フジHDの不動産分離働きかけへ、他株主と協力-ダルトン創業者

ダルトン・インベストメンツは、フジ・メディア・ホールディングスの不動産事業スピンオフ(分離・独立)実現に向け、他の株主と協力して取締役会に働きかける方針だ。ダルトンの共同創業者、ジェイミー・ローゼンワルド氏はフジHDの定時株主総会に取締役候補を提案しており、1人でも選ばれれば、同社の改革に道筋を付けられるとの考えも示した。

  ローゼンワルド氏は28日のインタビューで、同事業のスピンオフで企業価値が2倍になる可能性もあると意義を強調。スピンオフを決めるのは取締役会だが、個人的見解として「1年以内に実現できることを期待している」と述べた。ソニーグループの金融事業分離を例に挙げ、「取締役会が本気でスピンオフを行うつもりなら、ソニーが雇った弁護士や会計士を起用し、手法をそのまま模倣するのが最も効果的だ」とした。

  村上世彰氏の長女で、フジHDの筆頭株主である野村絢氏とも会談し、不動産事業のスピンオフを要望されたという。ブルームバーグのデータによると、野村氏はフジHD株の8.96%を保有する。ダルトンは第2位株主の東宝(7.93%)や、ビジネス上の関係が深い電通グループ(1.99%)とも今後会談する予定だという。ダルトンは5.83%を持つ第3位の株主だ。

  ダルトンなど物言う株主(アクティビスト)の提案で、フジHDの資本効率改善に向けた動きが進むとみて、市場は両社のやりとりを注視している。ダルトンが他の株主に呼びかけ包囲網をしく一方、フジHDは、不動産事業は成長が見込まれる分野だとして今後も集中的に投資すると強調。今後も両者の主張は平行線をたどりそうだ。

  またダルトンは、株主総会に向けてSBIホールディングスの北尾吉孝会長兼社長ら12人の取締役候補を提案した。一方、フジHDはダルトンの提案に反対を表明。ダルトンは事前協議のない決定は遺憾としており、委任状争奪戦(プロキシファイト)に発展する観測が高まっていた。

  ローゼンワルド氏は、今回はプロキシファイトではなく「株主民主主義のためのキャンペーン」だと主張。フジHDとダルトンが提案する取締役候補23人から自由に選択できる仕組みを提供したいと希望を述べた。その意味では、ダルトンのリストから1人でも選ばれれば、株主側から取締役会にプレッシャーをかけることができ、不動産のスピンオフも「真剣に考えざるを得なくなる」と述べた。

  一方、フジHDは28日に公表した資料で、提案株主とはこれまで計64回、メール・電話や面談を通じて対話してきたと説明。株主総会に向けた取締役候補にかかる決定は取締役会の責任でなされるものであり、厳正なプロセスに沿って行われたと主張した。

  ローゼンワルド氏はダルトンの共同創業者で最高投資責任者を務める。日本市場ではフジHDのほか、江崎グリコノーリツに投資する。フジテレビ系列で過去放送していた料理番組「アイアンシェフ(料理の鉄人)」がお気に入りだという。

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