巨人・田中将大の「20センチ」 久保コーチとのフォーム改造効果を実感 昨年15勝の菅野も魔改造

 巨人・田中将大投手(36)が12日、宮崎キャンプでブルペンに入り、ギアチェンジを印象づけた。今キャンプ初めてプロの捕手相手の投球練習で44球を投げ、全6種の変化球を解禁。宝刀スライダーにも好影響を及ぼすなど、久保康生巡回投手コーチ(66)と二人三脚で取り組む新フォームへの改造効果を実感。理想とする2月下旬の実戦デビューに向けてまた前進した。阿部慎之助監督(45)はブルペンで赤星優志投手(25)を“慎改造”。約40分間、つきっきりの熱血指導を施した。

 全身で手応えを感じ取った。田中将が第3クールでギアを上げた。加入後初めてサンライズブルペンへ。全6レーンを投手が埋める緊張感の中、岸田を相手に直球、スライダー、スプリット、ツーシーム、カーブ、カットボール、チェンジアップを交えて44球。今キャンプはここまで変化球はカーブ、スプリットの2種類しか投げず、相手も全てブルペン捕手だったが、初めてプロの捕手を相手に全ての持ち球を披露した。「上々だった。またちょっと違う空気感で投げるのは新しい刺激になる。一歩進めた感じがします」。YGマークの帽子は汗でにじんだ。

 完全復活に向けた足取りも力強さを増してきた。初日から久保巡回投手コーチの「魔改造」を受け、体を縦回転させる意識にした新フォーム。同コーチは「一番の変更点は投射角」と球の角度が大きくなったと証言。その要因はリリースポイントが上がったこと。「投げる高さが全然変わってくる。今日は180センチ台で推移していた」と地面から球を離す位置までの高さが、以前より約20センチアップしたと説明した。実は昨年15勝した菅野も、同様のフォーム改造でリリースポイントが166センチから20センチ上がった一人。気温8度の中でも球速は140キロ台を計測したといい、初めて球を受けた岸田も「直球もフォームや腕の振りよりピュッと来る。ほぼ投げミスもない」と目を見開いた。

 球に角度がついたことで、新たな化学反応も起きた。「このフォームで変化球を投げた時の球の動き方、自分から見える景色もそう。変化球にもいい効果があるんだと感じられた」と右腕。中でも好感触を得たのがプロ入り時に得意としていたスライダーだ。「直球の軌道から外れて曲がるとか大きく膨らむとかがなかった」と近年の“悩み”が解消。球団のデータアナリストも「角度がつくことで球の軌道が変わる。軌道が変われば同じ球種でも打者は違うボールのように感じる」と証言した。

 活躍を届けたい人がいる。11日が楽天時代の恩師・野村克也さん(享年84)の命日だった。「感謝の気持ちしかないです。最初の頃は登板後に監督の横に座ってお話を聞いたりとか。この世界でやっていくために本当にいろいろなことを教わった。ああいう時間があったから今もこの世界でやれている。ここ何年、ずーっとダメなのでね。いい報告、いいニュースを届けたい」と心に期す思いは強い。

 13日に宮崎キャンプを打ち上げ、14日から沖縄へ。杉内チーフコーチは「体に問題がなければ、オープン戦のどこかで(投げる)」と22~24日の3連戦での実戦デビューの可能性を示唆。神の子マー君が輝きを取り戻す。(堀内 啓太)

 ◆田中将×久保コーチの魔改造

 ▽1日 初日から1時間超のマンツーマン指導。マウンドの傾斜を逆向きに利用した練習法などネットスロー120球。

 ▽2日 マウンドから約1.5メートル先に障害物となるネットを置き、さらに3メートル先の別のネットへ113球。ノックバットを大根斬りのように振り下ろす練習も。

 ▽3日 木の花ドームで初のブルペン入り。

 ▽4日 2個のボールを同時に投げる珍トレ。

 ▽6日 ブルペン入りし、今キャンプ初めて実戦と同じ18.44メートルで捕手を座らせ43球。投球後にデータ班ら総勢7人がかりで映像確認。

 ▽7日 平均台を用いた矯正法でネットスロー38球。

 ▽11日 ステップ幅を通常の約半分、プレートから本塁方向に3足分だけと制限して67球のネットスロー。

 ◆23年の菅野の魔改造 2月下旬に首を寝違え、その影響でフォームを崩すと3月中旬に右肘の張りを訴えて2軍調整に入った。久保投手コーチとの二人三脚で理想的だった2017~18年ごろのフォームへの回帰を目指し、出力が上がらない原因だった右足が沈み込む動きの矯正などに励んだ。同年初登板初先発となった6月11日のソフトバンク戦(ペイペイD)で5回2失点で初勝利。同年は自己ワーストの4勝に終わったが、復活の下地を作り上げて翌24年は15勝3敗で最多勝と最高勝率の2冠と完全復活を遂げた。

関連記事: