3月下旬にも出回る備蓄米、店頭での見分け方は 「ブレンド米」の表示と価格にヒント

工場に搬入され、精米される備蓄米=18日、埼玉県内

高止まりするコメ価格の抑制に向けた政府備蓄米の初回放出(約14万2000トン)が18日に始まり、早ければ3月下旬にもスーパーの店頭に並ぶ見通しだ。ただ、放出された備蓄米の9割超を落札した全国農業協同組合連合会(JA全農)が店頭販売する際に「備蓄米」と表示しないよう取引先に要請したことで、消費者が備蓄米を見分けるには予備知識が必要になる。

備蓄米の大半はブレンド米

「消費者の方々も注意を払ってみれば、(備蓄米だと)判断できる材料が多分にあると思う」。江藤拓農林水産相は21日の会見でこう強調し、米袋の表示を注意深くみれば、備蓄米の判別ができると説明した。とはいえ、備蓄米とは明示されていないため、見分けられたとしても、備蓄米の〝可能性が高い〟コメとなる。

江藤氏は「備蓄米を判断できる材料は多分にある」というが、農水省はその具体的な指標などは提示していない。そのヒントを探るべく、コメの卸売業者に聞いたところ、判別の上で大きなポイントとなりそうなのが、複数の品種や年産米を混ぜた〝ブレンド米〟だという。

ある大手卸売業の担当者は、「落札できる備蓄米の銘柄や量が分からなかったので、多くの業者が対応しやすいブレンド米用の米袋を用意していた」と説明する。「一刻も早く流通させてほしいという農水省の意向をくんで、銘柄を選別するよりも早く流通に乗せられるブレンド米として大半は販売される」と話す。

「複数年産」の表記に注目

今回、初回放出された備蓄米は計41品種で、約3分の2が2024年産で残りが23年産となる。

前出の担当者は、放出された備蓄米の品種は41品種と多品種で収穫年が2通りあることから、「ブレンド米の米袋の一括表示欄に『複数原料米』『複数年産米』と表記されていたり、複数の収穫年が記されていたりするものは、備蓄米が使われている可能性が高い」と明かす。

また、価格にもヒントが隠されているという。「その年によってある程度余裕を持って調達できた銘柄を混ぜて、ブレンド米として割安に売る形が多い」と担当者。備蓄米の平均落札価格(60キロ2万1217円)を考慮すると、「単一銘柄のブランド米に比べて備蓄米が使われたブランド米は1キロ当たり50円以上安くなる」と見込む。現在のコメの平均価格が5キロ当たり約4000円であることを踏まえると、3700円程度で販売されるとみる。

初回放出、最多は「はえぬき」

一方で、単一銘柄で販売される備蓄米も想定される。江藤氏は21日の会見で「例えば、『はえぬき」(という品種)の備蓄米があるが、集荷業者や卸が持っている『はえぬき』もある。同じ『はえぬき』でブレンドして出すということであれば、『はえぬき』として表示される」と説明している。

初回に放出された備蓄米の産地品種銘柄で最も多かったのが、江藤氏が言及した山形産「はえぬき」だ。次いで新潟産「こしいぶき」、青森産「まっしぐら」で、それぞれ2万トンを超える量が流通したとみられ、これらの品種の備蓄米が単一銘柄で販売される可能性もあるという。

備蓄米の販売を巡っては、一部の卸売業者が「備蓄米」と表示して販売する方針を示していた。しかし、最大手のJA全農が消費者の混乱回避を目的に「備蓄米」と表示しないよう取引先に要請したことで、大半の業者が非表示販売で足並みをそろえることになった。

JA全農の要請に強制力はない。他方、備蓄米と明示して販売する義務もないため、備蓄米と表示するかしないかは事実上、販売業者の裁量に任されている。(西村利也)

コメ5キロ平均4172円と過去最高

江藤農水相が備蓄米の非表示販売に理解

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