アングル:トランプ相互関税の一時停止、企業の不透明感は増す一方
[ベオグラード/フランクフルト/ロンドン 10日 ロイター] - トランプ米大統領が9日に「相互関税」の一部を90日間停止すると発表したが、混迷を極める米貿易政策によるコスト高騰、受注減少、サプライチェーン(供給網)混乱への企業幹部の懸念は和らいでいない。
中国からドイツまで複数の国々にまたがる複雑なサプライチェーンを広げる企業は、関税の影響を見極めようと奔走しており、相互関税停止はその混乱に拍車をかけただけだ。
企業は今、90日の停止期間の終了後に何が起こるかを思案している。イェール大学のエコノミスト、アーニー・テデスキ氏はXへの投稿で、相互関税停止後でも米国の実効輸入関税率は平均約23%になるとの試算を示した。
キルター・インベスターズのマーカス・ブルックス最高投資責任者は「多くの消費者と企業は、何らかの確信を持って計画を立てることができなくなっており、いずれにせよ景気後退に見舞われるかもしれない」と話し、「支出と投資は削減される可能性があり、トランプ氏が達成したいと言っている事全てに対し、完全な逆風が吹くだろう」と続けた。
ハイテク企業のコンサルタント会社、バロワールのレベッカ・ウェッテマン最高経営責任者(CEO)は「ビッグテック(巨大ハイテク企業)の意思決定サイクルは既に減速しており、現在の不透明感はマイナスになるだろう」と話した。
<大きな不透明感>
既に米国では消費者信頼感が弱まってスニーカーなどへの裁量的支出に悪影響が及んでいる。業界団体「米靴製品卸売小売協会」の週間統計によると、トランプ氏の大統領就任以来の11週間で、靴の店舗販売は前年同期比9.5%減少した。
スウェーデンの家具大手イケアの広報担当者は、関税により手ごろな価格を維持するのが難しくなったと強調。「関税がわが社の製品価格にどの程度影響するかを言うのは尚早だが、われわれは状況を注視しており、今後の展開を見極め続けていく」と述べた。
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