「安価で粗悪なモバイルバッテリーは爆弾と同じ」韓国・TLX社CEOが警鐘…ドリンクホルダーで発火→テスラ廃車の衝撃(集英社オンライン)

ドリンクホルダーに置いていただけのモバイルバッテリーが突然発火し、高価な電気自動車テスラが廃車になった––––。SNSで報告された衝撃的な事故が大きな波紋を広げている。総務省消防庁によると、2025年に消防機関が通報などで把握したモバイルバッテリーによる火災が前年比66%増の482件だった。リチウムイオン電池火災に特化した特殊な消火剤及び消火パッドを開発した韓国・TLX社CEOは「日本の至る所でバッテリー大爆発」の可能性を指摘する。私たちの生活に欠かせない便利な道具は、なぜ突然“凶器”へと変わるのか。 【画像】モバイルバッテリー同様、「粗悪なバッテリーが多く紛れ込んでいる」といわれる夏場の必須アイテム

5月20日、SNS上で、おのだ氏が、愛車であるテスラが完全に廃車になった経緯を、悲痛な思いとともに報告している。 愛車が廃車になった原因は、機械式駐車場に停めていた車内のドリンクホルダーに置いていたモバイルバッテリーの発火であった。 充電ケーブルに繋いでいたわけではなく、単に置いてあっただけの使用歴1年4カ月の製品が突然燃え上がり、美しい座席を真っ黒に焼き尽くし、頑丈なフロントガラスを熱で割り、高価な電気自動車を完全に破壊した。 駐車場に車を停めている間は車内が無人であったため人的被害が出なかったことや、テスラのバッテリーに引火しなかったことは不幸中の幸いだ。 車内という逃げ場のない空間で、もし運転中であったなら命を落としていた可能性も十分にあり得た。テスラには莫大な量のバッテリーが搭載されており、引火すれば機械式駐車場そのものが破壊されていたことだろう。

電車でもさらに恐ろしい事態が続発している。 1月21日には、東京メトロ日比谷線の車内で乗客の所有するモバイルバッテリーが突然発火し、電車の運転が一時停止して3.6万人の足に多大な影響を及ぼした。続く2月上旬にも都営新宿線で同様の発煙騒ぎが起き、1.8万人がダイヤ乱れの影響を受けている。 狭い車内で火の手が上がれば、大勢の命が危険にさらされる。誰もが日常的にポケットやカバンに入れている大変便利な道具が、ほんの一瞬にして周囲の命を脅かす凶器に変わる。 満員電車で隣に立つ見知らぬ乗客のカバンの中にも、爆発の危険性を秘めたバッテリーが入っている可能性は十分にある。毎日の通勤通学の時間は、気付かないうちに危険と隣り合わせの時間となっているのである。 カバンから煙が上がり、周囲の乗客が悲鳴を上げて逃げ惑う光景は、もはや映画の中のフィクションではなく、明日の朝に起きるかもしれない現実の出来事なのである。 リチウムイオン電池が一度発火すると、なぜ被害がここまで大規模に拡大するのか。 最大の理由は、燃え上がる火に外から水をかけても簡単には消えない特性にある。電池の内部には可燃性の高い液体の成分が密閉されており、一度内部ショートを起こして発火すると、熱暴走と呼ばれる止めることのできない連鎖反応を引き起こす。 表面の火を大量の水で一時的に消したように見えても、電池内部の温度は最大でセ氏1500度(マグマの温度が約800〜1200度。鉄がドロドロに溶け始める温度)まで上昇しており、わずかな時間が経過するとすぐに再び激しく燃え上がるのである。 安全な状態に戻すための消火には、通常の火災の何十倍もの大量の水と、途方もなく長い時間をかけた冷却活動が必要となる。テスラなどの大型電気自動車が炎上した場合、完全に火を消し止めるまでに10トンの水(テスラの公式発表のカタログ値。実際には90トンの水が必要という関係者もいる)が必要になる。


Page 2

ジョンソクCEOは、日本の未来について、次のように語った。 「日本市場におけるバッテリー専用の消火器や消火パッドの規模は、およそ3000億円という巨大な金額に達すると予測している。電池火災に対する防衛市場はこれからが始まりであり、ビジネスの視点から見れば非常に有望な市場であることは間違いない。 しかし、数字は明るい未来だけを意味するわけではない。市場規模が3000億円に達するという予測は、裏を返せば、市場規模に等しい危険性が日本の至る所に静かに潜んでいるという事実を示している。 ビジネスチャンスの大きさは、日常的に直面する危機がいかに差し迫っているかを証明する残酷な指標でもある。人々の安全を守るための投資が、かつてない規模で必要とされている証拠でもある」 私たちは便利で強力なエネルギーを手に入れた代償として、四六時中、火災の危険と隣り合わせの生活を送るようになった。 「普通に使っていれば安全」という常識も通用しなくなっている。

東京消防庁の調査によれば、モバイルバッテリー火災の要因のうち、「いつも通り使用していた」あるいは「要因不明」とされるケースが全体の4割以上を占めている。強い衝撃を与えたり、暑い車内に放置したりといった明確な誤った扱いがなくても火災は突然起きる。 製品評価技術基盤機構の調査では、事故の一歩手前であるヒヤリハットの事例として、「本体が膨張した」「変形した」という報告が最多となっている。 少しでも膨らみを感じたら直ちに使用を中止して適切に処分する––––かすかな兆候を見逃さない知識が、命を守る境界線だ。安さにひかれて飛びつかず、信頼できるメーカーの製品を慎重に選ぶ姿勢は防衛の第一歩である。 リチウムイオン電池の火災は、誤用がなくとも突如発生し、従来の消火法が通用しない致命的なリスクを孕んでいる。利便性の代償として私たちは常に危険と隣り合わせにいる。命を守るためには、安さに惑わされず信頼できる製品を選び、本体の膨張などの微小な兆候を見逃さない、消費者一人一人の高い防衛意識が不可欠だ。 文/小倉健一

小倉健一

集英社オンライン
*******
****************************************************************************
*******
****************************************************************************

関連記事: