【日本市況】長期金利一転上昇、財務官発言で日銀利上げ警戒-円下落
27日の日本市場では長期金利が4営業日ぶりに上昇(債券相場は下落)に転じた。三村淳財務官による日本銀行の金融政策に対する発言を契機に早期利上げ観測が再び強まった。円相場は対ドルで小幅安。
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三村財務官の26日の発言を受けて債券は朝方から売りが優勢になり、新発10年債利回りは一時4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い1.405%に上昇した。円相場はトランプ米大統領の関税政策によるインフレ懸念を背景に小幅下落。株式は米エヌビディアの決算を受けて半導体関連株が買われて上げた。
日銀の植田和男総裁の国債買い入れ増額に関する発言で21日以降低下していた長期金利が、三村財務官の発言で反転、上昇した。市場は日銀の早期利上げ観測を改めて意識し始めている。
SBI証券の道家映二チーフ債券ストラテジストは、植田総裁の発言をきっかけに剝落(はくらく)していた早期利上げを織り込み直す展開だと指摘。三村財務官の発言については「金融政策そのものに言及する踏み込んだもので、日銀の利上げが円安の修正につながれば良いと思っているのではないか」との見方を示した。
国内債券・為替・株式相場の動き- 長期国債先物3月物の終値は前日比20銭安の139円52銭
- 新発10年債利回りは2.5bp高い1.39%
- 円相場は対ドルでニューヨーク終値比0.1%安の149円24銭-午後4時5分
- 東証株価指数(TOPIX)の終値は前日比0.7%高の2736.25
- 日経平均株価は0.3%高の3万8256円17銭
債券
債券相場は下落。日銀の利上げ警戒で売りが優勢だった。財務省が実施した2年国債入札は市場予想に比べて弱めの結果になり、一時下げ幅を拡大した。
大和証券の小野木啓子シニアJGBストラテジストは、米国金利が低下する中でも「三村財務官の発言が影響した可能性はある」と指摘。2年債入札は応札倍率も低く弱めの結果で、「積極的に買う人がいなかったのではないか」との見方を示した。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤原和也債券ストラテジストは、日銀利上げ継続に対する市場の警戒感は変わっていないとした上で、財務官の発言は「政府が日銀の利上げをけん制せず、利上げしやすい環境にあるとの思惑にもつながりやすい」との見方を示した。
2年債の入札結果によると、最低落札価格は99円93銭5厘と市場予想(99円94銭)を下回った。大きいと低調を示すテール(落札価格の最低と平均の差)は1銭3厘と前回6厘から拡大。投資家需要の強弱を反映する応札倍率は3.16倍と前回の4.06倍から低下し2023年11月以来の低水準だった。
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債 0.810% 1.040% 1.390% 2.050% 2.340% 2.660% 前日比 +1.5bp +2.5bp +2.5bp +2.5bp +2.0bp +4.0bp関連記事:2年利付国債の過去の入札結果(表)
為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=149円台前半に下落。トランプ米大統領による関税政策が米国のインフレを促すとの根強い見方や売られ過ぎの反動でドルがやや買い戻された。
りそなホールディングス市場企画部の井口慶一シニアストラテジストは、前日の米金利低下でドルが下落したためいったん買い戻しが入っていると指摘。「月末のフローや、日経平均株価が落ち着きを見せたので、ドルの下値をトライする動きはなりにくかった」と述べた。米利下げ観測も再燃する中、ドル・円は「今の水準でもみ合うのではないか」との見方を示した。
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三菱UFJ信託銀行資金為替部マーケット営業課の酒井基成課長は、米国でトランプ政権の関税政策を巡る不確実性や足元の弱めの景気センチメント関連指標が意識されて長期金利の低下が進んだが、今後発表される経済指標で「労働市場の堅調さが示されれば米金利高・ドル高に戻る可能性がある」と述べた。
三村財務官の発言については、日銀が利上げを続ける姿勢を支持したとの見方から円の支えとなっている。SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は、植田総裁が21日の国会答弁で「ハト派に傾いたことを調整したようだ」と述べた。
株式
株式は上昇。米エヌビディアの2-4月(第1四半期)売上高の見通しが市場予想平均を上回り、半導体関連株に買いが入った。
ディスコ、東京エレクトロンやフジクラといった半導体、人工知能(AI)関連株が取引量を伴って上昇。経営陣が参加する買収(MBO)案が頓挫したセブン&アイ・ホールディングス株は急落。一方、MBOへの参画検討を終了した伊藤忠商事は買われた。
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SMBC日興証券投資情報部の太田千尋部長はエヌビディアの業績について、それほど良くなかったが悪くもなく、その意味では安心感があるとした。その上で最近の相場低迷で投資家は株価が妥当であることに気づき徐々に買い始めているようだと指摘した。
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