【米国市況】株続落、トランプ氏発言が相場を翻弄-ドル147円台後半

11日の米国株式市場は続落。関税に関するトランプ大統領の発言に再び振り回される展開となった。貿易戦争による経済への影響が懸念され、S&P500種株価指数は昨年9月以来の安値で終えた。

株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 5572.07 -42.49 -0.76% ダウ工業株30種平均 41433.48 -478.23 -1.14% ナスダック総合指数 17436.10 -32.22 -0.18%

  トランプ氏はこの日午前、カナダの鉄鋼・アルミニウムに対する関税を50%に引き上げると発表。貿易戦争激化への懸念で市場には動揺が広がり、S&P500種は一時1.5%安と、調整局面入りの目安とされる直近高値からの下落率が10%に達する場面があった。

  だがその後、加オンタリオ州のフォード首相が米国向け電力価格25%上乗せの一時停止で同意したと明らかにすると、トランプ氏は対カナダ関税の引き上げについては「見直している」と述べた。

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  ウクライナは30日間停戦の米国案を受け入れる用意があると発表。こうした中、S&P500種はプラス圏に浮上する場面もあった。5530の水準を割り込んだところで押し目買いが入ったものの、程なく再び売りが優勢となった。終値は最高値を9.3%下回る水準。

  トランプ氏は、リセッション(景気後退)は全く予想していないとも発言。「相場は上下するものだ。だが、われわれは国家を再建しなければならない」と述べ、関税の影響による景気悪化への懸念から市場が売り込まれている状況についても気にしていないと語った。

   テスラエヌビディアなどのハイテク大手は反発したが、S&P500種構成銘柄の大半は値下がりした。

  モルガン・スタンレーのウェルス・マネジメント・マーケット調査・戦略チーム責任者、ダニエル・スケリー氏は「下落の大部分がすでに終わっているとしても、ボラティリティーはそうではない可能性がある。相場が当面、横ばいで推移することも十分あり得る」と語った。

  50パーク・インベストメンツの創業者、アダム・サーハン氏は「振り子が反対側に振れて、恐怖が支配する状況にある」と指摘。「その多くは『トランプ・トレード』の巻き戻しに関連しているが、この先の成長見通し、およびリセッション(景気後退)に対する懸念も大きい」と述べた。

  カナダの次期首相に就任するマーク・カーニー氏は、トランプ氏が鉄鋼・アルミ関税の引き上げを発表した後、米国が「自由かつ公正な貿易」を確約するまで、米国への関税を維持する方針を示していた。

  シティー・インデックスのマーケットアナリスト、ファワド・ラザクザダ氏は「足元の状況から、こうした貿易政策による米経済、および諸外国との関係の双方への影響について疑問が広がっている」と話す。

  ストラテガス・アセット・マネジメントの投資戦略責任者、ライアン・グラビンスキー氏は「消費者による高額商品の購入や企業の設備投資決定が難しい状況が続いているように、トランプ政権に期待されていた前向きな材料が一部出てくるようになるまで、投資家がしっかりと買いを入れることは困難なままだ」と述べた。

  アドバイザーズ・アセット・マネジメントのスコット・コリヤー最高経営責任者(CEO)は「恐怖と売りはまだヤマ場に達していない」と指摘。「おそらく近づいているが、反発するには売りが収まるのを確認する必要がある」と述べた。

為替

  ニューヨーク外国為替市場では、ブルームバーグ・ドル・スポット指数が下落。カナダ・ドルは、トランプ氏によるカナダ産鉄鋼・アルミ関税を巡る発言に振り回される展開となった。

為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1265.45 -5.43 -0.43% ドル/円 ¥147.77 ¥0.50 0.34% ユーロ/ドル $1.0918 $0.0084 0.78%     米東部時間 16時56分

  ニューヨーク時間午前にトランプ氏がカナダ産鉄鋼・アルミ関税引き上げ方針を表明すると、カナダ・ドルは対米ドルで日中安値に下落。しかし、加オンタリオ州のフォード首相が米国向け電力価格の25%上乗せの一時停止に同意したと明らかにしたことで一転、切り返した。

