マイクロソフトだけじゃない。AmazonもAIデータセンター計画を一時停止
先行きが不透明すぎるから、リスクを避けるには妥当な判断のような。
AIデータセンターの大型計画を見直す動きが広がっています。金融系企業のWells Fargo(ウェルズ・ファーゴ)と投資銀行のTD Cowen(TDコーエン)によると、Amazon(アマゾン)がヨーロッパで進めていた一部のコロケーション型データセンターの契約交渉を一時停止したそうです。
このニュースは、Microsoft(マイクロソフト)がデータセンターに関する計画の一部を一時停止または中止したという報道の直後に発表されました。
マイクロソフトに続いてAmazonもAIデータセンター計画を一時停止
ウェルズ・ファーゴは、「停止の規模は不明ですが、最近のマイクロソフトと似た対応です。積極的に契約してきた案件を、いま整理しているところのようです」と述べています。
ただし、マイクロソフトについては、すでに契約済みの案件は継続中みたいです。コロケーションとは、複数の企業が共同でデータセンターを構築し、インフラのコストを分担するという概念です。
他社は建設を加速中も、電力不足がネック
一方で、MetaやxAIを含むほかの企業は、AIモデルを強化するために、引き続きデータセンターの建設を急いでいます。
ただ、大規模施設には大量の電力が必要で、電力網が追いついていないのが現状です。Amazonも、建設中の施設を稼働させるのに時間がかかるかもしれません。報告書によれば、Amazonはすでに9GWの電力容量を持つ施設を稼働させているとのこと。
景気後退の懸念がAIブームに影
しかしこのニュースは、AIインフラの需要が鈍ってきたという懸念をさらに裏づけるかたちになっています。企業側は、AIを実際に活用して効率化やコスト削減に結びつけるのに苦労しているとのことです。
そしてさらに足を引っ張っているのが、トランプ大統領による貿易戦争。株価が急降下し、Amazonの株も今年だけで24%下がっています。Amazonのマーケットプレイスに出品されている商品の7割以上が中国製だといわれていて、関税の影響もかなり大きそう。
こうした経済不安は、AI業界全体に影を落としています。NVIDIA(エヌビディア)は中国との取引が多く、高性能チップが制裁をすり抜けて中国に渡っている可能性があるとして調査対象になっています。もしAmazonがデータセンターへの投資を減らせば、NVIDIAの売上にも影響が出るかもしれません。
地元への影響はプラスもマイナスも
Amazonは5月1日に決算を発表する予定で、AI需要の動向に注目が集まりそうです。また、マイクロソフトも最近、オハイオ州で進めていた10億ドル(約1410億円)規模のデータセンター計画を撤回しました。この計画には多額の税制優遇がついていましたが、地域住民にとっては雇用も少なく、電力や水を大量に消費することへの懸念もあったようです。
マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏は、「AIはまだアメリカ経済に実質的な恩恵をもたらしていない」と語っており、AI革命に対する期待を沈静化させようとしているようにみえます。ただし、今後数年でインフラに800億ドル(約11兆3460億円)投資する計画をあらためて表明しています。
住民にとっては、計画が取りやめになれば税負担が軽くなるというメリットもあります。ただ、データセンター建設には多くの建設労働者が関わるため、雇用の機会が減るというマイナス面もあるといいます。
さらに、老朽化しているインフラの整備や再生可能エネルギーへの投資が進むきっかけにもなっていたため、ちょっともったいない気もします。AIが身近な価値をもたらす存在になるのでは、という期待も少しあったのではないでしょうか。
とりあえず、少なくとも今後数カ月は、先が見えないトランプ関税とその経済への影響を静観するしかないような気はしますね。