中国社会でも迷惑がられる転売業者 狙われるのはSwitch 2からライブチケット、病院の整理券まで

中国では病院の予約でも転売業者が絡んできて騒ぎになるという

 Nintendo Switch 2が発表されるや、早速中国では「黄牛」とも呼ばれる転売業者がSwitch 2の販売を宣言。今年初めには秋葉原のPCショップでGeforce RTX 5090の購入希望者が暴れて周辺を巻き込んだトラブルが起きる(「RTX 5090/5080」店頭販売で混乱、幼稚園に不法侵入も 秋葉原パソコン工房」)など、今年も転売絡みの騒動が生じている。

 注目の製品が登場すれば、中国の転売業者は国を越えて買いつけに来る。今でこそ以前の勢いは失われたが、iPhoneは転売屋の格好のターゲットだった。転売ではないが、iPhoneの新モデル登場時にニセモノが登場することもあった。Wiiが人気のときにはニセモノの「威力棒Vii」なる代物も登場し、日本でいじられた。中国の有名税といえばニセモノと転売であり、転売業者が寄ってくるのは困った話ではあるが人気の証なのも確かだ。

 PS5やSwitchが長らく日本で入手が難しかったのもその影響だし、振り返ればPS3やWiiが登場した2006年頃から、中国への転売が話題になり、実際に新ハード登場とともに転売屋が日本や香港、米国で入手した製品を販売していた。

PS5 Pro 30周年記念版は70万円前後で売られていた

 当時は平均所得はまだまだ低く、経済は発展途上ではあったが、それでも発売後すぐに遊びたい金持ちの消費者はいたのである。さらにそれより前だと、発売日に買う中国の転売屋はいたのかもしれないが、そもそもインターネットやECがそれほど普及しておらず目に見えなかっただけなのかもしれない。

 当然ながら、中国においてもデジタル製品の転売屋は良く思われることはないが、とはいえ彼らがいなければ、中国で公式では発売されないゲーム機などは入手できないわけで、必要な仲介業者だと見る向きも以前はあった。

 しかし、中国人の所得は近年上がって、数万円レベルの商品への経済的ハードルが下がり、自分事となってくると風当たりは厳しくなったようで、転売業者が稼ぐのを阻止しようという「反転売業者同盟」というユーザーグループも登場している。

ファーウェイの3つ折りスマホは大騒動に 購入時に開封が必要など対策はしている

 最近の転売業者が注目するのは、アップル製品とファーウェイ製品だ。アップル製品では、3499ドル(日本では59万9800円)のApple Vision Proが話題に。業者の1人は中国で販売する商品のために、発売日前日の2024年2月1日に米国を訪れて購入。512GBモデルを4万元(約80万円弱、1元=20円弱)で販売した。しかしファーストユーザーのレビューが出回るや値段は下がり、2週間後の2月15日に価格は3万6900元となり、日本円にして6万円以上の下落となった。

Apple Vision Proは当初9万元(約180万円)もの価格に

 中国国内で復活を遂げたファーウェイのスマートフォンは、その人気ゆえにハイエンドモデルが業者のターゲットとなる。特に3つ折りスマートフォン「HUAWEI Mate XT」は、定価の時点で1万9999元(40万円弱)と非常に高額ながら、予約開始後24時間で200万台、12日で647万台の予約が入った。

数百万円というトンデモ価格で売られたファーウェイの3つ折りスマホ

 それでいて、実際の販売数は現時点で40万台強であり(それでも十分に多いが)、ケタ違いの予約数の背景には業者がその何倍もの価格で転売をするべく予約したのと、転売屋が動くなら、業者以外の人間も稼ごうと、財力がある人が投資感覚で予約したことがある。

 そんなファーウェイも対策はしている。2023年に発売されたHUAWEI Mate 60 Proでは、実店舗では転売防止対策のために販売時にパッケージを開封し、アクティベーションをしなければ持って買えることができないという措置を取った。

 オンラインでは爆速で売り切れとなったが、こちらも1人1台となるよう実名認証で制限し、かつ予約してから本体入手までに90日かかるようにした。

「35歳以下」「男性」「リュック客」はチェックされる

 またあるファーウェイの実店舗は、「35歳以下」「男性」「リュック客」「自身のスマホと希望のモデルに大きな格差」「本体がとにかく欲しい」という客について注意が必要だとし、中でも値段上昇が見込まれる端末の場合に「要注意客の画像を保存をして、過去に問題ある購入をしていないかチェックをし、その場で売らず、微信(WeChat)に登録して消費者を観察する必要がある」としている。

 現在の中国の制度では、他人の顔写真を本人の許可をとることなく取り込むことは許されていないが、当時はできたのだろう。中国に旅行がてら話題のスマホをとにかく欲しいという読者がいれば「すわ、店舗にマークされるのか!」と思うかもしれないが、中国語が話せない外国人とわかれば、店員に状況は理解されるのではないだろうか。

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