【阪神よもやま話 元虎番の独り言】今年のMVPは…阪神・石井大智を〝まわり〟は評価している

無失点記録を更新し続ける阪神・石井大智

8月22日のヤクルト戦で連続試合無失点の日本記録を「42」とさらに上積みした阪神・石井大智投手。

昔から、「連続」と名の付く大記録を更新すると、案外、すぐにストップする傾向がある。ホッとするのか、気が抜けるのか。石井が大記録を達成して、さらに伸ばしたのは本当に立派のひと言だ。

1979年。当時の連続試合安打の記録保持者・長池徳二(阪急)の不滅かと思われた「32」に迫ったのが高橋慶彦(広島)。22歳の若きヒーローは一気に追い越した。が、「33」の新記録を樹立した途端に故障もあって、記録はストップしてしまった。

「故障がなかったら? ずっと打ち続けていた」

オリックスコーチ時代に冗談交じりに振り返ってくれたが、「記録とはそういうもんよ」とも笑っていた。

とはいえ、この記録、46年経過した令和の時代になってもまだ破られていない。

石井の快挙をたたえるいろんな記事、番組を目にして、一番気に入ったのが、石井という人間の考え方だった。

「自分が頑張っている、努力していると思うのは、すごく意味のないことだと僕は思っていて。日々の積み重ねをしている中で、努力はまわりが評価してくれるもの。自分で感じるものではない」

その通りだと思う。この世の中、見ている人が必ずいて、評価してくれるもの。評価は他人がする。すばらしい人間は、放っておいても、勝手に周囲が評価してくれる。

〝まわり〟の一人でもある筆者が偉業を思いっきり評価してあげたい。

たまに、いませんか? 俺を見習え!

そう言ってくる自意識過剰なヤツが。石井なら絶対に言わないし、石井の正反対のタイプ。そういう人間に限って、たいしたヤツを見たことがない。

日々の積み重ねが石井を日本記録保持者という高みに導いたのだろう。

へそ曲がりな友人がいて、尋ねてくる。昔の投手の連続記録に比べると、今のリリーフだけで達成する連続記録は、意味がないのでは?と。

たとえば、石井の投球で新たにスポットが当たった連続イニング無失点。22日の試合で「41」まで伸びた。

阪神では江夏豊に並んで3位タイ。上を見上げたら小山正明の47回があって、球団記録は藤川球児の47回⅔。伝説の名前ばかりが並ぶ領域に、石井が加わった。

ただ、へそ曲がりが言うのだ。

「江夏は1カ月あまり。小山にいたっては、3週間程度で記録している。完封を繰り返した偉人たちと比較するのはおかしい」

なるほど、そういう意見を否定するつもりはない。

ただ、野球そのものが変わってきているのだ。一人で投げ切る時代から、分業の時代へ。

小山や江夏が短期間で達成した記録ではあるが、逆にいえば、石井は4カ月以上も好調をキープし続けたからこその記録ともいえる。

日々の積み重ね、という石井の言葉にピッタリの記録だ。

さて、ラストスパートに入っている阪神。この先に苦難が待ち受けているのかもしれないが、ことしの阪神ほど、順調にシーズンを送ったチームが過去にあっただろうか。

振り返って、唯一の苦労は交流戦の7連敗。石井が頭部に打球を受けて離脱した時期と重なる。石井の存在がいかに大きかったかを物語る。

2005年シーズン。岡田彰布監督のもと優勝した阪神は、JFKが君臨し、七回を完璧に抑える藤川球児にスポットライトが当たり続けた。「MVPは藤川」という世論まで巻き起こる。結果は打率・327、40本塁打、125打点の金本知憲に譲るのだが…。

さて、阪神が優勝したら、MVPは誰? 佐藤輝がいて、近本がいて、森下がいて、中野がいて、才木がいて、村上がいて。

もちろん、あの年の藤川球児に遜色ない活躍を見せた石井も間違いなく候補の一人。どうしようか…。

■上田 雅昭(うえだ・まさあき) 1962(昭和37)年8月24日生まれ、京都市生まれ。86年入社。近鉄、オリックス、阪神を担当。30年近くプロ野球を見てきたが、担当球団が一度も優勝していないのが自慢(?)

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