ホットな銅取引が暗転する恐れ、トランプ関税の発動前倒しなら
トランプ米大統領が銅への輸入関税を発動する前に米国に銅を出荷しようと躍起になってきたトレーダーが、今度は到着のタイミングを巡る時間との競争に直面している。
トランプ氏が初めて銅輸入に対する関税賦課に言及した1月、世界の銅市場は一変した。広く想定されてきた数カ月先ではなく数週間以内に関税が発動される可能性があるとのブルームバーグの報道を受け、今では新たな不安が広がっている。
26日のニューヨーク商業取引所(NYMEX)COMEX部門の銅先物は急伸し、最高値を更新。ロンドン金属取引所(LME)の銅相場に対するニューヨーク銅先物のプレミアムは記録的水準に達した。
両市場の価格差は1月以来拡大し続けており、関税が課される前に海外でより安く購入して米国に輸送すれば、理論上ではトレーダーは多額の利益を得ることができる。
しかし、銅の貨物が関税発動後に米国に到着した場合、トレーダーは大きな損失を被りかねない。関税の導入時期が早まれば、中南米やアフリカ、アジアなどから銅を出荷する十分な時間があると想定していた市場に混乱をもたらすことになる。
米ヘッジファンド、クアンティックス・コモディティーズの投資家ソリューション責任者マット・シュワブ氏はインタビューで、「時間との闘いだ。ただ、既に輸送中の金属に猶予期間が設けられるかどうかという問題もある」と語った。
LMEの銅相場は1トン=1万ドル前後で推移し、ニューヨーク銅先物のプレミアムはトン当たり約1500ドルに拡大している。取引に詳しい複数の関係者によれば、トレーダーは米国に出荷する銅を確保しようと、通常は同100ドル前後で推移しているLME相場への価格上乗せ分として、最大500ドルを提示している。
船舶がアジアやアフリカから米国に到着するまで数カ月かかることを考えると、アービトラージ(裁定)取引にとって関税発動のタイミングが常に大きなリスクであるのは確かだ。
しかし、トランプ氏が国家安全保障上の理由から銅に関税を賦課する計画を支えようと、正式調査を商務省に指示したことで、先月には銅の出荷が加速した。こうした調査には通常数カ月を要するため、トレーダーは関税発動前に数十億ドル相当の銅が到着すると見込んでいた。
トレーダーやアナリストはこれまで、大量の銅が米国に輸送されることで、世界の銅市場は深刻な供給不足に陥ると予測。エネルギー商社のマーキュリアは、LMEの銅相場が最高値を更新するとの見通しを示していた。だが、米国への銅の流入が減少すれば、供給主導の相場上昇の可能性は後退することになる。
ストーンXグループで金属・バルク材のヘッジファンド営業責任者を務めるマイケル・クオコ氏は、「関税導入時期が数カ月ではなく数週間後なら、LME銅相場の上昇は一巡したとの見方が強まるだろう」と述べた。
原題:Hot Copper Trade Risks Painful End If US Tariffs Arrive Early(抜粋)