チューダーの債券運用者、4月に約200億円の損失-関税が市場直撃

William Shaw、Nishant Kumar

  • 4月より前の利益は帳消し、今年の損失は約8000万ドル-関係者
  • 運用者は債券ベーシス取引など専門、20年並みの米国債危機に警戒感

ヘッジファンド運営会社チューダー・インベストメントのトレーダー、アレクサンダー・フィリップス氏は、トランプ米大統領の関税措置が米国債を含む金融市場を直撃したのを受け、4月に約1億4000万ドル(約201億円)の損失を被っている。

  事情に詳しい複数の関係者によると、フィリップス氏のトレーディング勘定における評価損により、2025年の利益で4月より前の分は帳消しとなった。11日終了週の早い段階で同氏の今年の損失は約8000万ドル。関係者は非公開情報だとして匿名を条件に明らかにした。

  フィリップス氏は現在も同社に勤務しており、損失を取り戻そうとしている。チューダーの担当者は発表文で、「市場が不安定な動きを見せる中、アレックス・フィリップス氏は強制的な損切りはしておらず、現在も活発に取引を行い、ポートフォリオの管理を続けている」と説明した。

  160億ドルを運用するチューダーとしては、4月の損失はさほど大きくはないものの、フィリップス氏の運用成績の急激な暗転は、多くのトレーダーが最近の相場波乱への対応に苦戦していることを映している。

  トランプ氏が今月、世界貿易の再構築を目指して広範囲にわたる懲罰的関税を発表したのを受け、長期債利回りは急上昇。金融市場を混乱に陥れた。通常は安全な資金避難先とされる米国債市場も危機に巻き込まれており、相場変動の要因として外国政府による米国債売りや、ヘッジファンドによる高レバレッジ取引の解消といったさまざまな説が飛び交っている。

  フィリップス氏がどの取引を引き金に損失を被ったのかは明確になっていないが、同氏の専門分野にはレバレッジの高い債券ベーシス取引が含まれる。ベーシス取引を巡り市場では、米金融当局が米国債市場安定化に向け介入に踏み切った2020年3月のような危機的状況が再発するとの警戒感が浮上している。

原題:Tudor Bond Trader Phillips Has Lost $140 Million in April(抜粋)

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