FRB利下げ年内3回完全織り込み、トランプ関税発動で「転換点」

米短期金融市場で利下げ観測が強まり、年内に0.25ポイントの利下げが3回行われるとの見方を完全に織り込んだ。トランプ米大統領がメキシコ、カナダ、中国に対する関税を予定通り発動したことで、世界の経済成長に与える影響が懸念されている。

  市場が年内3回の利下げを完全に織り込むのは昨年12月中旬以来。イールドカーブはスティープ化し、米2年債利回りは6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下の3.89%となった。

  スティープ化の動きは欧州でも出ている。ユーロ圏はトランプ関税の次の標的となると見込まれており、欧州中央銀行(ECB)の利下げ観測が高まった。一方、欧州連合(EU)が防衛費を大きく増額する計画であることから、財政赤字の拡大が意識され、長期債利回りを押し上げた。

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  ジェフリーズの欧州担当チーフエコノミスト兼ストラテジスト、モヒト・クマール氏は「関税はインフレではなく、成長に関する問題だというのが依然として当社の見解だ」と指摘。とりわけ英国とドイツでイールドカーブのスティープ化の動きが加速すると予想している。

  市場参加者にとって、トランプ氏が実際に関税発動に踏み切ったことは転換点となる。関税が単なる交渉戦術ではないことが明確になったためだ。カナダとメキシコに対する25%の関税発動に加え、中国への関税が20%に引き上げられたことで、年間およそ1兆5000億ドル(約223兆円)相当の輸入品に影響が及ぶ見通しだ。

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  XTBのリサーチディレクター、キャスリーン・ブルックス氏は「関税リスクが実体化したことで、市場はそのリスクを再評価する必要がある」と指摘。「7日発表の雇用統計まで、向こう数日は不安定な動きが続くかもしれない」と述べた。

ドル先高観に疑問も

  貿易摩擦の激化に伴い、米経済見通しに対する懸念は強まっている。米供給管理協会(ISM)が3日発表した2月の製造業総合景況指数は停滞の領域に近づいたことを示唆しており、米経済の動向を把握する上で雇用統計の重要性がさらに高まった。

  ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)の市場戦略グローバル責任者、ウィン・シン氏は、米経済データの悪化が続けば、「力強い成長、高インフレ、タカ派的な連邦準備制度理事会(FRB)というドル高を支えてきた根拠に疑問が生じる」と話す。

  関税に加え、米国による対ウクライナ軍事支援の一時停止、EUの防衛費増額に関するニュースも相次ぎ伝わったことで、市場ではリスク回避の動きが加速。スイス・フランと円への逃避買いが膨らむ一方、これまで関税を巡る材料で恩恵を受けていたブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時0.7%下落した。

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  INGの為替戦略責任者、クリス・ターナー氏は「今後は不安定な展開になるだろう」と指摘。欧州の防衛費増額計画と米経済見通しを巡る懸念が、足元でドルの重しになっていると続けた。それでも「今年前半はドルが全般的に上昇するとの予想を変えていない」という。

原題:Traders See Three Fed Cuts in 2025 as Tariffs Add to Growth Risk(抜粋)

(第7段落以降に為替の動きなどを追加して更新します)

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