物価上昇と雇用軟化、基本シナリオに=米セントルイス連銀総裁

米セントルイス地区連銀のムサレム総裁は11日、関税措置がインフレに与える影響が一時的または限定的なものに過ぎないとの想定には注意が必要との見方を示した。同時に、金融政策で(関税の)二次的影響を「抑制」することは適切であるものの、基調的なインフレと、直接的・間接的、二次的な影響をリアルタイムで見分けるのは容易ではないとの考えも示した。 (2025年 ロイター/Jason Reed)

[11日 ロイター] - 米セントルイス地区連銀のムサレム総裁は11日、関税措置によりインフレが上昇する一方で労働市場が軟化するという状況について、単なる外部リスクではなく、自身の「基本シナリオ」になりつつあるとの認識を示した。同時に、その影響が経済全体に波及するまでには数カ月から数年かかる可能性があるとの見方も示した。

ムサレム総裁はアーカンソー州銀行協会で、「関税措置が完全に導入されれば、インフレ率の上振れリスクとなる」と指摘。金融環境は全体的に引き締まっており、この状態が数週間以上続くと経済活動が鈍化する可能性があると指摘した。

これに先立ちムサレム氏は同協会のイベント講演の準備原稿で、関税措置がインフレに与える影響が一時的または限定的なものに過ぎないとの想定には注意が必要との見方を示した。同時に、金融政策で(関税の)二次的影響を「抑制」することは適切であるものの、基調的なインフレと、直接的・間接的、二次的な影響をリアルタイムで見分けるのは容易ではないとの考えも示した。

関税措置などを巡る不確実性は高く、労働市場が軟化する一方でインフレが再加速する「明確な可能性」があると言及。その上で、FRBの政策は適切であり、今後も警戒を維持すると述べた。

また、短期的なインフレ期待の上昇が長期的な期待に波及するかどうかを注視していると言及。そうなれば、インフレ対策は一段と困難になり、連邦準備理事会(FRB)の軟調な労働市場に対応する柔軟性が低下する可能性があると述べた。

その上で、長期的なインフレ期待が安定すれば、FRBは金融政策により雇用と物価安定への懸念に対応できると指摘。ただ、「米国民がインフレが長期的な高止まりすると予想し始めれば、物価安定と最大雇用という二大責務の達成ははるかに困難になるだろう」と述べた。

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