トランプ大統領、中国への関税80%を提案 貿易交渉を前に
ドナルド・トランプ米大統領は9日、中国製品に対する関税の引き下げを提案した。両国が10日からスイスで予定している貿易協議に先駆けて、二大経済大国同士の貿易戦争緩和に関心があると示す形になった。 トランプ氏は自分のソーシャルメディアに、「中国に対する関税は80%が妥当に思える」と書いた。 アメリカとの貿易協議を前に、中国の華春瑩外務次官も自信を示し、アメリカとの貿易問題を管理する自国の能力に「完全な自信」を抱いていると述べた。 トランプ大統領は中国からの輸入品に145%の関税を課し、中国も報復として一部の米国製品に125%の関税を課し、両国間の貿易を減少させている。 9日に発表された4月の公式統計によると、中国の対米輸出は前年比で20%以上減少した。しかし同時に、総輸出は予想を上回る8.1%増加した。 政治リスクコンサルタント会社ユーラシア・グループのダン・ワン氏はBBCに対し、両国の当局者は「増え続ける経済的な圧力にさらされている」と話した。 「お互いに緊張緩和を検討している様子が、両政府からの最近の合図からうかがえる」とも、ワン氏は述べた。 米中が高官協議を10日からスイスで行うと、両政府が6日に発表した際には、緊張緩和に向けた重要な第一歩として広く歓迎された。しかし、複数のアナリストは、これが長期にわたる交渉の始まりになるはずだと慎重な姿勢を示している。 「アメリカと中国の間の構造的な摩擦は、すぐには解決されないはずだ」と、かつてアメリカ政府の貿易交渉を担当したスティーヴン・オルソン氏は指摘した。 同氏は、今回の会合の結果として関税が引き下げられるとしても、それは「小規模」なものになる可能性が高いとも話した。 最初の交渉には、スコット・ベッセント米財務長官と中国の何立峰副首相が出席する予定。 しかし「最終的な合意には両国トップ(大統領と国家主席)の積極的な関与が必要だと、誰もが認識していると思う」とオルソン氏は述べた。 別の貿易専門家は、たとえトランプ大統領による追加関税が撤廃されたとしても、両国は克服すべき大きな問題を抱え続けることになると話す。 「現実的な目標はせいぜいが、非常に高い二国間関税の引き下げだろうが、それでも高い関税障壁とさまざまな他の制限が残ることになる」と、国際通貨基金(IMF)中国部門の責任者だったエスワル・プラサド氏はBBCニュースに話した。 トランプ大統領は9日にさらにソーシャルメディアで、アメリカに「市場を開放」するよう中国に求めていた。また、関税引き下げは「スコット・B次第だ」とも書いていた。「スコット・B」とは、ベッセント財務長官のことと推測される。 トランプ氏は8日には、中国と「非常に友好的な」会談を期待していると述べていた。 米中協議の2日前には、イギリスとアメリカが新しい貿易枠組みと関税について合意したと発表したばかり。重関税が来月実施されるのを前に複数の国がアメリカと同様の合意を模索しており、イギリスがその第一号となった。 米英両国は、アメリカ産牛肉やその他の輸出品をイギリスが受け入れるのと引き換えに、一定数のイギリス車に対する関税をアメリカが軽減するほか、一部の鉄鋼およびアルミニウム製品の関税を免除することで合意した。 トランプ大統領は4月に数十カ国に対していわゆる「相互関税」を発表したが、その後すぐに90日間停止し、各国政府に交渉の猶予を与えた。 こうした状況で、アメリカに拠点を置く企業もスイスでの米中協議の推移を注視することになる。 米アイダホ州に拠点を置く女性用アウトドア衣料品メーカーのワイルドライは、中国に製造拠点を置いており、関税の深刻な影響を受けている。 同社のキャシー・エイベル最高経営責任者はBBCのラジオ番組「トゥデイ」で、商品の輸送コストが大幅に上昇したと話した。 「約70万ドル相当の注文が入ってくる予定で、それに対する関税は当初20万ポンドだったのが、今では120万ポンドに値上がりしている」と、エイベル氏は説明した。資金調達ために事業の一部売却を検討しているとモ、エイベル氏は話した。 (英語記事 Trump proposes 80% China tariff ahead of trade talks)
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