トランプ氏、メキシコ・カナダへの関税延期:識者はこうみる
[4日 ロイター] - トランプ米大統領は3日、メキシコとカナダに対する関税の発動を1カ月見送った。各国首脳が発表した。
市場関係者に見方を聞いた。
◎米関税は慎重な見極め必須、対中交渉が焦点
<日本総研 副主任研究員 松田健太郎氏>
メキシコ、カナダへの関税延期はサプライズで、トランプ米大統領には、やはりかなり揺さぶられるというのが、率直な印象だ。
関税政策は一義的に米国のインフレ率を高めるとの見方につながっているが、こうした不確実性の高さを考慮すると、そもそも関税でインフレは本当に上昇するのか、それ以上に需要減の方が大きくならないか、といった点まで見極める必要があると、市場は慎重姿勢を強めているように感じている。
カナダやメキシコが米国の要求を一部受け入れる姿勢を見せていることもあり、当面は方向感が生まれづらい。一方的に米ドル高が進行する印象はあまりない。
米国の最終目標は中国だ。こうした交渉は今後の対中交渉をにらんで、米国の強硬姿勢を見せつけている可能性もあるだろう。中国がすんなり要求を受け入れるとは考えにくく、両国の対立が先鋭化すれば、株安など金融市場にはネガティブな影響を与えかねない。
◎米関税発動延期と日銀利上げ警戒で金利上昇圧力に
トランプ米大統領は2月3日、メキシコとカナダに対する関税の発動を1カ月見送った。市場関係者に見方を聞いた。写真は米・カナダの国旗。同日、カナダのサリーで撮影(2025年 ロイター/Chris Helgren)
<三井住友トラスト・アセットマネジメント シニアストラテジスト 稲留克俊氏>
米関税発動を巡り、円金利に大きな影響を与えやすい米金利の動向に注目していたが、今までと逆の動きになったことに注目している。関税発動によるインフレ再燃懸念で米金利が上昇するという流れではなく、リスク回避の動きが強まり、米金利は低下した。
これは為替市場でドル高が進んだことが影響しているとみている。関税が発動されても、ドル高でインフレが抑制されるというメカニズムが意識されたのではないか。第1次トランプ政権の時も中国への関税発動で同様の現象が起きており、対人民元でドル高になったことから、米国でインフレが起こらなかった。
きょうは関税発動の延期を受けて米金利が上昇し、円金利の上昇圧力になりやすい。また日銀の利上げへの警戒感は引き続き強い。前日はリスクオフの流れが強まったものの、市場の利上げの織り込みに大きな変化はみられなかった。日銀による追加利上げ時期やその先の利上げパスなどに注目が集まる中、国内要因としても円金利は下がりにくいだろう。
◎トランプ関税警戒の反動で株高、米指標に目配り必要
<松井証券 シニアマーケットアナリスト 窪田朋一郎氏>
カナダとメキシコに対する米国の関税措置がいったん猶予となったことで、前日に警戒して売られた分の反動はそれなりに出そうだ。ただ、1カ月後に警戒感がぶり返す可能性が残るほか、対中国での出方も見極める必要があり、全戻しはなさそうだ。
米小売売上高などの経済指標にも注意が必要だろう。高関税政策に備えた駆け込み需要が生じており、想定以上に強い数字となって米金利が上昇するようなら、株価への悪影響も出かねない。
目先1カ月ぐらいは、3万7000円─4万0000円のボックス相場が続くだろう。中国の低コストAI(人工知能)ディープシークの台頭によって過度なAI期待が後退しており、日経平均は寄与度の高い半導体関連株の戻りが鈍くなって、上値は抑制されるとみている。
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