出雲駅伝3位の創価大学 最上級生・石丸惇那が雪辱の力走「今回は顔を向けられます」

井上翔太

2025/10/15

(最終更新:

アンカーの野沢悠真(左)を黒木陽向(右)ら仲間が出迎える(撮影・藤井みさ)

第37回 出雲全日本大学選抜駅伝競走

10月13日@島根・出雲大社~出雲ドームの6区間45.1km

優勝  國學院大學  2時間09分12秒2位 早稲田大学  2時間09分50秒3位 創価大学   2時間10分05秒4位 アイビーリーグ選抜 2時間10分12秒5位 駒澤大学   2時間10分27秒6位 城西大学   2時間10分41秒7位 青山学院大学 2時間10分52秒

8位 帝京大学   2時間11分32秒

10月13日に開催された第37回出雲駅伝で、創価大学が目標としていた3位の表彰台をつかんだ。榎木和貴監督が注目選手に挙げていた石丸惇那(4年、出水中央)が、4区で区間3位の好走。昨年度の駅伝シーズンで「ゲームチェンジャー」の役割を果たしてきた吉田響(現・サンベルクス)は抜けたが、その分、選手層の厚みが増していることを印象づけた。

当日変更を余儀なくされた昨年から一転、充実のオーダー

榎木監督が「4月のスタート以降『出雲駅伝はこの6人を走らせたい』という6人を選ぶことができました」というオーダー。昨年の出雲では、3区を予定していたスティーブン・ムチーニ(3年、ミクユニ)を当日変更せざるを得ない状況だっただけに、前日会見でのこの言葉には、充実感がにじんでいた。

1区を任されたのは織橋巧(3年、中京)。1年目の全日本大学駅伝で3大駅伝デビューを果たし、区間4位の実績を持つ。蒸し暑いコンディションで、5km過ぎに國學院大學の青木瑠郁(4年、健大高崎)が飛び出したり、中央大学の岡田開成(2年、洛南)が残り1kmでスパートをかけたりする状況で、一時は離されたが、最後に順位を上げた。トップと13秒差の4位で、2区の小池莉希(3年、佐久長聖)がスタートした。

スタート前に集中力を高める織橋巧(撮影・藤井みさ)

小池は、総勢86選手がエントリーした今年7月の日本選手権男子5000mで予選を勝ち抜き、18選手による決勝に進んだ。学生の主要大会ではトラックレースで前半から飛び出すなど、見せ場を作るランナーでもある。

出雲では、後方から10秒差を縮めてきた早稲田大学の山口智規(4年、学法石川)にピタリとつかれた。「(山口を)休ませてしまったというところで、反省はあるんですけど、自分自身でレースを組み立てるところはできていた」と榎木監督。ただ、ラスト500mからの絞り出しという点では、課題が残った。「本人もそこを反省点として挙げていました。今後の駅伝で改善していきたいと思っています」。中央大学をかわして順位を一つ上げ、前回は出雲路を走れなかったムチーニに襷(たすき)が渡った。

2区の小池莉希(右)は4位で中継所をスタート(撮影・高野みや)

4区の石丸惇那「今後は主要区間を」

榎木監督には、チームが3位以内をつかみ取るためのプランがあった。「4区の石丸までは攻めの走りをする。残りの5、6区に関しては、暑くなることと向かい風が吹くことが毎年予測されるので、しぶとい走りができる選手を」。ムチーニには、城西大学のヴィクター・キムタイ(4年、マウ)や東京国際大学のリチャード・エティーリ(3年、シル)といった他大学の留学生と競り合った末に襷をつなぐことを期待していた。

ただ、残り約1kmでキムタイに引き離され、先頭に立った城西大学とは29秒差の6位で襷リレー。榎木監督は「あと10秒、15秒は稼いでもらいたかった。まだちょっと練習が足りていないという感じがありました」。昨年はロードでの練習を多く採り入れてきたが、今年は10月5日の日体大長距離競技会で5000mに出場するなど、直前までトラックレースに出ていたことが「私の反省すべきところかなと思います」と話した。

榎木和貴監督は「4区まで攻めの走り、残りはしぶとい走り」というプランを描いていた(撮影・藤井みさ)

4区の石丸は、状態が良かったからなのだろうか。前日から緊張していたと明かす。「寝られなかったんですけど、しっかり力通りに走れば、絶対にいけると思っていました」。6位で中継所を飛び出すと、思った通りに体は動いた。「最初から(1km)2分45秒で軽くいけたので、区間新を狙える」。國學院大の辻原輝(3年、藤沢翔陵)、早稲田大の強力ルーキー・佐々木哲(1年、佐久長聖)、地元の大声援を受ける駒澤大学の伊藤蒼唯(4年、出雲工業)、中央大の主将・吉居駿恭(4年、仙台育英)と〝つなぎ区間〟ながらも、主力が集まった中、石丸は堂々の区間3位。「今後は主要区間を走れるような勢いがつけられたと思うので、自信になります」

過去の駅伝で石丸は、悔しい思いを何度も味わってきた。特に昨シーズンは1区を任された出雲で10位と流れを作れず、全日本は3区10位、箱根駅伝は出走することができなかった。「失敗したレースの後、みんなに会うのがつらくて……。顔を見せられないような状態でした。今回はしっかり顔を向けられます」

榎木監督からは「しっかり4年生らしい走りをしてくれればいいから」とシンプルな言葉をもらい、最上級生ならではのプレッシャーを感じることはなかった。昨年のふがいなさから一転、順位を一つ上げる力走を経て、「4年生の意地として、全日本と箱根でも3位以内の達成に貢献できる走りを追求したい」と語った。

「あと2回しっかり走ったら(監督への)恩返しになると思っています」と語った石丸惇那(撮影・高野みや)

すべての区間で5位以内「あと5秒、10秒」

5区は昨年、ルーキーながらムチーニの代わりに3区を務めた山口翔輝(2年、大牟田)が順位を4位に上げ、最終6区は野沢悠真(4年、利府)が米国アイビーリーグ選抜との3位争いを制した。2人は5月の関東インカレ男子2部ハーフマラソンで、2位(野沢)と3位(山口)をつかんだ主力だ。榎木監督からの信頼も厚く、「この2人であれば、堅実に2分50秒で押していける。山口は中間点を過ぎてから、みんなペースが落ちるところで押し切る走りをしてくれたので合格点です。悠真は『何が何でも3位は死守します』と言ってくれていたので、彼の走りとレース判断に委ねました」。

トータルで見ると、すべての区間で5位以内に入っており、総合力の高さを感じさせるレース運びとなった。ただ、ここ数年で急速に力をつけてきたチームが望む景色は、まだ先にある。

「優勝を狙うとなると、区間賞や区間2、3番で食い止めるところが必要になってきます。それぞれの選手があと5秒、10秒足りていない結果が、先頭から40秒ほどの遅れになっていると思います。来年以降はいよいよ『優勝を狙います』と言えるチーム作りをしていきたい」(榎木監督)

現状の最高メンバーでつかみ取った3位。チームはこの自信を手に、さらなる底上げを図って、伊勢路と箱根に挑んでいく。

堂々と「優勝を狙う」と言えるように、創価大学のチャレンジは続く(撮影・藤井みさ)

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