国家公務員共済がファンド評価を厳格化-委託先は解約の「緊張感を」
公的な年金基金である国家公務員共済組合連合会(KKR)は、投資しているアクティブファンドの評価を厳格化する方針だ。年金受給者の利益をより追求する動きで、早ければ1年程度でファンドを入れ替える可能性もある。
運用資産約10兆円のKKRは、約9000億円を国内外の株式や債券のアクティブファンドに選別投資している。小西氏は一度委託先に選定されても「いつ落ちるか分からないという緊張感を持ってやっていただく」と説明。7月から新たな委託先候補を選定する専任担当者を置いたほか、ファンドの運用状況を日々モニタリングする体制を整えたという。
アクティブファンドは、運用担当者が独自に投資銘柄などを選び市場平均を上回る超過収益を目指す投資信託だ。4月に新設したCIO(運用担当責任者)に就任した小西昭博氏はインタビューで、モニタリングの強化などにより、見直し頻度が従来の5年程度から1-2年程度に短くなる可能性を示した。
同ファンドは運用会社や担当者により成果に差が出るため選別が重要になる。KKRの動きは受益者にとって最善の利益を追求するよう政府が定めた行動規範「アセットオーナー・プリンシプル」に準じたものだ。小西氏のCIO就任を機に運用力強化に取り組んでいる。KKRを含め規範に賛同表明した年金基金などは7月末時点で251に上り、運用会社が提供するファンドの質が従来以上に問われることになる。
行動規範に「定期的評価」
運用について規範では「委託先・運用方法を定期的に評価し、自らの運用目的・目標・方針に照らして必要に応じて見直すべきだ」などと記している。
KKRの業務概況書によると、2024年度は運用成果などが「選定当初の期待とは著しく異なる状況になった」としてアクティブ運用27契約のうち、国内株で5件、外国株で4件、外債で1件の計10件を解約し、資金は一時、インデックス連動型のパッシブ運用に置き換えた。
SMBC信託銀行の山口真弘チーフマーケットアナリストは、年金基金などでファンド評価の厳格化が広がることで、アクティブ運用の担当者が「企業との対話活動をより強め、企業価値向上などにつなげようとする可能性はある」と分析。パッシブ運用と異なり、期待収益の低い企業などへの投資を避けられるメリットも指摘した。
KKRの運用資産に占めるアクティブ比率は3月末で8.9%と1年前の13%から低下した。ファンド構成を再構築するため一時的に減らしたが、新たなファンドへの投資などで従来程度に戻していく考えだ。小西氏は各ファンドに期待する役割を明確化し、変化する市場環境の下で「ポートフォリオ全体としてベンチマークに勝っていればいい」と話す。
24年度は米景気の後退懸念で8月に世界の株価が暴落。トランプ米大統領の関税政策発表を受け再び下落傾向を強め、内外の金利も大きく動いた。アクティブファンドには、市場環境の変化に応じた機動的な運用により、運用収益の振れを和らげる効果なども期待されている。
ニッセイ基礎研究所の年金総合リサーチセンター長の德島勝幸氏はアクティブファンドの評価について、金利のある世界の到来など「環境変化に対応しながら見直し頻度などを考えて動いていくことが大切だ」と指摘する。分散投資の観点などから短期と中期のバランスも重要になると述べた。