米ゴシップ系インフルエンサー、TikTokで移民取り締まり警戒情報提供

ジャケリーン・ベラさん(32)さんは、バッド・バニーやラアレハンドロといったセレブに関するゴシップ「チスメ」(スペイン語で「噂」の意)を動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」に投稿し、何万人もの熱烈なフォロワーを獲得してきた。

  だがそれは、トランプ米大統領が昨年の大統領選で再選し、米国史上最大となる不法移民の強制送還を公約するまでのことだ。シカゴでコンテンツ制作者(ハンドルネーム@jaxxchismetalk)として生計を立てているベラさんは、その頃から政治に関する投稿を始めた。

  トランプ氏の大統領令を非難する一連のメッセージから始まったベラさんの活動は、不法移民を取り締まる米国移民・税関捜査局(ICE)捜査官の目撃情報を追跡するキャンペーンへと発展した。最近行われた摘発の様子を背景にした動画は大きな反響があり、目撃情報も頻繁に寄せられるようになった。フォロワー数の急増を受け、ベラさんは情報の追跡が可能なようにクラウドソースの表計算シートと地図を作成した。

   地図上に表示される目撃情報は、ICEの捜査官がジムやコーヒーショップの外に立っているだけのように見えるものもある。 目的は、許可なく滞在している移民やその家族に、ICEがどこに集結しているかを知らせ、その地域に滞在することが安全かどうかを判断できるようにすることだ。

情報提供

  もしトランプ氏が選挙公約を守り、TikTokの事業継続を認めるのであれば、もう一つの公約、つまり、米国に不法滞在している1100万人以上の移民を一斉検挙して国外追放するという公約は、実行が難しくなるかもしれない。 概して、言論の自由の保護の下では、移民取締りについての警告を発することは違法ではない。 ベラさんや、同じ考えを持つ他のTikTokコンテンツ制作者たちは、その利点を活用している。

  ベラさんは「私は何が何でもやるつもりだ。これは本当に重要なことだと感じている」と語った。地元シカゴで初めて取り締まりについて聞いた際はショックを受け、こうした措置で影響を受ける可能性のある人々の身を案じたという。

  セレナ・ゴメスやソフィア・ブッシュといった億万長者や俳優が、ソーシャルメディアにトランプ氏の移民取締りを強く批判する投稿を掲載し、注目を集める中、ベラさんとその仲間たちはよりニッチな役割を担っている。タイミング悪く都合の悪い場所にいると逮捕され、最終的には強制送還される可能性があるという恐怖にさらされているコミュニティに、情報を提供することだ。ベラたちは、強制捜査が強化されている中、移民らに彼らの権利について知らせようとしていると語る。

  トランプ政権は、暴力犯罪者の国外追放が優先課題だと強調し、ニューヨーク、ボルティモア、アトランタ、デンバーなどで重大犯罪で有罪判決を受けた移民を逮捕している。取り締まりを支持する人々の中には、ベラさんらのような取り組みを弱体化させようと、偽の目撃情報を提供し、混乱を引き起こす人もいる。

  X(旧ツイッター)への投稿によると、1月27-29日の入国管理局による逮捕は、1日平均1000件超と、前年度のほぼ3倍に上った。トランプ氏の大統領就任後に拘束された人の中には、違法銃所持、性犯罪、未成年者に対するわいせつ行為の罪に問われていた者が含まれる。だが、逮捕者の中には不法入国以外の容疑はない人もかなり含まれていた。

協力者

  パートタイムのコンテンツ制作者として活動するカリフォルニア在住のセレステさんは、ベラさんに連絡し、自身のIT知識をプロジェクトに役立てたいと申し出た。そして、摘発に関するデータベースの改善と拡張を手伝うことになった。彼らは最終的に、匿名の投稿者がICEの目撃情報を投稿し、企業、交差点、住所を特定するピンで示される全米の地図を完成させた。先週公開されて以来、何千もの情報が寄せられている。

  ニューヨークのブルックリンを拠点とするボランティアグループ「NYCマイグラント・ソリダリティ」の主催者シャンタル・セラーノ(25)さんは、移民関連の情報への需要はかつてないほど高まっており、その結果、情報の精査がより困難になっていると語る。セラーノさんの組織は、無用な噂を排除し、恐怖心を鎮め、移民が普段の生活を送れるよう支援する取り組みを行っている。

  セラーノさんは「目にするもの、耳にするものすべてについて、ビデオや写真で確認するようにしている。システムは完璧ではなく、私たちは連絡や情報をくれる人々に頼っている」と明かす。

  ベラさんは最近、セレブのゴシップに関する投稿を大幅に減らしている。移民問題に焦点を当てるという、喫緊の必要性に迫られているためだ。だが、トランプ政権初期のキャンペーンが一段落すれば、取り締まりも収まり、通常通りの投稿に戻れると期待している。

  ベラさんは「私の夢は、この地図を二度と使わなくて済むようになることだ」と話した。

原題:TikTok Influencers Leverage Power of Gossip to Thwart ICE Raids(抜粋)

関連記事: