プーチン氏が「復活祭停戦」を指示、30時間で終了 双方が違反を非難
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ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は19日、ウクライナとの戦闘における「復活祭の停戦」を宣言し、モスクワ時間の21日午前0時(日本時間同日午前6時)に、停戦期間の30時間が終わった。ウクライナとロシアは互いに、相手が停戦を破ったと非難した。
プーチン氏は、モスクワ時間の19日午後6時(日本時間20日午前0時)から20日いっぱいにかけて、すべての敵対行為を停止すると発表した。ウクライナも、これに同意した。
プーチン氏は、「期間中の、すべての軍事行動の停止を命じる」と宣言。「ウクライナ側も私たちの行動に倣うと考えている。同時に私たちの軍は、停戦違反や敵の挑発行為、攻撃的な行動に反撃する準備を整えておく必要がある」と述べた。
こうして停戦が始まったものの、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は20日夜、ロシア軍による砲撃が19日以降で1882回あったと主張した。うち812回は重火器を使ったものだったと、ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官から報告があったという。
ゼレンスキー氏は、ウクライナ東部ドネツク州の重要な輸送拠点で現在はロシア軍に包囲されているポクロフスク近郊で、最も激しい砲撃と攻撃があったとした。そして、「ウクライナがどのように行動するかは、引き続き相手の行動を反映し続ける。沈黙には沈黙で応じるし、我々の攻撃は、ロシアの攻撃から自衛するためのものであり続ける」と大統領は述べた。
ゼレンスキー氏はこれに先立ち同日、「今日(20日)は空襲警報はなかった」と述べ、ロシアによる連日のドローン(無人機)やミサイルでの攻撃が止まっていると言及していた。また、「長距離ドローンやミサイルを使った民間インフラへの攻撃を、今後少なくとも30日間停止し、延長の可能性も検討する」ことを提案した。
ただし、プーチン氏の停戦宣言については、「PR」行為でしかなく、その言葉は「空虚」だと批判した。ゼレンスキー氏はさらに、クレムリン(ロシア大統領府)が「停戦の印象」を作り出そうとしていると非難。「今回の復活祭は、この戦争の唯一の原因で、戦争を長引かせている理由はロシアなのだと、明確に示した」と主張した。
一方、ロシアは、ウクライナが何百というドローンと砲弾による攻撃を仕掛けたとして非難するとともに、それらを「撃退した」と発表した。
ロシア国防省は、同国軍が「停戦を厳守した」と主張。ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、停戦中にウクライナが、アメリカから供与された高機動ロケット砲システム「ハイマース」を使ったと非難した。
ロシア国営タス通信によると、クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官は、停戦が期限切れとなる数時間前、プーチン氏から停戦延長の指示は出ていないと述べた。
こうしたなか、戦争の終結させようと動いているトランプ氏は、「うまくいけば、ロシアとウクライナは今週中に合意に至るだろう」と述べた。ただ、それ以上詳しいことは話さなかった。
ウクライナでは、復活祭の朝の礼拝に参加したウクライナ人から、停戦についてさまざまな声が聞かれた。
首都キーウでは、弁護士のオレナ・ポプリチ氏(45)が、「(プーチン氏が)人道と何か縁があるとは思えない」とロイター通信に話した。
2014年からロシア占領下にある東部ドネツクでは、ウラジーミルとだけ名乗った男性が、「(ゼレンスキー氏が)どう反応するのか、注意して見ていた」、「停戦に関することは何もなかった。(中略)漠然とした発言だけで、砲撃されないと確信させる内容はなかった」と話した。
イギリス政府は今回の停戦について、外務・英連邦・開発省(FCDO)が20日に声明を発表。「一日だけの演出」であり、「これまでの偽の停戦のパターン」に当てはまるものだとし、「罪のないウクライナ人の殺傷などの違反行為」があるとした。
また、ウクライナが提案したような30日間の戦闘休止を呼びかけ、「これまで同様、プーチン大統領が和平を真剣に準備している証拠は見当たらない」とした。
アメリカは、戦争を終わらせようと、ロシアと直接対話を続けている。だが、大きな進展には至っていない。
マルコ・ルビオ国務長官は18日、アメリカには「ほかに優先すべきことがある」として、「この取り組みを何週間も何カ月も果てしなく続けるつもりはない」と述べた。
ルビオ氏は、「(短期間で)これが実行可能なのか、素早く判断しなくてはならない。素早くというのは、数日中にという意味だ」、「それが実現しないなら、私たちはただ(仲介から)離れていくだけだ」とも述べた。