TDK、6月までに新型電池を出荷開始-AIスマホなど需要取り込む
- さらに次の電池開発も同時並行、早ければ来期にも投入と斎藤社長
- 米関税は無視できず、価格上昇でスマホ需要冷えれば電池にも逆風
TDKはスマートフォン向け電池の新製品について、当初「夏から秋」とみていた出荷時期を見直し、6月末までに前倒しする方針を明らかにした。斎藤昇社長が14日、インタビューに答えた。
この第3世代電池は、負極材料にシリコンを採用することでエネルギー密度を高めており、従来製品に比べてエネルギー効率が約15%向上する。斎藤氏は、AI機能を搭載したスマホの普及もあって「高容量電池の引き合いが強い」ことや、量産体制が整ったことが前倒しの背景だと説明した。
同社はスマホ向け小型電池で世界シェア首位を確保している。2005年に香港の電池メーカー、アンプレックステクノロジー(ATL)を買収し、スマホ市場とともに事業を拡大。ブルームバーグのデータによると、米アップルや韓国サムスン電子、中国の小米(シャオミ)に製品を供給する。
こうした背景のもと、軽量・薄型化やAI搭載が進む次世代スマホとの相性がよい新製品の投入は、同社の収益力をさらに強化する可能性が高い。サムスンは12日、厚さ5.8ミリメートルの最新スマホの発売を発表した。アップルも今年は薄型の新型iPhone、早ければ26年にも折りたたみ式を発売する予定だと報じられた。
顧客であるスマホメーカーが第3世代電池の搭載を進める可能性も出てくるため、斎藤氏は「可能な限り早く顧客のニーズに応えることが義務だ」と語り、自信をにじませた。
一方、同社は第3世代の量産に並行して、次の第4世代電池の開発も進めている。より高いエネルギー効率が期待されており、早ければ来期中にも投入したいと斎藤氏は述べた。
小型電池を含むエナジー応用製品は利益の約9割を稼ぐ中核事業だ。25年3月期に同事業の営業利益は前の期から約20%増と順調に推移した。強い需要と技術の優位性によりいまは追い風が吹くが、懸念材料として米トランプ関税は無視できない。今期の営業利益予想を1800億-2250億円とレンジで示しており、スマホ価格が上昇するなどして需要が冷え込めばリスクになりかねない。
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