中国の愛猫家、コロナ治療薬に注目-ペットの薬は人間用より高額

米製薬会社メルクの新型コロナウイルス治療薬「ラゲブリオ」が、コロナのパンデミック(世界的大流行)後の中国で新たな活路を見いだしている。猫の飼い主たちが、愛猫の命にかかわるウイルス性疾病の治療薬として注目している。

  中国メディアの界面新聞は昨年末、最近まで有効な治療薬がなかった致死性の病気である猫伝染性腹膜炎(FIP)の治療に、人間のための治療薬であるラゲブリオが使われていると報じた。

  この動きは中国のソーシャルメディアで話題となり、何万人もの愛猫家が中国版「インスタグラム」と呼ばれる「小紅書」で、ペットの高額な治療費用の節約とともに、ラゲブリオがどのように飼い猫を救ったかを議論している。

  あるユーザーは、「人間の新型コロナ治療薬が愛猫の命を救った」と投稿。「より多くの人がペットの命を救い、猫が苦しむ痛みを軽減できるよう、私はここで情報を共有したい」と記した。

  河南真実生物科技や先声薬業、上海君実生物医薬科技などの国内企業が開発したより安いコロナ治療薬を選択する飼い主もいる。

  メルクの広報担当者はブルームバーグ・ニュースの問い合わせに対し、同社は猫に対するラゲブリオの試験はしておらず、その予定もないと電子メールで答えた。

  猫へのコロナ治療薬使用はある意味で、パンデミック初期に見られた動きと対照的だ。当時、米国で動物用抗寄生虫薬「イベルメクチン」を人間に投与してはという考えが一部で広がり、米食品医薬品局(FDA)は「あなたは馬ではありません。牛でもありません。やめてください」という注意書きを掲載するに至った。  

  FIPは、いわゆる猫コロナウイルスによって引き起こされるウイルス性疾患。このウイルスは、白血球に感染した後に猫の体内全体に広がり、炎症反応を引き起こす。治療を行わないと死に至る猫特有の病気で、人や犬、その他の動物には感染しない。

  最近まで治療薬はなかった。一部の抗ウイルス薬が有効であることが証明されているが、広く入手できるものではない。最も人気のある「GS-441524」は、米バイオ医薬品メーカー、ギリアド・サイエンシズが開発。ただ、FDAの承認を受けておらず、猫の飼い主は非公式のネットワークを通じてこの薬を入手することが多く、購入には数万元かかることもある。

  中国のソーシャルメディアでは、多くの人がこの薬が高過ぎることや闇市場で偽物が多く売られていることに不満を訴えている。こうした愛猫家らによれば、ヒト用のコロナ治療薬の方がずっと手頃な価格だ。

  例えば、ラゲブリオの40錠入りボトルは1匹以上の猫を治療できる量で、オンラインで約1725元(約3万7000円)で買える。動物用より安価な人間用に開発された栄養補助食品を飼い猫に与える人もいる。

原題:Chinese Cat Owners Feed Covid Pills to Pets to Beat Virus (1) (抜粋)

関連記事: