北海の奥深くに眠る氷河期の巨大な氷床を発見
今から100万年ほど前、ノルウェーからイギリス諸島へ向かう北海周辺の地域が、巨大な1つの氷床に覆われていたことが明らかになった。
その痕跡は、厚さ1kmもある北海の泥層の下に埋もれていたが、科学者たちがその地形を高解像度の音波データで撮影し、詳細を報告したのだ。
その時代は、第四紀氷河期の氷期の周期が従来の4万年から10万年へと変化した時期にあたる。
しかし、なぜこのような変化が起こったのかはまだ解明されていない。当時の氷床の姿を理解することが、その時代に起きた気候変動の謎を解く手がかりとなるだろう。
北海の泥の下に傷跡を残した巨大な1つの氷床は、「中期更新世移行期」と呼ばれる130万~70万年前の時代に形成されたものだ。
これまでの学説では、そうした氷床は複数の小さな氷床が成長と後退を繰り返したことで、擦ったような傷跡が残されたと考えられていた。
だが今回の発見は、この仮説を否定するもので、そうした傷跡の多くは強い海流によって作られたものであることが判明した。
英国ニューカッスル大学のクリスティン・バチェラー氏は、「私たちが唯一目の当たりにした決定的な証拠は、当時一度の大規模な氷の進出があったこと示すものだけです」と、Live Scienceで説明している。
バチェラー氏らは1つの大きな氷床を探していたわけではなく、偶然の発見だったため、ことさら仰天したと言う。
画像で確認できる傷跡のようなものは、氷床の成長・縮小による侵食や堆積で形作られた地形だ。
この画像を大きなサイズで見る北海の泥の層の下に残されていた巨大な1つの氷床の痕跡/Image credit: Supplied by Christine Batchelor (Data owner: TGS)氷床が前進するとき、その流れの方向に沿って堆積物を削り、細長い地形が形成されます。氷床が後退するときは、氷と地面の境界線の跡が氷の流れを横切るように残るのです(バチェラー氏)
現在は260万年前に始まった氷河時代(第四紀氷河時代)の最中にある。
氷河時代と言っても、気候には波があり、寒冷な「氷期」と比較的温暖な「間氷期」が交互に繰り返されている。そして現代は1万1700年前に始まった間氷期にある。
今回の研究が130万~70万年前の「中期更新世移行期」に注目した理由は、この時期に大きな変化が起きたからだ。
寒冷な氷期はこの時期を境にしてより長く、より激しくなり、それまで4万年周期だった氷期の間隔が10万年周期になった。
一体何が原因でこのような変化が起きたのか、確かな理由はわからない。
だが今回の研究のように、この時期の氷がどこまで広がっていたか解明することは、当時の地球規模の気候変動を引き起こした条件を理解する手がかりになると考えられる。
そして今回明らかになったのは、当時の氷床が現代のノルウェーをおおい、イギリス諸島に向かって広がっていたということだ。
この画像を大きなサイズで見る最新の画像によって、100万年ほど前、ノルウェーやイギリス諸島方面は、1つの巨大な氷床によっておおわれていたことが明らかになった/Data owner: TGSまた氷床の後退時に残された痕跡の中に、「クレバス・スクイズ・リッジ」のようなものが見つかっている。
これは後退した氷床がその直後に柔らかい堆積物に沈み込み、堆積物をその下の亀裂に押し込むことで形成される地形のことだ。
その痕跡は、水が氷の下を侵食し、堆積物がきれいに持ち上がったことで保存されたが、それも何千年もの時を経て、やがて泥におおわれてしまった。
この研究は『Science Advances』(2024年12月13日付)に掲載された。
References: Giant ice age landforms discovered deep beneath North Sea revealed in amazing detail | Live Science / Science
本記事は、海外の情報をもとに、日本の読者がより理解しやすいように情報を整理し、再構成しています。