『日本一の最低男』北野Pが考える、「報道」ではなく「ドラマ」だからできること(田幸 和歌子)

3月20日にいよいよ最終回を迎える香取慎吾主演のドラマ『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』(フジテレビ系木曜劇場)。SNSでは、「回を重ねるごとに尻上がりに面白くなっていく」「途中から毎回泣いている」といった声が増えている。

人生崖っぷちに追い込まれた、家族嫌いで子ども嫌いの最低男・大森一平(香取)が、選挙に当選するためにシングルファーザーの義弟・小原正助(志尊淳)とその子どもたちと暮らし始め、家族のような関係を築いていく中、徐々に日本社会の問題に気づき、より良い社会を作るために本気で選挙に立候補する “選挙&ニセモノ家族ドラマ”だ。

第7話より(C)フジテレビ

プロデュースしたのは、NHKの報道記者出身の北野拓さん。NHK時代の『フェイクニュース あるいはどこか遠くの戦争の話』(2018年)や、WOWOWの連続ドラマW『フェンス』(2023年)など、良質な社会派作品を手掛けてきた彼が、エンタメ色の強いドラマを得意とするフジテレビで最初に手掛けたのが本作である。

2児の父でもある北野さんが、なぜいま「家族と選挙」に関するドラマを作ったのかに迫るインタビュー第3回(最終回)。同姓婚や不登校、産む・産まない問題など、センシティブなテーマに正面から切り込む本作を制作するうえで、どんなことに気をつけていたのか。また、北野さんが考える、「報道」ではなく「ドラマ」だから伝えられるものとは。

親の死を子にどう伝えるかを描いた第1話

――『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』では、同性婚や不登校、貧困、少子化、保育園の人手不足など、様々な難しい題材を扱っていますが、どんなことに配慮して進めてこられたのでしょうか。

北野P:それぞれのテーマへアプローチするために当事者の方に取材し、専門家である監修の先生にご相談させていただく中で、「ここは外してはいけない」「こう描くと傷つく人がいる」というような点を教えていただき、その都度、ディスカッションしながら作っていきました。現実にある題材を描く上で、取材するのは当たり前のことだと思っています。

――第1話では、母親が自分のせいで亡くなったと思っている朝陽(千葉惣二朗)に、がんで亡くなったという事実を一平が伝え、正助が止めようとする展開がありました。

第1話より(C)フジテレビ

北野P:医療監修のひとりにがんの専門医の方に入っていただいたんですが、先生への取材の中で「グリーフケア」(喪失を経験した人達に寄り添うこと)として、遺された子どもに事実をちゃんと伝えること、「あなたのせいじゃない」と言ってあげることは大事だと教えていただきました。先生からのご意見や担当脚本の政池さんの書きたいとおっしゃったものを考慮して、一平は大人も子どもも関係なく、きちんと母の死を伝えるという描き方にしました。基本的には取材したことの中から、何を描くかを取捨選択していくやり方をしています

――日本では幼い子どもに親の死の事実は伝えず、大人が子どもを守るために隠す、できるだけ教えないようにするケースが多い気がしますが、実際には小さな子は死の気配や事実に敏感ですよね。日本のドラマの描写として珍しいと思いました。

北野P:そうですね。医療監修の先生のおかげで自信を持って出すことができました。

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