「スタグフレーション・ショック」で米利下げ停止へ-パインブリッジ
パインブリッジ・インベストメンツは、世界的な貿易戦争が物価上昇圧力を高める中で米連邦準備制度理事会(FRB)が今年利上げを見送るだろうとの見通しから、米国債よりも現金を選好している。
アジア債券共同責任者オマー・スリム氏は、インフレ急騰のリスクが、成長への脅威を上回るとみている。トランプ米大統領が関税によって世界貿易を再編しようとしているためだ。スリム氏の現金および現金同等資産保有高は、さまざまなファンドで20%に達しており、2020年の新型コロナウイルス流行初期以来の高水準となっている。
スリム氏はインタビューで貿易戦争について「市場は、これがどれほどのインフレを生み出すかを過小評価している」と語った。「スタグフレーション的なショックをもたらす。FRBは市場が織り込むよりもはるかに利下げへの抵抗が強い」との見方を示した。
トレーダーの間では、安全資産としての米国債の役割について議論が高まっている。貿易戦争がインフレを押し上げ、金融政策による成長支援が難しくなる懸念が背景にある。10年物米国債利回りは今週35ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)近く上昇。シティグループは、投資家が代わりに欧州やオーストラリアの国債を選好する可能性を指摘した。
スリム氏は、1-3月(第1四半期)に米国債が上昇しことによる利益を確定し、現在は最も安全な資産がどこにあるかを模索している。
トランプ氏の「関税が現行のまま、あるいは同様の形で維持されるのであれば、市場はそれを適切に織り込んでいない」とスリム氏は指摘。「これは単なる関税の問題ではない。企業によってはビジネスモデルが崩壊するだろう。率直に言って、幾つかの国では経済モデルが崩壊するだろう」と語った。
スリム氏と異なり、市場は今年4回以上の0.25ポイント利下げを織り込んでいる。関税が米成長の重しになると予想しているためだ。
スリム氏は「質への逃避はもはや存在しない」と述べ、「市場における重大な構造変化だ」と指摘した。
債券売り浴びせの中、同氏は機会を捉えて短期の高格付け社債を購入しているという。
原題:‘Stagflationary Shock’ Halting Fed Cuts Sends PineBridge to Cash(抜粋)