RAF autonomous fighter jet named Storm Fighter 参考:RAF launches StormFighter CCA effort to become ‘Europe’s first sixth-generation air force’

米国は防空システムで保護された空域に侵入する戦闘機の生存性を向上させるため、機体形状や素材を工夫してレーダーパルスを照射元とは別の方向に反らしたり、これを吸収して熱に変換し敵レーダーの探知距離を縮めるステルスを追求したアプローチを、欧州は第5世代機の開発に出遅れたため電子戦システムの開発に力を入れ、ミサイル接近警報システム、レーダー警報受信機、フレア・チャフディスペンサー、ダミーデコイを統合した次世代の保護能力(デジタルステルスとも呼ばれる)を追求したアプローチを選択した。

このデジタルステルスで電子戦システムと共に重要な役割を果たすのが「デジタル無線周波数メモリ(DRFM)技術」を活用したデコイで、イタリアのレオナルドが開発した消耗型アクティブRF(Radio Frequency)デコイ=BriteCloudは敵の航空機、艦艇、地上配備型防空システム、ミサイル等から照射されるレーダーパルスを検出し、これを機上で解析して模倣し、偽の標的信号としてばら撒くことで敵の認識力を混乱させ、迎撃から対象を保護することができる。

英空軍はトルネードGR.4とタイフーンの正式な電子戦システムとして、サーブはグリペンC/DとグリペンE/Fの電子戦強化オプションとして採用、イタリア空軍、デンマーク空軍、米空軍もテストが行われ、この結果を受けて米軍もF-35の正式なアクティブデコイとしてBriteCloud(米軍型式AN/ALQ-260(V)1)を採用し、レオナルドはAUSA2024でBriteCloudを発展させた新型のデコイ=BriteStormを発表した。

BriteStormはフレアディスペンサーから投射するタイプではなく、有人機に随伴するウイングマンや徘徊型弾薬に搭載するタイプで、有人機よりも先行して敵防空システムが作動する空域に侵入し、レーダーパルスの反射を模倣した偽信号をばら撒き、敵の認識を混乱させ迎撃能力を著しく低下させることが出来る、つまり機体形状や素材によるステルスに頼らなくても「敵の防空シールドを突破できる」「迎撃から対象を保護できる」という意味だ。

第5世代機や強力な電子戦システムをBriteStormと併用すれば「戦場での生存性」が向上するため注目を集めていたが、英国は2025年3月「Tekever AR3にBriteStormを統合した新型無人機=Storm Shroudの運用を開始した」「これは最も熾烈な戦闘空域における英空軍の優位性に革命をもたらす自律型協調プラットフォーム=ACPファミリーの第1弾だ」「Storm Shroudは敵のレーダーを盲目にすることでF-35Bとタイフーンのパイロットを支援し、有人航空機の生存性と運用効率を向上させる」「Storm Shroudはウクライナで進行中の紛争を含む世界各地の作戦地域から得られた教訓を活かして開発された」と発表。

出典:BAE Systems

英国は自律型協調プラットフォームを航空戦力に統合するACP戦略を2024年3月に発表済みで、6月30日に発表した国防投資計画の中でも協調戦闘機=Collaborative Combat Aircraft(CCA)への投資が承認され、ルーク・ポラード国防即応・産業担当相はロンドンで開幕した国際航空宇宙軍参謀長会議で「タイフーン、F-35、テンペスト(GCAPのこと)と連携して新たなレベルの攻撃性と生存性を提供する自律型戦闘機を開発する」「このCCAの名称はStorm Fighterになる」「Storm Fighterが英空軍を欧州初の第6世代空軍にするだろう」「Storm Fighterは有人機にとっては守護天使であり、敵にとっては番犬になる」と述べた。

英国のディフェンスメディア=UK Defence Journalは「このプログラムはStorm Shroudとタイフーンの組み合わせを基盤にしている」「これは第6世代戦闘機、無人機、絶えず進化し続ける電子戦が入り乱れた戦闘の嵐の中心で航空戦力の能力を最大化することを目的にしている」と報じ、ジェーンズも「まだStorm Fighterの正式な要求要件は公表されていないにもかかわらず、既に複数の企業が関心を示しており、中でもBAEシステムズとボーイングが注目されている」と報じている。

出典:Royal Air Force

英国の残念なところは先進的な技術への着目が早いにも関わらず「資金供給が遅いため後発組になってしまう」という点で、オーストラリアのMQ-28A開発と同時期に計画されていたLanca(ランカ)の技術実証機=モスキート製造が順調に進んでいれば、2023年にモスキートを飛ばして無人戦闘機開発をリードする立場を手に入れられかもしれないが、2022年6月に開発をキャンセルしてしまい、既にMQ-28A、XQ-58A、FQ-42A、FQ-44、YFQ-48Aが空を飛んでおり、Vectis、X-BAT、CA-1、U760レイブンストームといった競合も開発中でStorm Fighter計画は完全に後発組のいち計画に過ぎない。

モスキート製造をキャンセルした当時、英国防省は「分析と能力実験を実施した空軍と国防科学技術研究所は『有益な能力と費用対効果を無人戦闘機が獲得するためには、より小型で安価でなければならない』という結論に達した」と述べていたが、実際のところは未検証な技術への投資に踏み切れなかっただけで、結果論から言えばリスクを冒すだけの価値ある市場が形成されつつあり、今から投資に踏み切っても輸出志向が高い英防衛産業界にどれだけの恩恵をもたらせるかは謎だ。

出典:Boeing

ちなみに英空軍は「タイフーンと協調可能な無人戦闘機を2030年までに配備する」という目標に掲げていたが、まだ要求要件すら固まっていないStorm Fighter計画が「2030年」というタイムラインに間に合うはずがなく、ドイツが2029年までに敵地深部で危険な任務を遂行可能なCCAベースの無人戦闘爆撃機の初期作戦能力(IOC)獲得を計画しているため、欧州で最初に有人機と無人機の協調能力を手に入れるのは英国ではなくドイツになるだろう。

英国は2024年3月に自律型協調プラットフォーム(ACP)戦略を発表したものの、これに含まれる無人戦闘機への本格的な投資が承認されたのは2026年6月で、ドイツでは2024年頃まで公式な無人戦闘機計画が存在せず、2025年半ばになって本格的に動きだしたにも関わらず、圧倒的な資金力で武器主権を確保した無人戦闘機を英国より早く実現させるというのだから、資金力のない開発計画ほど惨めなものはない。

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※アイキャッチ画像の出典:BAE Systems

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