米空軍の新しい早期警戒管制機、今年もE
毎年の米予算で風物詩になっているのは「A-10退役を巡る空軍と議会の戦い」だが、E-3の後継機=E-7調達に関しては「ヘグセス国防長官+国防総省」と「議会+空軍」の戦いになり、国防総省は2027会計年度予算案でE-7関連予算を計上しなかったが、議会と空軍はE-7調達継続を諦めていない。
参考:Meink: Air Force Has Five More E-7s Under Contract
米空軍の空中給油能力は計450機以上のKC-10とKC-135で構成され、これを近代化するためKC-10の退役とKC-46Aの導入が進み、現在は空中給油能力はKC-135とKC-46Aで構成されているものの「KC-135の後継機」に関しては何度も方針(KC-Y、Bridge Tanker、KC-135 Recapitalizationなど)が変更され、2026会計年度予算案でも「KC-135の後継機」について新たな計画=Tanker Production Extensionが登場し、これは「KC-46Aの調達契約が完了後、TPE計画に基づいて追加の空中給油機を調達する」「KC-46Aを最も経済的な要件基準としてTPE計画に用いる」と言うものだ。
出典:U.S. Air Force photo by Joshua J. Seybert
Aviation WeekやBreaking Defenseは「この変更によってKC-46A追加調達の可能性が高まった」と報じていたが、Defense OneやBreaking Defenseは「米空軍が正式にKC-46AとNGASのギャップを埋めるBridge Tanker構想を放棄してKC-46A追加調達を承認した」と報じ、KC-46Aを最大75機追加調達しながら本命の新型空中給油機=KC-Z(現在はNGAS計画)を前倒しする予定で、NGASの要求要件は決まっていないものの、当初は全翼機のステルス空中給油機になるのではないかと予想されていた。
現在は「脅威から遠く離れた空域に留まる大型空中給油機=KC-46A」が「生存性の高い小型空中給油機=NGAS」に燃料を供給するハブ・アンド・スポーク方式になると予想されていたのだが、米空軍は2027会計年度予算案にNGAS関連の資金を計上せず、フランク・ヴェルドゥゴ少将は2027会計年度予算ブリーフィングで「我々は先進空中給油システム=Advanced Tanker Systems(ATS)へと移行しつつある」「これはより多くの選択肢を提供し、ATSがより強靭で交戦空域での運用を確実にするものだ」と言及。
出典:Embraer
つまり新型空中給油機はKC-ZからNGASに変化し、さらにNGASからATSに変化したことで、ATSは「何かしらの単一プラットフォーム」ではなく「ハブ・アンド・スポーク方式による空中給油全体」を指している可能性が高く、生存性の高い小型空中給油機のニーズをMQ-25Aの陸上バージョンや自律型空中給油ブームを備えたKC-390が狙っている。
まぁ、2028会計年度予算でATSは新たな概念や新名称のシステムに衣替えしている可能性もあるので、もはや「次はどんな名前にかわるのか」が見どころだが、米空軍の二転三転する計画と言えばE-7も忘れてはならない。
出典:U.S. Navy
米空軍は2022年4月「老朽化したE-3を更新するためE-7を26機調達する」と発表し、米空軍バージョンのE-7プロトタイプ2機を25.6億ドルで発注したのだが、Aviation Weekは2025年5月「米空軍のE-7調達は中止の危機に直面している」「国防総省はE-7調達をキャンセルし、リソースをAMTI能力を備えた衛星に集中させることを検討している」「この案はBMC2能力が問題になるため空軍が抵抗している」と報じ、ヘグセス国防長官も「現代の戦場でE-7は生存不可能」「宇宙ベースのAMTI能力移行」に言及した。
ヘグセス国防長官は下院歳出委員会の公聴会で「我々はウクライナで得られた教訓や中国軍近代化のテンポを踏まえて投資を再考している」「投資するシステムが現代戦に耐えられないか十分な優位性をもたらさないと判断されれば厳しい決断を下さなければならない」「こうした新システムへの資金供給と判断を下すのが我々の仕事でE-7はその一例だ」「将来的にISR能力の大半が宇宙ベースになる」「E-7のようなシステムも検討を続けるが、我々の見解では既存システムへの投資と、これを上回る宇宙配備型ISRへの大規模投資を組み合わせることで将来の優位性が獲得できると考えている」と証言。
出典:DoD photo by U.S. Navy Petty Officer 1st Class Alexander Kubitza
下院歳出委員会のコール議員は「指摘は正しいが、新しい技術ではなく豪州や英国も使用しているプラットホームがある。この機能するプラットホームは我々が持っているものより遥かに優れている。宇宙ベースの能力は素晴らしいものの未知の領域で完成していない能力だ。そのため決断を下す際は十分な検討をしてほしい」と要求したが、国防総省は2026会計年度予算案でE-7関連予算を計上せず、宇宙ベースのAMTI能力を獲得するまでE-2Dでカバーすることを主張した。
結局、議会はE-7調達計画の中止を阻止するため「空軍向けのE-7継続開発(EMDフェーズへの移行)」に11億ドルの資金を配分し、米空軍は既存の基本契約25.6億ドルに「EMDフェーズ機の製造=23億ドル」と「MESAレーダー開発と部品確保=9,900万ドル」を追加していたが、トロイ・メインク空軍長官は4月30日「EMDフェーズ機の製造契約としてE-7を5機発注済みだ」と明かしたため、米空軍は契約上「E-7を7機発注している状態」になるものの、EMDフェーズ機を5機発注するための23億ドルは今後の単年予算による資金供給が続くかどうかにかかっており、国防総省は2027会計年度予算案でE-7関連予算を計上してない。
出典:U.S. Navy photo by Mass Communication Specialist 3rd Class August Clawson
つまりE-7調達を巡る対立の構図は「ヘグセス国防長官と国防総省はE-7調達を中止して宇宙ベースのAMTI能力獲得に投資を集中したい」「議会と空軍はE-7調達を維持して宇宙ベースのAMTI能力獲得までのギャップをカバーしたい」となり、下院国防歳出小委員会のジェイク・エルジー副委員長は「E-7計画を大幅削減してE-2Dで代替させるのは本当に正しい判断なのか?」「E-2は能力的に全く足りない」「性能的に言えばターボプロップのキングエアとボーイング777を比べるようなものだ」と疑問を投げかけた。
メインク空軍長官も「E-2は優れた航空機だがE-7と同格ではない」と認め「空軍省は2027会計年度予算を調整してE-7に資金を充てる方法を議会と協力して検討している」「その後で2028会計年度予算についても前向きに取り組んでいく」と言及し、米空軍はウィッシュリストにE-7を含めて議会からの追加資金を引き出したいのだろう。
出典:U.S. Air National Guard photo by Munnaf Joarder
毎年の予算で風物詩になっているのは「A-10退役を巡る空軍と議会の戦い」だが、E-7に関しては「ヘグセス国防長官+国防総省」と「議会+空軍」の戦いになり、両者の戦いに共通するのは「予算の承認権限をもつ議会が必ず勝利する」という点なので、議会が調達中止を毎年覆しながらE-7の開発・調達に資金を供給していくのかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by William R. Lewis