大阪府の宿泊施設稼働率80%で全国トップ、需給が逼迫…万博にらみ予約枠「出し惜しみ」も : 読売新聞

 大阪・関西万博の開幕が近づく中、大阪でホテルの需給が 逼迫(ひっぱく) している。訪日客の客足が急回復したところに人手不足が重なり、各ホテルは客室の供給数を簡単に増やせない事情もある。万博会期中では、行楽シーズンなどに予約が取りにくい状況も生まれそうだ。(経済部 佐藤一輝)

大阪の街明かりを背に光を放つ万博会場(13日、大阪市此花区で、読売ヘリから)=原田拓未撮影

ほぼ満室

 大阪・梅田の大型ホテル「アパホテル&リゾート<大阪梅田駅タワー>」。客室数は約1700室に上るが、昨年12月~今年2月の平均稼働率は「ほぼ満室」の約100%となった。

 コロナ禍で落ち込んだ訪日客の需要は、円安を追い風に全国的に急回復しており、大阪はその中でも特に人気のエリアだ。

 観光庁の調査では、大阪府の宿泊施設の稼働率は昨年12月時点で80%に達しており、東京都(78%)や福岡県(75・2%)を上回り、全国トップとなっている。アパグループの担当者は、「訪日客の需要は大きく復調しており、万博の会期中はさらに需要が高まるだろう」と話す。

 高い需要を背景に、大阪のホテル料金は高騰している。米不動産データ分析大手コスター・グループ傘下「STR」の調査によると、大阪府内のホテルの2024年の平均客室単価は1万9569円と、21年の2倍以上となった。

人手不足

 万博は4月13日に開幕する予定で、ホテルの需給逼迫に拍車をかけそうだ。大型連休中などでは、希望する宿泊施設の予約が取れないことが見込まれる。

 リクルートによると、運営する宿泊予約サイト「じゃらんnet」では、万博会期中の大阪府の予約数は、1月時点ですでに前年同期の2倍を超えている。

 新規ホテルの開業も進んできているが、各運営会社は客室の供給数を簡単には増やせない状況だ。働き手が不足していることが主な要因で、コロナ禍で従業員を大幅に減らした施設では、全ての客室を稼働させることができないケースもあるという。

 また、万博を大きな商機だとにらみ、客室の予約枠を「出し惜しみ」している実態もある。大手ホテルの関係者は「今は一部の部屋だけを提供し、他社の動向を見極めている。万博の人気次第では宿泊料をさらに引き上げられる」と明かす。

民泊増加

 すでに影響は出展企業にも及んでいる。万博では東京などからスタッフを派遣するケースもあるが、出展企業関係者からは「(会場に近い)ホテルが見つからない」といった声も聞かれるようになった。このため、マンションの部屋を借り上げることで対応する企業も出てきた。

 こうした中、大阪では、ホテルよりも小規模で人手がかからない民泊施設が増加中だ。住宅宿泊事業法(民泊法)に基づく大阪府内の届け出住宅数(1月15日時点)は、計2111件と前年同期より15%増えた。

 大阪を中心に民泊を運営する「LDKプロジェクト」(大阪市)は4月、和室や風呂を備えた大人数向けの民泊を大阪市内で新設する。同社の生田博之社長は「万博で大阪は世界から注目されており、事業機会は大きい。特別感のある施設を増やし、選ばれる民泊を目指す」と話した。

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