韓国の大手防衛企業がドイツ市場攻略に挑戦、迎撃ミサイルを売り込み

韓国製の自走砲や多連装ロケットシステムは欧州市場を席巻しつつあり、遂にHanwha Aerospaceはドイツ攻略に乗り出すため4月21日にHanwha Defence Deutschlandを設立、独ディフェンスメディア=hartpunktの取材に「ドイツに弾道弾迎撃ミサイル=L-SAMを売り込みたい」と明かした。

参考:Hanwha setzt auf Made in Germany – Gründung deutscher Unternehmung in Berlin 参考:Hanwha sieht Chancen in Deutschland und strebt langfristige Partnerschaften an

Hanwha Aerospace製の自走砲や多連装ロケットシステムは欧州市場を席巻しつつあり、自走砲のK9はポーランドが600両以上、トルコが280両以上、フィンランドが208両、スペインが128両、ルーマニアが54両、ノルウェーが52両を導入中で、NATO加盟国だけでも1300両超の輸出実績を誇る。多連装ロケットシステムのChunmooもポーランドが290両、ノルウェーが16両、エストニアが6両を導入中、ルーマニアも導入を検討中で、遂にHanwha Aerospaceはドイツ攻略に乗り出したようだ。

出典:Puolustusvoimat

Hanwha Aerospaceは2026年4月21日にHanwha Defence Deutschlandを設立し、同社のトルステン・クッツ氏は独ディフェンスメディア=hartpunktの取材に「我々はドイツにHanwha Aerospace製の兵器システムを供給したいと考えている」「特にドイツのパトリオットシステム(PAC-3)とArrow3の迎撃高度、つまり高度40km~100kmの領域にはギャップが存在する」「この領域をカバーするため量産体制に入っているL-SAMを提供できると考えている」と明かした。

ドイツ軍採用を勝ち取る基本的な戦略は「韓国からコア技術を提供してL-SAMのドイツ化とNATO基準への対応」で、クッツ氏は「長期的な成功を勝ち取る鍵はドイツでの生産能力とサプライチェーンの構築だ。1年前から各州政府と協議を重ねて生産施設建設に適した場所を探している。まずは弾薬、推進薬、装薬などの製造から始める予定だ」「これにより直接雇用とサプライチェーンを合わせて数百人の雇用創出が見込まれ持続可能で長期的な投資になるはずだ」「L-SAMが受注できればポーランドと同じようにドイツでもミサイルの生産ラインを構築する」「欧州全体のバランスを考慮する必要があるもののドイツへの大規模投資は基本方針だ」という。

出典:Hanwha Aerospace

同時に「ドイツ市場への参入は決して容易ではない」「なぜならドイツはEuroPULS導入を選択済みで自走砲もKNDS製を使用している」「さらに輸出市場の潜水艦分野では競合関係だ」「そのためドイツ市場に参入するのは一定の時間と説得が必要になる」と認めた上で「EuroPULS向けにPrSM Increment1に匹敵する射程500kmのCTM-X、射程150km~300kmの巡航ミサイルや徘徊型弾薬も提供できる」と言及し、本当に輸出市場のトレンドをよく理解している。

Hanwha Aerospaceは手始めにドイツ国内で火薬生産(おそらくポーランド向け)を立ち上げてドイツ人雇用や産業界に貢献し、ドイツ軍にL-SAMを売り込みながら、EuroPULSに欠けている射程500kmの長距離攻撃能力の解決策として「Chunmoo向けのCTM-XをEuroPULSに統合してもよい」と提案するのだ。

出典:KNDS Deutschland

EuroPULSを提案しているKNDS Deutschlandにとっては面白くないだろうが、EuroPULS生産を立ち上げるための大口顧客であるドイツ軍が「CTM-Xを統合して欲しい」と言えば拒否するのは難しく、多連装ロケットシステムでネックになっているのは「弾薬供給先の多様化」であり、KNDS DeutschlandにとってもEuroPULSで「イスラエル製弾薬」と「韓国製弾薬」の両方を使用できるというのは「弾薬供給先の多様化」において有利なので悪い話ではない。

さらに興味深い点は「オリジナル仕様のL-SAMは2028年に欧州市場に投入可能だ」「L-SAMはロシアの脅威や中東地域での実戦経験(高い迎撃率を叩き出したCheongung-IIのこと)から国際的な関心が極めて高い」「特に欧州では即時入手可能性と資格認定(軍が能力を認めて使用可能なシステムと認定すること)が強く求められる」「L-SAMは米国の国際武器取引規制=ITAR対象部品を一切使用していない」とも述べており、L-SAMは資格認定が課題になるものの、オリジナル仕様であれば2028年に入手でき、しかもITAR Free設計なので米国に気を使う必要がないのは非常に強力なセールスポイントになるだろう。

ドイツ軍やドイツ産業界が韓国製システムについてどう反応するかは不明だが、Hanwha Aerospaceはドイツ市場に売り込みをかける材料だけは揃えているように見える。

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※アイキャッチ画像の出典:Hanwha Aerospace

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