沈む韓国、理由は大統領制にあり:アメリカと酷似する分断社会
やがて来るかもしれない1通の手紙。それが恋文なら嬉しいものですが、通告か警告のレターでは「見たくない」と思うのは誰しも同じでしょう。トランプ大統領は新関税の通告書を今日から送り出すと述べています。(実際は月曜日でしょう。)効力は8月1日からと記載され、それぞれの国が受け取る手紙には違う関税率が記されているはずです。多分、第一陣は小さい国などで10%適用国が主だと思います。日本へは手紙が来るかもしれないし、来ないかもしれないです。戦略的に「交渉しても無駄だから通告するのみ」というトランプ氏の思惑か、ベッセント氏の「選挙が終わるまで様子を見ましょう」という意見に耳を傾けるか、というところでしょう。ただほとんどの国で交渉は終わっていないのでその手紙は実質的には絶対的な通告ではなく、警告に近いものだとみています。
では今週のつぶやきをお送りします。
GPIFは儲けているのか?
我々の年金の運用をしている年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が発表した3月末の結果をメディアがどう表現したか比較すると面白いです。ブルームバーグは「GPIFの1-3月、8.8兆円の運用赤字-トランプショック響く」、日経は「GPIFの運用収益、5年で98兆円 年金積立金は70兆円規模上振れ」、ロイターは「GPIF、24年度運用収益1.7兆円 5年連続増も年明け以降はマイナス」。どれが正しいのかといえばこの3つの中ではロイターが一番冷静で正しい表現です。ブルームバーグは1-3月の運用不振だけを取り上げ、日経は第4期中期目標期間の5年間の総括の話をしており、3月決算という趣旨から外れています。
GPIFは儲けているのか、という問いには「外国株と外国国債で儲け、国内株と国内国債で損をするも相殺するとプラスが出た」というのが概ね正しい表現でしょうか。国内株については25年4-6月の運用は悪くないはずで反動含み益が出ると思いますが、国内国債は厳しさが続くと思います。GPIFは運用については外国株、外国国債、国内株、国内国債を概ね1/4づつに分け投資しています。運用の基本資産は290兆円ほどあります。私がもしもポートフォリオを考えるなら国内国債は半分以下の10%程度にし、残りを外国株式に振ります。理由は国内国債市場は日銀が振り回しており、市場は不健全であり、巨額の年金の投資対象として外したい分野だからです。
国内株式は爆発的成長を期待できる産業がなく、大手企業は安定的な成長を重視し、いわゆる成長株は成長できない状況が続いています。今週号の日経ビジネスの特集は「オリックス」。私が就活していた頃に脚光を浴び始めたリースの会社がいつの間にか「本業なき巨大企業」に成長しています。同社の株価が低迷するのは自己資金での投資が大きく、ROEが低いからです。実はこの経営スタイルは日本企業の象徴的特徴であり、特にバブル崩壊後、銀行嫌いが企業のカラダに染みついてしまい、それが故に「大きくなれない大企業病のニッポン株式会社」と申し上げます。株価がはねない理由の一つでしょう。孫正義氏のようなヤンチャぶりは正統派企業にはできず、よって株価も踊らないのであります。
沈む韓国、理由は大統領制にあり
産経の韓国駐在の黒田勝弘さんの記事「韓国は『近くて近い国』に? 縮まる距離感、李在明政権が『「反日』自制できるかがカギ」は申し訳ないですが頂けない記事でありました。記事中に韓国人がイタリア人と似ているという記載があり、思わず「それを言うとイタリア人が怒るだろう」と思わずつぶやいてしまいました。黒田記者も韓国通のはずなんですがねぇ。韓国ウォッチャーの私は李在明政権は日本に対して突っかかってこないとみています。今の韓国にはそんな余裕は全くなく、その上で北朝鮮との融和を図ろうとしているのですが、金正恩氏も素知らぬ態度だし、国内保守派の反対もある中、政治の混迷が予想されます。
李在明大統領インスタグラムより
