アングル:ウクライナへの軍事支援、国防産業の強化に重点移行

ドイツのウィースバーデンにある米軍基地「クレイ兵舎」はウクライナ人を含む31カ国から来た兵士約350人が有刺鉄線で囲まれた中にある格納庫や空調の効いた緑色のテントで活動している。2013年7月撮影(2025年 ロイター/Kai Pfaffenbach)

[ウィースバーデン(ドイツ) 2日 ロイター] - ドイツのウィースバーデンにある米軍基地「クレイ兵舎」はウクライナ人を含む31カ国から来た兵士約350人が有刺鉄線で囲まれた中にある格納庫や空調の効いた緑色のテントで活動している。

兵士たちの任務はロシアのウクライナ侵攻が長期化している状況で、北大西洋条約機構(NATO)と西側以外の支援国から提供を受けた兵器・装備・訓練に関するウクライナのニーズを満たすことだ。

NATOがこの基地にウクライナ支援を調整するための司令部を設置してから半年が経過し、ウクライナに対する支援が特にドローン製造について進化している。

2022年のロシア侵攻後、NATO加盟各国は主に自国の兵器備蓄を削ってウクライナに軍事支援を提供し、ウクライナは西側の防衛企業に大きく依存していた。

NATOのウクライナ安全保障支援・訓練部隊(NSATU)副司令官のマイク・ケラー少将はロイターに対し、軍事支援のあり方が今やウクライナの国防産業を強化する方向にますます移行していると語った。

ケラー少将はウクライナの創造性を称賛し、技術革新・生産・認証を巡る一連の過程のスピードを高く評価した。ドローン製造はNATO加盟国が製造方法を学び将来的にウクライナから購入する可能性もある分野だという。「防衛調達は一方通行でない。ウクライナから購入したいドローンが確かに多くある。ただ現時点で、ウクライナは自国で生産したドローンを全て必要としていると考える」と述べた。

NATO欧州連合軍副最高司令官のキース・ブラウント海軍大将も、西側は特にドローンのような自動操縦兵器に関してウクライナから多くを学べるだろうと語った。「われわれは自動操縦の能力について、いつでも未来のことだと考えていたが、現実には誰もが想像していたよりもたぶんかなり早く進化している」とロイターに語った。海上・水中・地上・空中のドローン活用について言及し「ウクライナがドローンの利用方法を学ぶだけでなく製造方法も学んでいる点は興味をそそる」と述べた。

<差し迫ったニーズ>

ウクライナに対する軍事支援は、欧州同盟国やカナダがロシアの軍事的野心を巡る懸念やトランプ米大統領の要求に対応し防衛費を増大させるようと準備しているのに伴って進化している。

ケラー少将はNATO加盟国が自国の兵器備蓄を増やすためにもウクライナ向けの兵器を製造する企業が必要になるだろうと述べた。ウクライナはあまり数多くの部隊を対ロシア戦争に引き留めずに領土を防衛するために防空システム、弾薬、対戦車地雷を現在最も必要としているという。

トランプ米政権は米国のウクライナ支援を巡る関与を疑問視しており、NSATUは米国に対する西側軍事支援の依存度を低める目的も一部あって設立された。

米国がウクライナ向けの兵器供与の一部停止を決定したためこうした懸念材料が浮き彫りになり、ウクライナが自国を防衛する能力について懸念が新たに生じている。

しかしながら、米国はNSATUの司令官とヴィースバーデンの人員の約9%を派遣している。

物資の大半はポーランドにあるNSATUの拠点を通じてウクライナに送られている。NATOによれば毎月1万8千トンを送り出し、ルーマニアに第2の拠点が建設されている。

ケラー少将はNSATUを経由する軍事支援が当面少なくとも安定的に続くと見込んでいるが、こうした状況はどのような政治的な判断がなされるかどうかで左右されると述べた。NSATUは米国が離脱した場合でもウクライナの抵抗を支えられるかどうかとの質問に対し、ケラー少将は「可能だ」と答えた。

しかしながら、ケラー少将はまたNSATUとして衛星画像を利用していないと明言しつつ、衛星監視のようなある種重要な能力を代替するよう「欧州とカナダが対応を迫られるのではないか」と警戒した。

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