値上げ予告6時間で撤回-トランプ氏の関税巡り卸売業者が右往左往
3日の朝、米国の大手食料品卸売業者は、取引先である米国の小売業者1100社に対し、メキシコとカナダ産の肉、キノコ、トマトなどの商品の価格が25%高くなるだろうと予告した。
しかし、わずか6時間後、その恐ろしい予告は遠慮がちな曖昧さに変わった。「関税の導入が商品の純コストにどのような影響を与えるかは分からない」と、 アソシエイテッド・ホールセール・グローサーズ(AWG)はその日2回目のメールで顧客に伝えた。
米大統領がソーシャルメディア向けの新しい投稿を書くのと同じスピードで考えを変えてしまう時代に商売をすることの難しさが浮き彫りになる。
AWGの最初のメールが送信されてから30分もたたないうちに、メキシコのシェインバウム大統領はトランプ米大統領と会談。トランプ氏が課すと脅していた25%の輸入関税の発動を1カ月延期すると両首脳が発表した。カナダのトルドー首相も、食料品卸売業者からの2回目の通知から少したった午後に、同様の協定を結んだ。
I just had a good call with President Trump. Canada is implementing our $1.3 billion border plan — reinforcing the border with new choppers, technology and personnel, enhanced coordination with our American partners, and increased resources to stop the flow of fentanyl. Nearly…
— Justin Trudeau (@JustinTrudeau) February 3, 2025
AWGの広報担当者は、同社への納入業者が価格を変更すれば値上げは起こるだろうと述べた。
この出来事は、絶え間ない急激な変化の中で価格や業務の調整に努める企業の間で混乱が生じていることを浮き彫りにした。企業とその経営陣は、トランプ氏の関税公約の潜在的脅威を何カ月も感じてきたが、現実に直面し対応するのは容易ではない。
さらなる展開があるだろう。中国は既に一連の米国製品に対する報復関税を発動し、トランプ氏は欧州連合(EU)に対しても関税を課すとしている。
米国の大手レストランチェーンの幹部は、関税を巡るトランプ氏の脅しの意味を読み解こうとする取り組みは「混乱している」と述べた。
関税がいつ課されるのか、またそれがどのくらいの期間有効になるのか誰も分からないからだ。新たなサプライチェーンの構築には多額の費用がかかるため、関税が恒久的になると予想される場合にのみ、それを追求する価値があるという。
コンサルタント会社アリックスパートナーズのグローバル自動車市場責任者マーク・ウェイクフィールド氏は「非常に不確実で不安定な状況になるだろう。このような不確実性と行きつ戻りつが続く1年になる可能性が高い」と語った。
関税を巡る動きが激しいため、その影響を業績見通しに盛り込まない企業も多い。
一方、メキシコから3億ドル、中国から2億ドルの製品を輸入するプール用ポンプメーカーのペンテアは通期のガイダンスの中で、中国のサプライチェーンからのコスト10%増に対処するため値上げを計画していると明らかにした。メキシコへの関税が発動された場合はさらに値上げするという。
関税に何カ月も備えてきた自動車業界も、関税コストを顧客に転嫁することを検討している。「サプライヤーとして、そのようなコストを負担しなければならない理由はまったくない」とスウェーデンの自動車安全部品サプライヤーのオートリブのミカエル・ブラット最高経営責任者(CEO)は述べ、「最終的には、米国で販売される車両のコストが上昇することになるだろう」と予想した。
原題:Price Hike Gets Reversed in Six Hours on Trump Tariff Flip-Flop(抜粋)