【米国市況】株が大幅安、関税注視で変動大きく-ドル148円近辺
6日の米国株相場は大幅安。関税を巡るニュースが相次ぐ中で、相場はこの日も急速かつ急激な変動に見舞われた。
株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 5738.52 -104.11 -1.78% ダウ工業株30種平均 42579.08 -427.51 -0.99% ナスダック総合指数 18069.26 -483.47 -2.61%S&P500種株価指数は1.8%、ナスダック100指数は2.8%それぞれ下げた。トランプ米大統領はこの日、メキシコとカナダに対して発動した関税を巡り、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)に準拠した製品について適用延期を決定。だが市場のセンチメントは極めて脆弱(ぜいじゃく)で、この決定が報じられた後も相場は回復しなかった。
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FHNファイナンシャルのクリス・ロウ氏は「政策が導入され、それに異議が唱えられ、修正されて再導入されるといった状況が続く中、今後起こることとして確実視できるのはボラティリティーのみのように思われる」と述べた。
トランプ氏はこの日、諸外国が米国を「食い物にしている」とし、関税により米国の立場はより強固になると指摘。株式相場の大幅下落についてどう思うかとの質問には、「グローバリストらは、米国がいかに豊かになっていくかを目の当たりにし、それが気に入らないのだ」と語った。
この日はテクノロジー銘柄の下げが全体の重しとなった。大型株ではエヌビディアの下げがきつい。半導体メーカーのマーベル・テクノロジーは急落。5日示した売上高見通しが市場予想レンジの上限を下回り、人工知能(AI)ブームの追い風を期待していた投資家の失望を誘った。
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朝方発表された先週の米新規失業保険申請件数は減少し、年初の落ち着いた水準に戻った。このところ労働市場の状況悪化を示すデータが見られていたが、今回の失業保険申請件数を受けて一定の安心感が広がりそうだ。
7日には2月の米雇用統計が発表される。エコノミスト調査によれば、2月の非農業部門雇用者数は16万人増と、前月(14万3000人増)から増加ペースがやや加速すると見込まれている。ただそれでも、2024年終盤よりは低い伸びだ。失業率は4%で横ばいと予想されている。今回の統計算出に利用されたデータは、連邦政府機関で人員削減が実施されるよりも前に集計されたものが多い。
22Vリサーチが実施した調査では、投資家の84%が2月の雇用統計を通常より注視していると回答。また同雇用統計について市場の反応が「リスクオフ」になるとの回答は約53%、「リスクオン」は28%、「まちまち/反応薄」が19%だった。
22Vのデニス・デブシェール氏は「1月の雇用統計では平均時給に投資家の関心がより集まっていたが、2月の統計では再び雇用者数が注目されている」と述べた。
モルガン・スタンレー傘下Eトレード・ファイナンシャルのクリス・ラーキン氏は「現在と異なる環境下であれば、きょうの落ち着いた失業保険申請件数は、きのうの弱いADP統計で生じた懸念を一部相殺できたかもしれない」としつつ、「だが今は、貿易政策が市場の動きを支配している。関税を巡る不透明感が晴れるまで、トレーダーや投資家には波乱含みの展開が続く可能性がある」と語った。
フェデレーテッド・ハーミーズのスティーブ・チアバロン氏は、現時点では「市場はあまり寛容な姿勢を見せていない」とみる。「結局のところ、今は大きな不確実性に加え、経済に若干弱い部分が見られるといった状況に過ぎないと、われわれは考えている」とした上で、「それを踏まえると、今年後半は状況がずっと良くなるだろう」と述べた。
米国債
10年債利回りはほぼ変わらず。一時は4.34%に上昇する場面もあった。一方で短期債はアウトパフォーム。米金融当局が利下げに動くとの見方が強まった。米国債市場では、米貿易政策を巡る不透明感が引き続き値動きの焦点となっているほか、欧州の中核国債の売りが継続している状況も意識されている。
国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.58% 0.7 0.15% 米10年債利回り 4.28% -0.2 -0.05% 米2年債利回り 3.96% -4.6 -1.14% 米東部時間 16時54分為替
外国為替市場ではブルームバーグ・ドル・スポット指数が4日続落。昨年9月以来の長期連続安となった。トランプ大統領はカナダとメキシコに対する関税について、USMCA準拠品に対する適用を延期すると表明した。ユーロは上げを縮小。欧州中央銀行(ECB)は利下げを実施した一方、緩和局面が終わりに近づいていることを示唆した。
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為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1270.06 -1.64 -0.13% ドル/円 ¥147.98 -¥0.90 -0.60% ユーロ/ドル $1.0785 -$0.0004 -0.04% 米東部時間 16時54分円は対ドルで上昇し、昨年10月以来の高値となった。朝方には一時1.1%高の147円32銭を付けた。ニューヨーク時間午後は1ドル=147円台後半から148円ちょうど付近で推移した。
原油
ニューヨーク原油先物相場は小反発。トランプ米大統領がメキシコとカナダからの輸入品に対する関税の適用を延期する中、もみ合う場面が目立った。
トランプ大統領の関税政策は貿易戦争が経済成長とエネルギー需要を圧迫する場合、一部のアナリストに原油価格の下値について再考を促すきっかけとなっている。 しかし、関税賦課の見通しは、ある程度支援材料にもなると解釈されている。カナダとメキシコからの供給の代替として、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)の需要が高まる可能性があるためだ。
トランプ氏は米国の対カナダ・メキシコ関税について、USMCAに準拠した製品はエネルギー関連を含め、4月2日まで延期する大統領令に署名した。
ホワイトハウスは、カナダからの輸入品の62%は依然として関税の対象になると推定している。その大半はエネルギー製品で、10%の税率が課せられ、メキシコからの輸入品の半分も対象となるという。
ベッセント米財務長官の発言も相場を支えた。同長官はウクライナでの停戦につながるのであれば、米国はロシア産エネルギーへの追加制裁も辞さないと述べた。イランの石油部門を「封鎖する」とも話した。
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ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物4月限は前日比5セント(0.1%)高の1バレル=66.36ドル。ロンドンICEの北海ブレント5月限は16セント上げて69.46ドル。
金
金スポット相場は小反落。関税に関する最新動向とその米経済および金融政策への影響が意識される中、売りがわずかに優勢になった。
貿易摩擦による成長鈍化により、連邦公開市場委員会(FOMC)が2025年に利下げを複数回実施するとの観測が強まっている。金利を生まない金にとって、借り入れコストの低下と利回り低下はどちらも買い材料となる傾向がある。
トランプ大統領の関税政策は一部の国からの報復を引き起こし、株式相場に大きな変動をもたらして投資家を不安にさせている。金は2023年末から約40%上昇しており、今年に入ってからは安全資産への需要の高まりから、さらに買いを集めている。
金スポット相場はニューヨーク時間午後2時49分現在、前日比3.43ドル(0.1%)安の1オンス=2915.96ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物4月限は60セント(0.1%未満)高の2926.60ドル。
原題:Stocks Sink as Tariff Back-and-Forth Roils Trading: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries Twist Steepen, Front-End Bid on Tariff Uncertainty
Dollar Gauge Set for Worst Run Since September: Inside G-10
Oil Crawls Back on Tariff Delays, Fresh Sanction Prospects
Gold Drops as Investors Assess Tariff Impact on US Economy