韓国の大統領がいつも逮捕されやすいのは国情が時の流れに押されるからであります。大統領とは相当の権力を持つわけで国政を操るわけです。ただ大統領任期期間が順風満帆であることはまずなく、1年ぐらいすると我慢していた層が爆発しやすくなるのもまた事実です。日本とは比較しにくいのですが、あえて言うなら平安時代まで天皇が実権を握っていた時、明治天皇の時代、そして軍部が政権を握った大戦直前が日本の歴史上、異質な時期だったと思います。それ以外の時は幕府と朝廷の関係なり政党間の駆け引きなどで大統領制のように自由にできない制約があり、また政権運営に一定のクッションがあったとも言えます。
韓国は大統領制ゆえに分断社会を作った点でアメリカと非常に似ています。韓国の場合、保守と改革という仕分けが各人の思想のみならず、年齢層ごとの相違、男女、職業、収入層という具合で縦横無尽に分断されることで国家が一体になれない状態にあります。李大統領は「国民統合」を目標に掲げます。もしも本当に国民統合をしたいのなら政党政治に変えるのが一番手っ取り早いでしょう。大統領の直接選挙制では識者から時事問題に興味ない人まで等しく1票なのです。誰が正しく判断できるのか、投票の質を言うのは民主主義の根幹に触れるタブーかもしれませんが、今迄誰も考えもしなかったこの点に1つの疑問を投げかけてみるのも悪くないかもしれません。
ひたひたやってくるのか、EVの時代
日本の方にEVの話をすると化学反応のような拒否反応が出ます。それでも私の年初の10大予想では今年は再びEVの売り上げが伸びると書いています。ここでいうEVはBEV、PHEVでHVまで含みます。マスク氏の荒唐無稽な行動によりテスラ車のブランドは遺棄されてしまい、その間に中国勢、特にBYDと小米が大躍進し、技術的にも凌駕しつつあります。一方、日産が中国で作るEVセダンを東南アジアに輸出すると発表しています。この日産ブランドのEV、実はほぼ中国にお任せで作ってもらったもので相手先ブランド(OEM)ではないかと疑うようなものです。
ホンダもカナダでEV車の大型投資するとぶち上げたものの1年もたたないうちに延期という格好の悪い話になっています。ただ、バンクーバーの街中で見る限りEVは着実に増えており2024年のZEV販売比率は22.4%にも及びます。こうなると新車を買うならやっぱりEVの検討はしたくなります。またテスラに乗り飽きた人が内燃機関のクルマに戻るより他社のEVに乗り換えることで時間をかけながらもEVは普及してくるのだとみています。
先日私の母校の自動車部の総監督と酒を飲みかわしながら「私のGTRは売るべきか、持ち続けるべきか」と聞くと即答で「持ち続ければ価値は必ず出る」と。「日産はもうあのようなクルマは作らないだろう」と。私は「作れないだろう」の言い間違いではないかと思います。カナダでは2026年からEVを全体の20%以上にするルールが適用される予定ですが業界では猛反対。理由は売れ行き。ただ私の直感ではそれでも過渡期にあるように見えます。着実にそしていつの間にかEVの時代になっているような気がします。その変化をどこまで敏感に感じ取るかであります。
後記 乾燥しているバンクーバーから行く日本の梅雨の2週間の滞在は正直カラダに堪えます。その上、当地を2週間も空けていると仕事が積み上がり、軽い時差ボケに耐えながらこの先、しばらくノンストップで働きづめの生活になりそうです。年間に4回ぐらい日本に行くわけですが、思うのは行けば行ったで何故こんなに予定が詰まるのか、と思うぐらい日程は凝縮状態。それでも会いたい人の半分ぐらいしかこなせず、次回に先送りです。今回はユニクロにも行けずデパートにも行けず、本屋には一度しか行けず、焼き鳥屋も行けず、ラーメンも食べず…一体どんな生活をしていたのでしょうかねぇ。でも大阪で串カツ「だるま」に行けました。(すみません、新世界ではおののき、難波本店に行ってしまいました。)
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2025年7月5日の記事より転載させていただきました。