ウォール街、ドル高進行を予想-トランプ次期大統領の就任にらみ

ウォール街では、回復基調の米経済と利下げ期待の後退、トランプ次期米大統領の厳しい関税賦課公約を踏まえてドルがさらに上昇するとの見通しが強まっている。

  ゴールドマン・サックス・グループとTDセキュリティーズ、ドイツ銀行など大手銀行の為替ストラテジストらは今年のさらなるドル高進行を予想。ブルームバーグ・ドル・スポット指数は13日に5営業日連続で上昇した。投機筋はヘッジファンドや資産運用会社を含めドルに対し2019年以来最も強気な姿勢だ。ブルームバーグが集計した商品先物取引委員会(CFTC)の1月7日までのデータによれば、ドル買いポジションの総額は約337億ドル(約5兆3200億円)に達した。

They now hold some $33.7 billion in bullish greenback bets

Source: CFTC, Bloomberg

  マネックスの外国為替トレーダー、ヘレン・ギブン氏はドルの好調が続くと予想。「ドル指数が2022年11月の水準まで上昇するなら、それはトランプ氏の大統領就任式の前か直後になる」との見通しを示した。

  ドル指数は22年のピークを試すまであと2.8%に迫っている。既に、今後1年間のドルのさらなる上昇に対するヘッジコストは、ほぼ2年ぶりの高水準に達している。

  ドル高の要因は、トランプ氏の関税計画と、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げにより慎重なアプローチを取る可能性を示唆していることだ。10日に発表された米雇用統計が好調だったことから、JPモルガン・チェースなどウォール街の大手行は今年の利下げ回数見通しを後退させている。

  トレーダーはドルが歴史的高値圏で取引されているにもかかわらず、ますます強気になっている。アムンディの債券・為替戦略ディレクター、パレシュ・ウパダヤ氏やTDセキュリティーズのストラテジストらは、ドルが22年の高値を再び試すと予測する。

  ゴールドマンのカマクシャ・トリベディ氏らストラテジストは、約2カ月ぶりにドル相場予想を上方修正し、今後1年でドルが5%上昇するとの見通しを示した。

  一方、ジョージ・サラベロス氏率いるドイツ銀行のストラテジストは、FRBと欧州中央銀行(ECB)の政策見通しの差の広がりなどを背景に、ユーロが対ドルでパリティー(等価)を下回ると予想。

  ドイツ銀はまた、日銀の利上げを予想しながらも、ドル・円は現在の1ドル=157円台から160円まで上昇するとして、ドル買い円売りを推奨。利上げが円相場の下支えにつながるかどうかは不明だと、サラベロス氏らはリポートに記した。

  アムンディのウパダヤ氏は「関税を巡る懸念が世界的な成長とインフレの先行きに不透明感をもたらす中、米金融当局は利下げ休止で対応する公算が大きく、金利差拡大につながりドルに有利になる」と述べた。

原題:Wall Street Sees Dollar Rally Widen as Trump Enters Stage (1)(抜粋)

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