大阪市立中・中3男子自殺「いじめが最大の要因」 第三者委報告書

大阪市役所=大阪市北区中之島1で2019年2月25日、林由紀子撮影

 大阪市立中学3年だった男子生徒が2023年8月に自殺したことを受け、市教育委員会が設置した第三者委員会は12日、45件のいじめを認定し、いじめが自殺の最大の要因だとする調査報告書を公表し、市教委に提出した。男子生徒は水泳部に所属し、中1のころから、複数の部員らが嫌がらせや仲間外れなどの行為を続けていた。報告書は、教職員らがいじめと認識せず、対応に問題があったと指摘した。

 報告書によると、男子生徒は23年8月14日午後11時50分ごろ、「ごめんなさい 今までありがとう すべてが嫌になった これ以上傷つきたくなかった」などと遺書を残して自殺した。市教委は、いじめ防止対策推進法に基づく重大事態と判断し、第三者委による初動調査で資料を収集。遺族の了承を得て、23年10月に弁護士や臨床心理士からなる部会を設置し、生徒や教職員ら計100人への聞き取りなど詳細な調査を進めた。

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 その結果、亡くなった男子生徒は複数の水泳部員から、部活やクラスで嫌がらせ、仲間外れ、暴力などの行為を受け続けていたことが明らかになった。

 中1の冬ごろ、部員から強い口調で責められることがあり、中2になると、事実でもないのに「女たらし」などとからかわれた。中3になると、SNS(交流サイト)のフォローを外されたり、練習中に「あっち行け」などと排除されたり、タックルをされたりするなどの行為が続いた。

第三者委員会が認定した主ないじめの内容

 亡くなる当日の23年8月14日、大阪市大会の終了後に部員ら7人で開いた打ち上げに誘われなかった。SNSを通じて事実を知った男子生徒は「ハブられた」(仲間外れにされた)や「病んだ」などとメッセージを送り、その日の深夜に自ら命を絶った。

 これらの行為について、報告書は、いじめに該当すると認定した上で、8月14日の出来事を「生徒に及ぼした精神的打撃は甚大」と評価した。

 いじめが深刻化した背景として、報告書は、男子生徒が通っていた中学校で、いじめの認知件数が際立って少ないことを示した。そのうえで、教職員のいじめに対する感度が鈍っていたことや、学校が「いじり」を「いじめ」と区別し、場を盛り上げるために許容した可能性も指摘した。

 水泳部の問題点として、顧問不在の時があり「大人の目が行き届かないことにより、生徒は暴力的な行動や悪口などを行いやすくなる」と指摘。顧問が部員に言動を注意したことはあったが、「いじめとして認知されず、報告されることは一度もなかった」と言及した。「顧問や部員が誰も助けてくれない状態になり、(男子生徒が)無力化していたといえる」との見方を示した。【高良駿輔】

相談窓口

・24時間子供SOSダイヤル

 いじめやその他の悩みについて、子どもや保護者などからの相談を受け付けています。原則として電話をかけた所在地の教育委員会の相談機関につながります。

 0120・0・78310=年中無休、24時間。

・子どもの人権110番

 「いじめに遭っている」「家の人に嫌なことをされる」など、先生や親には話しにくい相談に法務局の職員や人権擁護委員が応じます。

 0120・007・110=平日の午前8時半~午後5時15分

まもろうよ こころ

 さまざまな悩みについて、LINEやチャットで相談を受けている団体を紹介する厚生労働省のサイトです。年齢や性別を問わず、自分に合った団体を探せます。

こころの悩みSOS

 悩みを抱えた当事者や支援者への情報のほか、相談機関を紹介した毎日新聞の特設ページです。

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