米首都銃撃で負傷した州兵1人が死亡、容疑者は過去にアフガニスタンで米CIAと協力

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画像説明, サラ・ベックストロム氏

アメリカのドナルド・トランプ米大統領は27日、首都ワシントンのホワイトハウス近くで26日に発生した銃撃で負傷した州兵2人のうち、1人が死亡したと発表した。

死亡したのは、サラ・ベックストロム氏(20)。もう1人のアンドリュー・ウルフ氏(24)については、「生きようと闘っている」と、トランプ氏は説明した。

2人は26日午後2時15分ごろ、繁華街にあるファラガット・スクエアの地下鉄駅近くで、至近距離から銃撃された。警察は、アフガニスタン出身のラフマヌラ・ラカンワル容疑者(29)を銃撃事件の容疑者として拘束した。

ラカンワル容疑者については、過去にアフガニスタンで米中央情報局(CIA)と協力する部隊に所属し、その後、アメリカ政府が提供した移民プログラムでアメリカに入国したとされる。

トランプ大統領は、アメリカの現役軍人らとの感謝祭の電話会談中に、ベックストロム氏の死を明らかにした。

「ウェストヴァージニア州のサラ・ベックストロム氏、ここで話していた州兵の一人で、非常に尊敬されていた若くて素晴らしい人物だが(中略)彼女はつい先ほど亡くなった。私たちの間にはもういない」と、トランプ氏は述べた。

ホワイトハウスの関係者は、トランプ氏がその後、ベックストロム氏の両親と話したと、BBCがアメリカで提携するCBSニュースに明らかにした。

ベックストロム氏は2023年6月26日に入隊し、ウェストヴァージニア州陸軍州兵の第111工兵旅団第863憲兵中隊に配属されていた。

パム・ボンディ司法長官は、銃撃後に米FOXニュースに対し、ベックストロム氏はアメリカの感謝祭の休暇中に首都で勤務することを志願したのだと話した。

ウェストヴァージニア州選出のジム・ジャスティス上院議員(共和党)は、ベックストロム氏の死を知り、「まったく打ちのめされている」と述べた。

「このとても厳しい感謝祭の日に、私たちの祈りは彼女の家族、友人、そして州兵仲間と共にある」と、ジャスティス議員は声明で述べた。

「また、回復への道を歩み続けるアンドリュー・ウルフ氏のためにも、祈りを捧げている」と議員は付け加えた。

2人は当時、昼の休憩中のオフィスワーカーでにぎわう17番街とIストリートの交差点付近を巡回していた。

トランプ氏は「制御不能」な犯罪に対処するためだとして、8月にワシントンに州兵を派遣。現在、約2200人の州兵が展開されている。

ウェストヴァージニア州の州兵組織はBBCニュースに対し、ベックストロム氏とウルフ氏が8月に派遣された部隊の一員だったと認めた。

州兵は、軍務に動員される可能性がある予備役部隊で、法執行や逮捕を行う権限は持たない。

銃撃現場はホワイトハウスから数区画しか離れていない。銃撃後、現場には多くの当局者が迅速に駆けつけ、被害者2人の救護と容疑者の拘束に当たった。

米CBSは捜査関係者の話として、容疑者は拘束される際に4回撃たれたと伝えた。

ベックストロム氏の死亡が伝えられる前、27日午前に開かれた記者会見で、ワシントンのジャニーン・ピロ連邦検事は、武器を伴う殺害目的の暴行3件と、暴力犯罪中の銃器所持で起訴されると述べた。

「私たちは(被害者たちが)生き延びることを祈っており、最も重い罪が第1級殺人にならないことを願っている」、「しかし、もしそうでない場合は間違いなく、罪状は確実に第1級殺人になる」とピロ検事は述べていた。

ボンディ司法長官は同日、FOXニュースに対し、容疑者に死刑を求刑する方針を示し、「この国にいるべきではなかった怪物だ」と非難した。

報道によると、ラカンワル容疑者は2021年、アメリカがアフガニスタン撤退後に同国出身者に提供した特別な移民保護プログラム「同盟者受け入れ作戦」でアメリカに来た。

当時のバイデン政権が超党派の支持を得て創設したこのプログラムは、約7万7000人のアフガニスタン人がアメリカに入国できるようにするもので、アメリカの撤退後およそ1年間実施されていた。

BBCアフガン語サービスが取材した元米軍司令官は、2021年8月にイスラム主義組織タリバンがアフガニスタンで権力を奪還する直前、大勢が同国から脱出しようとする中、ラカンワル容疑者はカブール空港で米軍の警備を支援していたと明らかにした。この元司令官は当時、同容疑者と共に勤務していたという。

5人の子の父親でもあるラカンワル容疑者は、タリバン復権の9年前に「カンダハル攻撃部隊03部隊」に採用された。この部隊は現地で「さそり部隊」として知られ、当初は米中央情報局(CIA)の指揮下で、最終的にはアフガニスタン政府の情報機関「国家保安局(NDS)」のために活動していた。

ラカンワル容疑者はGPS追跡の専門家で、「スポーツ好きで陽気な人物」だったと、この元司令官はBBCに語った。

部隊は、タリバンが首都カブールに入る5日前に南部カンダハルからカブールに移動。6日間にわたり空港の警備を続けた後、飛行機でアメリカに移送されたという。

ラカンワル容疑者は2024年に亡命を申請。米紙ニューヨーク・タイムズは複数の消息筋の話として、トランプ政権下の今年4月に亡命が認められたと伝えた。

ただし、亡命認定に関連するグリーンカード(永住権)の申請は保留中だと、国土安全保障省の関係者がCBSに明らかにした。

米連邦捜査局(FBI)のカシュ・パテル長官は27日午前に開かれた記者会見で、容疑者がアメリカに移住する前に「アフガニスタンでパートナー部隊と関係を持っていた」と述べ、ラカンワル容疑者と米軍との関係を認めた。

一方、CIAのジョン・ラトクリフ長官はCBSへの声明で、「バイデン政権は、混乱した撤退直後に解体されたカンダハルの同盟部隊の一員としての、CIAを含む米政府との過去の関係を理由に、2021年9月にこの容疑者をアメリカに受け入れることを正当化した」と述べた。

こうしたなか、アメリカ市民権・移民局(USCIS)のジョセフ・エドロウ局長は27日、トランプ氏が「すべての懸念国から来たすべての外国人のすべてのグリーンカードを、全面的かつ厳格に再審査する」よう指示したと述べた。

どの国がこのリストに含まれるのかBBCが尋ねたところ、同局はホワイトハウスが6月に発表した声明に言及。これにはアフガニスタン、キューバ、ハイチ、イラン、ソマリア、ヴェネズエラが含まれている。

取材協力:ハフィズラ・マルーフ、アブドゥラフ・ニザミ(BBCアフガン語サービス)

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