高市首相のX投稿などで台湾の来年のAPEC参加に暗雲
APECは1989年(天安門の年)に日本とオーストラリアの発案で創立された。中国と米国が身勝手に動かないように、ほかの国が発言しやすくすることが目的だった。
中国、香港、台湾は91年に加入しているが、中国が台湾を容認したのは天安門以降の外交的孤立を緩和するためだった。また、台湾を独立国同様として扱っているわけでないことを明確化するために香港も入れた。
総会は、日本ではこれまで大阪と横浜で開き、中国では2001年に上海、2014年に北京で開いている。台湾や香港での開催は想定されていない。上海では台湾の参加はなかったが、北京では馬英九政権時なので参加できた。
台湾はこれまで「中華台北」で参加していたが、来年の深圳での開催時は「中国・台北」とし、一つの中国原則を明確化しろと中国外務省が言い出した。あり得る話だったが、一連の高市発言や台湾の代表との会談を堂々とSNSにアップしたことも影響しているだろう。
11月1日、台湾を代表してAPEC首脳会議に参加している林信義氏とお会いしました。日台の実務協力が深まることを期待します。 pic.twitter.com/AJDUkgMEnu
— 高市早苗 (@takaichi_sanae) November 1, 2025
参照:習近平の面子を丸潰しした高市首相のSNS投稿は危険すぎる
台湾にとってAPECは国際会議に参加できる数少ない機会のひとつ。
あまり中国を刺激しないようにして排除されないようにしていたところなのに、高市首相が台湾代表との会談をSNS投稿したので、難しい状況になってしまった。
11月1日に台湾を代表してAPEC首脳会議に参加している林信義氏と会談した高市首相 同首相Xより
もし台湾が排除されたら日本もボイコットするのか? そんなことをしたら、今後、日本で開催される国際会議に習近平は出てこなくなるし、日中首脳会談は何年間もできなくなるなど、日本の方がダメージが大きいので考えにくい。
高市さんも余計なことをして台湾を困らせる状況に追い込んでしまった感がある。台湾は国内世論向けの配慮もあって威勢のいいことも言うが、立場は追い込まれてきている。なにしろ1990年頃は中国本土の経済規模は台湾の2.5倍ほどだったが、いまは25倍。「対抗」などできる状況でないから、無用な波風は立てたくないのが本音だ。
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