  ユーロは対ドルで昨年10月11日以来の高値に上昇。ウクライナは、米国が提案した30日間の停戦を受け入れる用意があると表明。これがユーロの追い風となった。

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  アビバ・インベスターズのストラテジスト、バシレイオス・ギオナキス氏は「ユーロが上昇を維持し、さらに上値を伸ばすには、欧州連合(EU)が米国との全面的な貿易戦争を避ける必要がある」と述べた。大規模な関税を回避できれば、ユーロは対ドルで1.15ドルを上抜ける可能性があるという。

  円は対ドルで147円台後半に下落。一時は148円11銭まで売られた。

国債

  米国債相場は下落。午後の取引で米国株に押し目買いが入ったことで下げが加速した。早い時間帯では、求人件数が予想以上に増加したことが相場の重しとなった。

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国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.59% 5.3 1.16% 米10年債利回り 4.28% 6.5 1.54% 米2年債利回り 3.94% 6.0 1.54%     米東部時間 16時56分

  この日実施された3年債入札(発行額580億ドル)は底堅い内容だった。最高落札利回りは入札前取引(WI)水準を0.6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上回ったが、応札倍率は堅調だった。12日には10年債入札(同390億ドル)が実施される。

原油

  ニューヨーク原油相場は小幅高。国際市場の指標で最近の下げが行き過ぎだったことが示唆された。ロシアとウクライナの戦争が停戦に向かう可能性も示されたが、テクニカル指標の方が重視された。

  ウクライナは、米国が提案したロシアとの30日間の停戦を受け入れる用意があると発表。近い将来にロシア産原油に対する制限が解除されるとの見方が広がった。

  トランプ大統領による貿易面での新たな攻撃でリスク資産の急落が長期化する恐れがあるものの、原油相場はこの日底堅く推移した。ここ数週間、経済見通しの悪化が先物相場の重しとなっているのをよそに、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)のプロンプトスプレッド(期近2限月の価格差)はバックワーデーション(逆ざや)と、強気のシグナルを維持している。ストラテガス・セキュリティーズのアナリスト、ジョン・バーン氏はこの状況について、原油の伸び鈍化に対する不安が他の資産ほど深刻ではないことを示唆するとの見方を示した。

  「今回の売り浴びせの局面において、原油は他のリスク資産から近く切り離される可能性がある」と述べた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物4月限は前日比22セント(0.3%)高の1バレル=66.25ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント5月限は0.4%上げて69.56ドル。

  金スポット相場は上昇し、1オンス=2900ドル台を回復した。トランプ米大統領による新たな関税の発表を受け、世界的な貿易戦争により米経済がリセッション(景気後退)に向かうとの懸念が強まった。

  JPモルガン・プライベート・バンクのグローバル商品ストラテジスト、スティーブン・ジューリー氏はインタビューで、「これは金には追い風になる」と指摘。米国のリセッションの可能性を指摘する声が強まれば、金利とドルが下げる環境がもたらされる可能性が高くなるとし、「そうなった場合、今年後半の金価格上昇に向けた非常に建設的なシナリオが描かれることになろう」と述べた。

  ジューリー氏は、金価格が下落した場合は、投資を従来の株式と債券の組み合わせから分散させるという意味で買いの好機になるとみている。

  サマーズ元米財務長官は、米国が今年リセッション(景気後退)に陥る確率は五分五分に近いとの考えを示した。トランプ政権が示すさまざまな政策方針で信頼感が損なわれていることを理由に挙げた。 

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  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時31分現在、前日比27.78ドル(1%)高の1オンス=2916.49ドル。ニューヨーク商品取引所の金先物4月限は21.50ドル(0.7%)上昇の2920.90ドルで引けた。

原題:Wall Street Rocked by Trade Jitters as Stocks Fall: Markets Wrap

S&P 500 Selloff Hits 10% Before Afternoon Dip Buyers Emerge

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