「息子さんが昨日、工場から転落して亡くなりました」タイに赴任して3カ月後に過労自死…ノートに遺された“最後の言葉”(文春オンライン)

 日本の実質賃金が減少傾向にあるなかで、「ニューヨークの寿司職人の年収が1000万円」や「オーストラリアにいけばワーキングホリデーで時給5000円稼げる」といった、海外で働くことに関するニュースが近年、飛び交うようになった。 【画像】ノートに遺された“最後の言葉”「今、オレは仕事がぜんぜんできなくて、毎日おこられてばかりでとてもつらい」  実際に、海外で生活する日本人はピーク時の2019年には141万人に達し、コロナ禍に入ったことで近年は減少傾向にあるものの、最新の2024年のデータでも129万人もが国外で生活していることがわかっている(外務省「海外在留邦人数調査統計」)。注目を集めているワーキングホリデーのような現地企業による短期的な雇用という形だけでなく、国内の企業から海外の事業所への配置転換といういわゆる「海外赴任」も珍しくなくなった。  しかしそこで見過ごされているのは、海外で働く人々の労働環境だ。じつは海外派遣者の過労死や過労自死がこの間、何件も明らかになっている。しかし国内の過労死すら氷山の一角であると言われる中で、海外の過労死はそのさらに一角であることが考えられる。これまでみたように、企業は過労死が起これば証拠を隠蔽したり同僚に虚偽の証言をさせたりすることで過労死をもみ消そうとしてきたが、言語も異なり、業務内容の把握もより困難な海外ではそれらはさらに容易だろう。 『 会社は社員を二度殺す 』(文春新書)掲載の内容に最新情報を踏まえて、海外赴任の過労死問題をリポートする。今回は、大手プラントメーカーの日立造船に入社してわずか3年後に、赴任先のタイで過労自死に追い込まれた上田優貴さん(当時27歳)のケースから、海外派遣者の過労死と企業の隠蔽体質についてみていこう。(全2回の1回目/ 後編 に続く) ◆ ◆ ◆

 日立造船株式会社は、工場設備や発電設備などを製造する機械・プラントメーカーで、従業員数1万2000人を超える大企業だ(なお、2024年10月に社名をカナデビアに変更している)。国内外に多数の事業所や工場があり、海外にはアメリカからインド、シンガポール、そして上田さんが赴任することとなったタイなどに拠点を設けている。  上田さんは大学院で電気工学を専攻し、環境と電気をつなぐ仕事がしたいと2018年4月に日立造船に入社。大阪本社でプラント施設の電気設計業務などを担当し、入社して約3年が経った2021年1月からタイのラヨーンに派遣された。上田さんが関わっていたごみ焼却施設は世界中にあり、先輩も海外に赴任していたことから、自身もどこかで海外で働くことになるだろうと家族に話していたという。ただタイは上田さんにとっては初めての海外赴任であり、任期は約4ヶ月間が予定されていた。

文春オンライン
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